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第2章 7.巫女は聖なる杯を掲げ


【 魔神の名前を言ってみて 】



「アスリートって言っただろ」

「えっ?何のこと?」

「ランプの魔神の名前だよ!まったく、嘘つくならちゃんとしなきゃ」

「正しい名前って何よ」

「教えない」

「はっ?気になるじゃん!言いなさいよ!」

「やだ、そういう態度なら教えてやんない!」

「じゃあ、いいわ。もう黙って」

「まるで、姉弟喧嘩だな」


そう言ってユージンは目を細めて笑った。

目尻にシワをつくって。


私達は、近くの街へ向かう荷馬車の荷台に乗せて貰った。いや、馬じゃなくて大きな水牛だから牛車か、のんびりとゆっくりと進んでいく。

雨は止んで雲ひとつない青空が広がっている。

雨上がりだからか、空気がさっぱりして気持ちがいい。


空の青が濃い。

ポスターカラーで塗ったみたいに、ベターっとしたスカイブルーだ。


ユージンは隣で寝転がって空を仰いでいる。


これから、この牛車がどこかの街に着いたら、そうしたら、今度は本当にそこで別れるのかな。


「ユージン、街に着いたら……」

「そうだ、街に着いたら……」


待って、何て言うつもり?


「あのさっ、さっきの話だけど……」


私は慌ててユージンの言葉を遮った。


「さっきの話って?」

「ええと、ほらニマが言ってた」

「魔神の名前か?」

「そうそう、私、本当に間違ってた?」

「さぁ、覚えてないな」

「そっか。でも魔神の名前って誰でも知ってるものなの?」

「ううん、どうかな。魔神なんていないっていうのが昨今だし。遠い昔のおとぎ話みたいなものかな」

「へぇそうなんだ」

「なんだっけなぁ、あの魔神の名前は……」

「あの魔神?」

「いや、おとぎ話に出てくる魔神だよ、火の魔神……水の、だったかな」


こちらの人なら誰でも知っているお話なのかな。桃太郎みたいに。


結局、正しい名前を思い出せないまま牛車は街の前までやってきた。


「ありがとうございました」

「うん、気を付けてな!」


村のおじさんに手を振って、私とユージンは大きな門をくぐり街の中へ入った。


門から真っ直ぐに伸びた大通りは人々で賑わっていた。

両サイドには色んなお店が並んでいて、呼び込みの声に活気を感じる。

ユージンはさっきからキョロキョロしながら歩いている。

何か探しているみたい。


「おっ、あそこが良さそうだ」


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