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第2章 17.巫女は聖なる杯を掲げ


【 モフモフの神様に拾われました 】



さて、どうやって火をつける?

マッチ!……ありません。

ライター!……ございませーん。

火打ち石!……ありそうですけど、見つけるのは大変そうです。


あっ。

発見しました。

アイシャさんがつけてくれた太い腕輪が太陽の光をキラキラキラキラっと反射してるんです。

虫眼鏡のレンズ効果だよね!

理科の実験で火をつけるのは誰よりも早かったんだ。

転がる枯れ草のボールをギュッと潰してそこに光を当ててみた。


ふふふっ、キタキタキターーーー!


「私って天才じゃね?」


自画自賛してハシャグのはボッチでテンション上がってるのと、日が暮れてやがてくる夜に怯える気持ちをごまかすため。


灰色の煙は空高く、とはいかなかった。

ある程度まで行くと風に流されて消えてしまう。あれ?なんでだろう。

燃やしている量が少ないのかな。

少し生木を入れた方が良い?

試しに色々やっているうちに、とうとう夜が来てしまった。


小屋の中にも火を持ってきて、暖をとることにした。

昨夜も馬で走っているとき寒かったのを覚えている。背中にシミズ(鬼畜)がいたから凌げた感じだった。

今日もきっと日が落ちた途端に気温が下がるだろう。アイシャさんの服は袖がないから寒い。

こうなると分かっていたら、衣装のままでいれば良かったな。袖とベストがある分暖かかっただろうし、お金まで取られることもなかった。



―――ユージンに会いたい。

今、どうしているだろう。

元気になって、同じ月を見てたらいいな。


四角くくり貫かれたガラスのない窓から青白い月が見えた。

濃紺の空に少し欠けた銀色の月。

長方形に切り取られて、まるで1枚の絵のように見える。


こんなふうに異世界でひとり月を見るって、なんて寂しいんだろう……。


家に帰りたいな。

お母さんとお父さんと弟がいる家に。


ご飯食べて、お風呂に入って、お風呂上がりにアイスを食べて、ベッドに入って足を伸ばして寝るの……。




―――――地響きがする。


いつのまにか寝ていたらしい。

地面から伝わる振動で目が覚めた。


「メーーー」

「メェーーー」×大量

「メーーーエエエ」大量×大音量


何かメーメー聞こえるけど何なの?

しかもだんだん近づいてくるんですけど!


私は飛び起きた。

何か黒い顔を持つモフモフした物に囲まれていた。1匹や2匹じゃない。

小屋いっぱいの大量の白いモフモフ達。


「ナニコレーーー!」



珍百景。




【 訛りが独特早押し選手権 】



「ナニコレーー―!」


の声も掻き消される程のなき声に圧倒される。

私はモフモフ達をかき分け小屋から脱出した。


夜は明け始めているのか、うっすらと明るかった。何せ時計持ってないからね。


「おやっ?おまえさん、こんなどこでナニしとんのや??」


真っ黒に日焼けした小さなお爺ちゃんと馬が、モフモフの中に立っていた。

小屋の中も外も大量のモフモフで埋め尽くされ大騒ぎだ。


「あっ、あの、あの、あーー」


たった今、神様が降臨されました!!


羊達を押し退け、すぐにでもそのお爺ちゃんに駆け寄り抱きつきたい衝動がわき起こる。


それぐらい人が恋しかった。




「ふーん、んでそのシミズって兄ちゃんに、置いてかれたんかぁ」


火にかけた小さなお鍋から、美味しそうな匂いがする。


「そうなんです。酷いヤツです、とても人の血が通っている同じ人間とは思えません!」

「んでも、おらぁ達遊牧の羊飼いが時々使うんだ、この小屋さぁ。兄ちゃんは、それ知ってたんだからっさ。置いていけたんだわぁ」

「そんな、優しいヤツじゃ絶対にありません、わぁ。断言します、めっちゃ怖いヤツなんです、わぁ」


癖のある訛りがうつってくる、わぁ。


「ほらでけたわぁ。食いね。」


お爺ちゃんが木のお椀にスープをよそってくれた。お椀を持つ手が温まる。


「これも、食いね」


薄いナンみたいなものを渡された。

お煎餅みたいにパリパリ割れる。


「こうやってぇ、ここさブチ込めば、うまいんだわぁ」


お爺ちゃんがナンを細かく割ってスープに入れた。私も真似してスープに入れてみた。


トマトスープだ!塩味がきいてる。ちょっとしょっぱいから、確かにナンを入れたらちょうどいいかも。


「美味しい!」

「ようけ、食いね」

「あの、ラシトって遠いですか?」

「ラストぉ?」

「はい、私はそこに行きたいんです」

「んー、おらぁ行ったことねぇがらなぁ。わがんねなぁ」

「……そうですか」

「んでもさ、ここはもうエルバンじゃないからさぁ」


エルバンて昨日まで私がいたイルファンのことだよね。訛りが……


「バルフの領地けぇ、勝手に出たり入ったりは出来んのよぉ、おらぁ達みたいな遊牧でもそりゃぁ、厳しけぇね」


あれっ?あっさりここまで来ちゃってるけどな。知らぬ間に密入国じゃん。


「いったんバルフに行ってぇ、そっから商人のケラバンにでも混ぜてもらうんだなぁ」

「商人?ケラバン?」

「商売人さぁ、あっちの国、こっちの国、あっちゃぁ、こっちゃぁ、あれやこれや、なんでも運んどるんさ」


ああ、キャラバンか!


「それで、イルファンに戻れるんですね?」

「そだなぁ。ひとまずバルフの街の近くまで、連れてってやっがらぁ」

「お願いします!」



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