第2章 15.巫女は聖なる杯を掲げ
【 マジでウケるんだけど 】
「この人でなし!根性悪!!地獄に堕ちやがれ!!!」
完全に負け犬の遠吠えである。しかし負け犬でも何でも吠えずにはいられないこの悔しさよ。
―――マジでちょっとウケるんだけど。
待って、この状況って何?
私、この沙漠のど真ん中に置き去りにされた?
マジで?
ちょっ、ヤバくないですか?
暑い……なんか太陽が近すぎん?
空を仰ぐと、白々とした太陽がすぐそこにあった。
もう、熱いの日差しが刺さるの。
どうすん?
車もない、電車もない、バスもないのに?
携帯ないからタクシーも呼べないじゃん。
歩いて行くなんて絶対に無理じゃん。
確かにもう馬には一生乗りたくない、とは言いましたよ?言いましたね、確かに。
ごめんなさい、謝ります。心から反省してます。
だから神様、お願いです。
本気でお願いします。
助けて下さい。
―――にしてもだよ、あいつちょっとキレすぎじゃない?
ただのヤバ人じゃん。
そんなに怒る?
何がそんなに気に障った?
あそこまで怒る要素なくない?
それと、武器と刃物どんだけ持ち歩いてんの?
はっ。
そこで、私は重大なことに気付いた。
「私の全財産……」
巾着の中、ベストのポケットに入ったままだ。
つまり、シミズ(悪魔)にお金まで持ってかれたってことですよ!
私は小屋に戻って座った。
膝を抱え目を閉じた。
正直、何も思いつかない。
幸いなことに、時間だけは充分にありそうだった。多分。ゆっくり考えよう。
目を開けてぼんやりと焚き火の跡を眺めた。
「あー、お腹すいた」
声に出して言ったのは、寂しさをまぎらわせるためだったかも。
ニマのお母さんが焼いてくれた鶏は、凄く美味しかったな。また食べたいな。
「ちょっと、待って」




