異世界への代償(仮)
異世界ものってかくの難しいですね。
題名に(仮)がついているのは続きを書く気力があったら書くからです。
幸せの絶頂にいる人が絶望になる瞬間を見たくて、でもなかなか見つからないので自分で作っちゃいました。
なのでだいぶあらすじが雑です。
こんな感じの話読みたいな~くらいの気持ちで書いたので。
※誤字脱字あるかもしれません
愛する人がいる。明るい黒い瞳、身長は高く筋肉質な体付き、それとは不釣り合いな細い手首。笑うとえくぼが片方だけ現れて、熱を持ちやすい体質なのか彼の体はいつも暖かく居心地が良かった。それは冬にも有効らしく、極寒の冬日と言われたある日には薄手のコートを着ていて、周りから見ているだけで寒くなると文句を言われていた。彼は友人が多い方ではなかったけれど、彼の周りにいる人達は皆誠実で優しい人ばかりで彼自身も優しくとても綺麗な心を持っていた。自分の事ばかり考えて、諦めるばかりの人生を歩んできた私にとって彼はまるで太陽みたいに眩しかった。彼と接するうちに彼に対する憧憬が強まり、それが愛情に代わるまでさほど時間はかからなかった。
私が彼に「愛している」と告白したら彼は照れたように笑いながら「俺も愛している」と返して私たちは恋人になった。それから冬の寒い日は暖かい彼の腕に私の手を絡めて、夏の暑い日は手汗をかく彼の掌を強く握った。私が笑うと彼も笑い、私が悲しみに暮れると彼は私の側にいてくれた。誰もいない夜の高台の公園で、月が出ていないからか星が雨のように落ちてしまうような夜空が広がる中で、私たちは将来ずっといることを誓った。手を握り、キスをしてから二人で笑い、そして星が埋め尽くす空を見た。両親や友人達にはいつ知らせようかとか、結婚指輪はどこで買おうかとか、結婚式には和式と洋式どっちがいいかとか、そんな幸せな未来を思い浮かべた。帰路の途中にあるコンビニに寄ると結婚式を特集した雑誌が置いてたから、「ちょうどいいね」と笑いながら彼が手に取る。私も「そうだね」と笑ってお茶とコーヒーが入っているカゴに入れるように促した。レジで肉まん2つも追加して、街灯で遠くなった星空を眺めながら歩く。美味しいコンビニの肉まん、隣には世界で一番愛する人、それから幸せが待ち受けているだろう未来。この瞬間、私が世界で一番幸せのような気がした。隣で笑う彼もきっと私と同じような気持ちでいるのだと疑わなかった。
「これから先も、ずっとずっと、一緒にいようね。」
そう言うと彼が嬉しそうに笑って私を抱きしめてくれた。
未来を誓い合った世界で一番愛する人。
でも、もう彼に会うことは出来ないのね。
仕事からの帰り道、もう既に家にいる彼に今から帰ると指輪を付けた手でメールを打った。明日は二人で婚姻届を提出しに行くと約束した日だからか、いつもより歩く足が速いような気がする、そんないつもと同じようで少し違う帰り道に私は異世界に飛ばされてしまった。人通りが少ない一本道を歩いていると急に地面が光り、そして全く知らない土地に私は飛ばされてしまったの。
「聖人様だ!」
私を取り囲む人たちが喜びの声を上げる。それを眺める私の瞳から涙が零れた。
ああ、もう私は彼に、愛する彼に会うことすらできないんだ。
何故かもう家に変えることが出来ないことが分かった。彼が待つ部屋を思い出して指輪握りしめようとした。けれど左の薬指に付けていたはずの指輪どこにもない。両手を広げ全ての指を見るけれど、どの指にも私の周りにもどこにもなかった。ただただ流れ落ちる涙を隠すこともせず、私は周りの人を眺める。この人たちは私の方を見ず希望が溢れるばかりの顔で喜びを確かめっている。
なんで私なのだろう。きっとこれは夢だ。私は事故に遭って夢を見ているんだ。きっとそうだ。
「聖人様、どうぞ手をお取りください。」
私の涙が見えていないかのように笑顔を見せながら筋肉質の男性が私に手を差し伸べる。その手首が不釣り合いなほど細くて思わずその男性の顔を真っ直ぐと見てしまった。男性の青い瞳と目が合う。笑った顔に出来るえくぼ。それは片方では無くて両方に出来ている。その男性の手は冷たく、暖かさの欠片もなかった。
私には愛する人がいる。明るい黒い瞳、身長は高く筋肉質な体付き、それとは不釣り合いな細い手首。笑うとえくぼが片方だけ現れて、熱を持ちやすい体質なのか彼の体はいつも暖かく居心地が良かった。でももう彼に会うことは出来ない。