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プロローグ

 銀河標準暦一一九三年。

 二百年以上にも渡って銀河系全域を統治し、人類社会を支配してきた銀河帝国は、昨年に時の皇帝が暗殺されて皇統が断絶してしまった事で、国内が安定せずに混乱の時代を迎えていた。

 帝国の最高機関である元老院は、軍部との連携を深めて軍のトップに帝位を授けようとする。

 しかし、それを受けた軍部の間では複数の提督が皇帝に立候補。皇帝の座を賭けた争いは次第に話し合いだけでは収まらなくなり、提督達が武力衝突を引き起こすまでそれほど時間を要さなかった。


 軍部は複数の軍閥へと別れて対立し、銀河帝国は内戦状態に突入する。

 この事態も元老院はあくまで軍内部の争いとして不介入を貫いた事で、銀河は野心に燃える提督達の手によって戦火に包まれ蹂躙されようとしていた。



 ◆◇◆◇◆



 惑星シスキア。

 この星には、バルカニア星域一帯を統括する銀河帝国軍第十三艦隊が駐屯基地を設置している。

 第十三艦隊司令官ルクス・セウェルスターク上級大将は、軍上層部の覇権争いには加わらずに自身の担当軍管区の防衛に徹していた。そのため、内戦中にも関わらず、バルカニア星域の治安は良好であり、惑星シスキアは多くの貿易船が行き交い、富と物が集まっていた。


 シスキアには摩天楼がそびえ立つ巨大な都市が築かれており、都市の中心に建つビルの上では、眼下に広がる夜景を眺めている一人の人物の姿があった。


「そろそろ動く時かもしれんな」


 そう言いながら、右手に握るワイングラスを優雅な動作で口元へと近付け、グラスに注がれたワインを一口呑む。

 癖の無い艶やかな黒髪に、紫色の瞳をした若者は、その端正な顔立ちで不適な笑みを浮かべる。


 彼こそルクス・セウェルスターク提督。銀河帝国軍最年少の上級大将であり、二十五歳で艦隊司令官に就任した秀才である。


「という事は、いよいよルクス様が皇帝になられるのですね!」


 ルクスのすぐ隣に立つ少年は無邪気な声を上げた。

 ワインボトルを両手で大事そうに抱えているこの少年の名はフルウィ・レピティス。

 金髪碧眼でルクスに負けず劣らずの整った容姿は、まだ十五歳という幼さも相まって可憐な少女のようでもある。

 そんな彼の首には鋼鉄の首輪が嵌められている。

 フルウィは帝国においては国民としての権利を持たず、人権を否定された奴隷階級の出身だったのだ。


 銀河帝国では、高貴な立場にある者が奴隷を私的秘書ような立ち位置で傍に置く事は多い。

 今現在のような内戦状態では味方ですら安易には信用できず、長年に渡って臣従してきた奴隷の方がよっぽど信頼が置けるというものである。


「皇帝になる、というのは少々語弊があるな。私はあくまで帝国のために兵を挙げる。そして必要とあらば、玉座に座るのも良かろう」


「ルクス様以外に皇帝が務まるとは思えません! やはり銀河を支配するのはルクス様です!」


「銀河を支配するだけなら、何も皇帝になる必要は無いさ」


「? そ、それはどういう事でしょう?」


「ふふ。フルウィにはまだ難しすぎたか。いや。気にするな」


 そう言ってルクスが軽く笑うと、反対にフルウィは不満そうに頬を膨らませる。


「ルクス様、子供扱いは止めて下さい! 僕だっていつまでも子供じゃありませんよ!」


「ははは。すまんすまん」


 フルウィの言動が可笑しかったのか、ルクスは楽しそうに笑うと、グラスに入っていたワインを一気に飲み干す。


「明日の早朝、幕僚達を召集しろ。静観の時はもう終わりだ」

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