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新たな戦い

 クテシフォン同盟に勝利した銀河帝国は、皇帝ルクスの命令により銀河系の再建政策を推し進めた。

 兼ねてから準備を進めていた事もあり、帝国政府の動きは素早く、再建の手は一気に銀河中に広がる事となる。


 それ事態は良い事なのだが、銀河中に広がる再建の手の中に不穏な影が潜んでいる事をルクスは見逃さなかった。


「植民惑星の開拓事業に、都市インフラの再建事業。食糧の増産体制の強化。どれもにアマルフィ財閥が絡む形となってしまったな」


「申し訳ありません。帝国政府にもアマルフィ財閥の手は深く入り込んでおり、財界を牛耳るアマルフィ財閥の存在を無視する事もできず……」


 大本営総監ドレルジーニ元帥は申し訳なさそうに頭を下げる。


「官僚の多くはインペリウムの出身だ。彼等にとっては私達よりも同郷のアマルフィ財閥の方が親近感が湧くだろうからな」


 元老院の勢力が衰えた今、帝都インペリウムの事実上の主人はアマルフィ財閥と言って良い。

 彼等の動向を監視する任務を帝都防衛司令部長官のトルーマン中将に命じているが、彼だけでアマルフィ財閥に対する抑止力となるのは難しいだろう。


「アマルフィ財閥がクテシフォン同盟と裏で繋がっていた事はほぼ間違いない。インペリウムのトルーマン少将からの報告もそれを裏付けている。そんな輩が気付けば、銀河中に手を伸ばしている。帝国政府の政策に乗っかる形でだ」


「戦争が終われば、国家再建の時代へと突入します。それは我等技術官僚(テクノクラート)の時代であると同時に実業家の時代でもあります。彼等が帝国の隅々にまで根を張りつつ、大儲けをするには絶好の時期と言えるでしょう」


「とはいえ、今すぐにアマルフィ財閥と事を構えるのは得策とは言えない。彼等に下手な事をしては経済が混乱し、さらには私の再建政策にも大きく支障を来してしまう」


 銀河系の経済は、ほぼアマルフィ財閥の影響下にあると言える。

 先日の通商協定一つを取っても、帝国にとってアマルフィ財閥の重要性は無視できず、表立って敵対する事などできなかった。


「ですがクテシフォン同盟に協力するなど裏で暗躍を進めてきたような輩を放置するのは、帝国にとって潜在的な脅威となります」


「そうだな。とはいえ、これまでの軍閥やクテシフォン同盟とは性格が違いすぎる。この戦いは、我々も少しやり方を考えねばならんな」


 相手が民間企業である以上、これまでの軍閥やクテシフォン同盟のように艦隊を率いて武力制圧するというわけにもいかない。

 ましてアマルフィ財閥は、表向きは友好的な態度を示しているのだ。

 お互いに利用し合う関係でも共生状態をひとまずは築く事を模索するしかないだろう。


「それについては私に一つ案がございます」


「ほお。言ってみろ」


「現在、この銀河にはアマルフィ財閥の影響を受けていない企業が多くございます。軍閥の台頭で、地方の企業が軍閥の庇護下で急成長したためです」


 かつてルクスが第十三艦隊の戦力増強のために、自身の勢力下だったバルカニア星域の有力者アルセナート伯爵の造船所から多数の艦艇を購入し、さらには駆逐艦という新型艦の建造まで発注したように、多くの軍閥は、地元の企業に兵器開発の発注を行なっていた。

 それはアマルフィ財閥の傘下企業に莫大な利益をもたらした一方で、アマルフィ財閥の影響をあまり受けていない地方企業に急成長の機会をもたらした。


「それ等の企業を、このアウグスタに誘致して新たな企業連合を発足させるのです」


「なるほど。その企業連合をアマルフィ財閥の対抗馬とするわけか。だが、そこ等の企業を集めたところで、アマルフィ財閥の対抗馬となり得るとは流石に思えんな。アマルフィ財閥が銀河中に張った根は、ある意味では元老院どもよりも厄介だぞ」


「ですが、このままアマルフィ財閥の独占市場化が進めば、遠からず帝国の支配者は陛下ではなく、アマルフィ財閥となってしまう事は明白です。国を挙げて対抗馬の育成を進めるべきかと考えますが?」


「貴官の意見は尤もだ。それにアウグスタの経済基盤を整える事も重要だからな。だが、企業連合を発足するとして、一体どの企業を味方にするつもりだ?」


「実は既に、ルクセンブルク財閥やベルギア銀行などと協議を進めております」


「流石に仕事が早いな。この件については貴官に一任しよう」


「ありがとうございます、陛下」


 この後、ドレルジーニ元帥はアマルフィ財閥を快く思わない中堅企業や地方企業などをアウグスタに誘致し、新たなる星間貿易会社『インペリアル・ネットワーク・エクスプレス』を創設。

 INEの略称で呼ばれる事になるこの会社は、有事の際には帝国軍の軍事輸送を引き受けるという事を条件に帝国政府から莫大な額の出資を得ており、経営陣の中には軍の関係者が多く加わっている事から政府色の強いものとなっている。


 アウグスタに設立されたこのINEは、アマルフィ財閥を相手に銀河を股に掛けた商売競争に突入していく。

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