表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/47

序列一位様用では、ないです。



 * * *



 その日から、いつでもマティ様は、私と一緒にいる。お風呂までついてくる。一緒にお湯に浸かるけれど、溶けてしまわないのか心配で仕方がない。


 お湯が紫色になっている様子はないので、大丈夫なのだと思いたい。


 ……妙に、肌がツルツルと調子がいいんだよね。


「さ、そろそろ出ましょうか?」


 お湯を拭き取ってあげる必要はないらしい。どういう仕組みになっているのだろう。やはり、細胞膜は、存在しているのだろうか。 


 ぴょこんぴょこんと、マティ様が後をついてくる。私は、すっかり可愛らしいマティ様の虜だ。

 ふんわりと羽織った部屋着は、やっぱり浅い海の色をしている。

 

「リリーナ姉さん」

「ルシード! 遠征から帰って来たのね。怪我とかしていない?」

「俺が、そんな失敗すると思う?」


 ……想像してみる。周囲を殲滅して、明らかにオーバーキルな、高威力魔法を連発しているルシード。その周囲で、いとも容易く魔獣を切り捨てていくディオス様。

 うん。周囲の被害が、むしろ怖い。


 マティ様が、私のそばにいるようになってから、ディオス様とルシードが、遠征に行く回数が増えている。それだけ、今の状況は、限界が近いということなのだろうか。


「……ディオス様は」

「ディオスは」


 嫌な予感に、胸が締め付けられる。


「ルシード、リリーナに余計な心配かけるのは、やめてもらえませんか?」

「…………そうだな」


 目の前にいるディオス様は、元気そうだ。何も変わりがないように思える。でも、ルシードは、嘘をつくのが苦手なのだ。


 グイッと、ディオス様の手を掴んで歩き出す。


「リリーナ」

「ディオス様、怪我をしたのではないですか?」

「リリーナが、心配するようなことは何も」

「ないと言い切れますか?」

「…………リリーナ」


 沈黙は、おそらく肯定だ。

 そもそも、そういう意味で、私の中でのディオス様の信頼度は、地に落ちている。


「っ……何があったのですか」


 二人きりになった途端、ものすごく心細くなる。

 縋りつこうとしたのに、やんわりと拒絶される。


 その時、動くこともなく私の方になっていた、序列一位マティ様が、ディオス様の肩口へぴょんと移った。


 ほんの少し。ほんの少しだけ、ディオス様が、顔を歪めた。きっと、ほとんどの人は気がつかないくらい僅かに。


「リリーナ」

「黙っていてください」


 騎士服の留め具を外す。すると、左肩から背中まで、火傷でひどいことになっていた。


「……申し訳ありません、無傷で帰るという、約束を破りました」

「そうですね。でも、そもそも約束の内容がよくなかったです」

「……リリーナ?」


 髪の毛を護身用の短剣で少し切り取る。

 精霊たちが色めき立つ。

 

「お願い、ディオス様の…………。マティ様?」


 精霊たちに、髪の代わりにディオス様の回復を頼もうとしたのに、マティ様に食べられた。



 

 

最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ