第三の選択肢を探します。
プルプル震えている。
頬を両手で押さえて、恥ずかしさに震えているのは、マティ様ではなく、私だ。
「ディオス様」
「……話さないと、いけないことがあります。……今日の戦いで、仕留め損ねた火竜が、ルンベルグ領に逃げました」
「っ……とうとう」
「俺は、リリーナに話すか、迷いました。本当は、何も知らせずに、この場所にいて欲しい」
ルンベルグ領に逃げたという火竜。
おそらく、ガランド兄様とシェアザード兄様がいれば、討伐は可能だろう。でも、問題はそこではない。
「これから先は」
「おそらく、ガルシア王国に魔獣が流れ込むまで、いく日も猶予は、ないでしょう。聖女ローザ・ルティラシアの作り出す結界の範囲は、せいぜい王都周辺だけです」
先日訪れた、ローザ・ルティラシアは、選択を迫られていた。私を犠牲に、王都と第三王子を守るか、聖女として正しいと思う道を進むのか。
私だって、そんなの選びたくはない。
それでも、ローザは、第三王子ロイス・ベールンシアのために、私を切る選択をする。それは、悪役令嬢断罪のシナリオの通りだ。
私は、どうだろうか? 何を選んでいけば、いいのだろうか。
どの道を選んでも、一生後悔しそうだ。
それなら、私は。
「私も、役に立ちたいです。この髪に、瞳に、少しでも意味があるのなら」
「……リリーナが、命をかけるようなことは、全力で阻止しますよ。たとえ、そのことで、リリーナが俺を」
「ふふっ。極端ですよ。ディオス様、私はあなたと一緒にいる未来を諦めません。でも、もっと後悔しない未来を手に入れるために、足掻いてみたいんです」
ディオス様の、浅瀬の海のような瞳が、真っ直ぐに私のことを見つめる。
「……愛しているのは、そんなリリーナだからです。それでも、たとえそんなリリーナが、いなくなってしまっても、全てから隠して守りたいです。俺は」
「命をかけるなんて、ディオス様こそ」
「そうですね。あなたを守るためだけに、それだけを支えに生きてきましたから」
「……それなら私、ディオス様の生きる意味として、生き延びますから」
そして第三の選択肢を探し続けるのだ。
悪役令嬢にならなくても、少しでも幸せにみんながなれる未来を。
「リリーナには、敵いませんね」
「そうですか? では、手伝ってください」
「…………リリーナの、望むままに」
……それは、義務だ。
変えてしまった物語に、他の人をこれ以上、巻き込みたくないから。
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