第2章 8.巫女は聖なる杯を掲げ
【 彼が跪いた 】
ユージンが探していた店は武器や刃物を扱っているところだった。
「これを頼む」
ユージンは腰から外した剣を店主に渡した。
店主は鞘から抜いた剣の刃をじっくり眺めている。
「これは珍しい。片刃の太刀だね」
「いくらになる?」
「300でいかがですか?」
「もう少し、結構レアなやつだぞ」
「とは言っても、こういう馬乗りが使うようなやつはここではあまり人気がなくてね」
「じゃあ、他をあたる」
ユージンは店主に太刀を返すように促している。
「わかりました。330にしましょう」
「まぁ、いいだろう。それで頼む」
ユージンは、お金が入っているだろう小袋を店主から受け取った。
「2ドラクマだったな」
「うん」
ユージンは私の掌に銀貨をのせた。
「これで借りはチャラだ」
「そうだね……でも、良かったの?あれ、わりと大事なものじゃないの?」
「別に、ただの飾りだ」
「飾り……」
「実際使うのなんて、船の縄を切るとか、西瓜切るとか、そんなもん」
「スイカ切る……」
確かに昨夜食べたスイカは大きかったけど、えっ、そんな日常使いなの?
私はもっと護身用みたいなものかと思ってたけど。
確かに兵士でもないのに、一般人がバサバサ人切ったりしないか。
「それから」
ユージンが唐突に私の手を掴んだ。
「あっちに良さそうなのがあったんだ」
「?」
ユージンに手を引かれやって来たのは、サンダル屋さんみたいな所だった。
革紐で編んだサンダルから、草履みたいなのとか、束になって置いてある。
「いらっしゃい」
「この子供に合うサイズはあるか?」
はいっ?子供って?
今、また子供って言った?
手をつながれて密かにドキドキときめいたのに、ユージンにしてみれば、ニマと同類ってことなわけだ?
屈辱と敗北感しかない。
トキメキを返せ。
「ええと、そうですね。こちらなんかどうでしょうかね」
店主が靴の束から素早く1足を選び出してユージンに渡した。
「こちらが今一番新しいデザインで人気のお品ですよ。どうぞ、お試しください」
ユージンがスッと私の前で片膝をついた。
「えっ?!」
いったい、これは……!!