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閑話 作戦会議、辺境伯家の三兄弟 1



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 リリーナが攫われて一日、魔術を駆使して王立学園から辺境伯家に帰り着いたルシードを含め、三兄弟はリリーナ奪還のための作戦会議を行っていた。


「――――俺が行く」


 長兄ガランド・ルンベルグは、勢いよく椅子から立ち上がる。長身の彼が立つと迫力がある。ガランドは、辺境を守る第三騎士団の騎士団長であり、ルンベルグ家の現当主だ。黒い髪にダークブルーの瞳は、あまり妹であるリリーナとは似ていない。魔王の配下であっても、彼と一騎打ちで勝てる人間はいないだろう。


「落ち着いてください、兄さん。そもそも、リリーナを連れ去ったのが、元守護騎士だったディオス・ラベラハイトというのは、間違いない情報なのですか? 魔王軍の軍服を着用していたと言いますし、彼は死んだはず。万が一生きていたのだとしても、彼ほどの人格者が、魔王軍に寝返るなど」


 次兄シェアザードの言葉に、ガランドは、気持ちを落ち着かせるために永い溜息をつく。


 むしろ、ガランドのほうが信じられない報告に動揺しているほどだ。こんな時は、脳筋に近いという自覚があるガランドより、ルンベルグ家の持つ莫大な魔石の利権に関する取引を一手に引き受ける計算高いシェアザードに分析させるほうが、良いに決まっている。


 魔法を使わない条件であればガランドが優位だが、魔法を使われればおそらくガランドがディオスに勝てることはない。つまり、実戦では、騎士団長であるガランドより強いディオス。

 そして、基本的には無表情だが、騎士団員たちに慕われる人格者でもある。


 とくに、獣人や竜人など、ほかの種族の血を引いている人間に平等で、魔王領に近いがゆえに、祖先に人間とは違った血が混ざる者が多いこの地域に、すんなりと溶け込んだほどだ。おそらく、リリーナの影響は、大きいのだろうが。


 王都は亜人差別が根強い。もちろん、辺境伯領ですら差別はあるが、奴隷は存在しないし、なによりリリーナがそれを許さない。


「三年前に、何があったというんだ」


 第三騎士団所属の部下、戦友、それもリリーナの守護騎士の裏切り。


 ――――三年前の魔王軍との戦い。いや、その一つ前の戦いで、ディオスは魔王と一騎打ちをしている。その時に何らかの密談があったのだろうという想像は難くない。


「――――ずっと気に入らなかったんだ、あの男」

「ルシード?」


 すでに、彼の体からは、魔力が漏れ出している。

 武と魔力に秀でた一族とはいっても、その継承は色に由来する。

 つまり、ルンベルグ家の始祖の色を継いだものが、その魔力も継承するのだ。


 ルンベルグ家の色の一つ。淡い紫色の髪を持つリリーナの弟ルシード。

 彼は、魔術師など吐いて捨てるほどいる王立学園でも、抜群の実力を持つ。


「兄さんたち、もし本当にディオスが、姉さんを攫ったのだとすれば、確実に姉さんは無事だ。あの男は、姉さんに異様に執着しているから」


 兄二人は、心の中で「お前も似たようなものだ」とつぶやく。

 それを顔に出すわけにもいかない。この三兄弟がけんかをすれば、屋敷が倒壊してしまうだろうから。



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