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3.選定の儀

 今日で俺は10歳になった。

 いや、俺らって言った方がいいのか。


「今日は選定の儀だ。我が息子達よ、わかっているだろうな」


 醜い姿にまた凄みを増やした中年デブの父スラグから圧をかけられる。

 公爵家の後継者としてふさわしいスキルを授かれよ、そうでなければ分かっているだろーなってことだ。


「分かってます、父様。」


 弟のキノは自信満々に返事をするが、俺はそうではない。

 家から出るためには、ここで優秀なスキルを得ると一生繋ぎ止められる可能性がある。


 デッセン公爵家を内から10年見てきて、この家はもう長く続かない。

 それを立て直すこともできなくはなさそーだけど、それをしてしまうのは何か嫌だ。


 育ててくれた恩は、母にしかないよ。


「おい、ライム聞いてるのか! お前は長子としての責任を……」


 うるさい小言をガミガミと。

 双子なんだから上も下もあんまりないだろ。


 ただ、そう思ってるのは俺だけのようで、キノは俺を嫌っている。

 兄が神童とよばれるほどの天才でよく比べられているのをよく思っていないのだろう。

 めっちゃ睨んできてるよ。


 選定の儀は、10歳の誕生日に執り行われる。

 普通の子供達は神殿でするのだが、公爵家のこととなると、家までわざわざ出向いてくれる。


「お待たせして申し訳ございまさん。準備が整いましたので、ライム様はわたしが、キノ様はもう一人の神官のもとで儀式を執り行います」


 ここでも、俺が優遇されているようだ。

 上位の神官らしき男性が俺を見てくれるらしい。


 移動する際も俺を睨みつけてくるキノ。

 俺らは昔遊びあった仲だろ!

 ――いや、俺が本読みたくてずっと無視してたわ


「では、ライム様目を閉じてください」


 俺は促されるままに目を閉じる。

 一応儀式の内容は本で読んだ。

 だから、不安は一切ないが……

 どうか、すごいスキルは、特に魔法系だけはやめてください!


 神官は僕の綺麗な銀髪の頭に手を乗せる。

 何か温かいものが体に流れ込んでくる。


 これはスキル〈神官〉だけが有する、神聖力というものらしい。

 あとはここで、俺が一言唱えるだけだ。


「では、ライム様「ステータス」と唱えてください」


 僕は意を決して強く息を吐く。


「ステータス!!」


 そこで、体から金色の光が解き放たれる。

 え? こんなの文献になかったけど……


 隣で同じく儀式を行っていたキノと神官、そして後ろで険しい顔で見守っていたスラグも、何が起こったのかとこちらを注視する。


 儀式は成功したらしい。

 神官が俺のステータスを確認している仕草をしている。

 こちらからは見えないから何をやっているかはわからないが、ステータスを見て、それを紙に書き写している。


 ステータスを確認できるのは神官だけの特権と言いたいところだが、一応スキル〈鑑定〉でもできる。

 ただ、鑑定は珍しいスキルで中々出会えない。


 よって、ステータスを見てもらうためには神官に頼るしかない。


 俺のステータスを写し終わったのか、スラグを呼んでいる。


「……スラグ様、儀式が無事終わりました」


 何かあったのだろうか。

 神官の顔色が悪い。

 それに気づいたスラグはいままでよりもさらに険しい顔になる。


「結果について、いろいろと思うところがあると思いますが、きちんと受け止めてください」


 そして、スラグに渡された紙を盗み見る。


 ――――――


 ライム・デッセン

 男 10歳

 lv1

 str:4

 def:4

 spd:4

 int:8

 luck:10


 スキル:〈放置lv1〉


 ――――――


 見えたのはこれだ。

 lv1のステータス平均値は全てが5だ。int、知力が高い。こう考えると、物覚えが良かったのはステータスによるものだったのだろうか?


 それとluck、運がいい。

 ――たがら、見たことないスキルを手に入れることができた!


「なんだこれは!?」


 スラグが声を荒立て、神官を恐ろしい形相で睨みつける。


「わたしにもわかりません! 神殿のスキル全鑑にも記載されていないスキルです。新たに発見されたスキルとしか……」

 

「放置だと!? 魔法のようには見えないな。これではダメだ。この出来損ないめ!」


 普通ならこの言葉を受けた子供は傷つくだろうが、俺は違う!

 望んでた展開だ!

 これで、家を出る計画が一歩進んだぞ!


「こ、これはっ!?」


 と、うれしんでいたのも束の間、隣で儀式を受けていたキノの方で何か起きている。


 その状況を見て最短距離を塞いでた俺をスラグは突き飛ばして、キノの元へ駆け寄る。

 そして、俺と同じ紙を覗く。


「……〈火賢者〉だと! これは素晴らしい! わたしの自慢の息子だ! よくやったキノ!」


 スラグはキノを抱きしめる。

 デブとデブの抱擁は見ていると暑苦しいなー。

 っと、ボーとその姿を転んだまま眺めていたら、ニヤリとキノが俺を見てくる。

 それと同じくして、スラグもキリッと睨みつけてくる。


「それに比べてお前は! 神に見放された役立たずが!!」


 あー、これはブチギレですね。

 まっ、家出るんでどうでもいいけど。


 その日から、俺は公爵邸の中でこう言われるようになる。

 ――神に見放された子、と

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