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マヤ 〜忌みつ姫と森の若長〜  作者: 早瀬ヒカル
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祝宴 死の踊り子④





(((誰だ!?このミスマッチな席配置考えた奴っ!!)))





囲むテーブルは違うとはいえ、このいかにも最悪とも言える二人を数歩隣の席に座らせるなど、何か騒動をおこしてくれと言わんばかりの配置である。





ビリビリと二人の放つ怒気と殺気に全員が硬直して動けず、誰もが戦々恐々としたその瞬間…。





開戦前の戦場の様に静まり返った広間に、凛とした可愛らしい声が響いた。




「もぅ!二人とも、じゃれるのも程々にしなきゃよ?」




声の持ち主の存在に、誰もがハッっと我に帰り振り返ると、可憐で清楚なお姫様がそこに立っていた。





陶器のような白い肌。桃色の唇。桜色の頬……。





淡くてふわっとした水色のドレスに身を包み、腰までまっすぐのびた白みがかった露草色の髪の毛は、まるで最高級のシルクの様に幻想的で美しい。


そして何より印象的なのは、深海を思わせるような、群青色の瑞々しい瞳だ。

その瞳の深い青は、まるで彼女の魂の輝きを宿すかのように、神秘的な彼女の存在をよりいっそう美しく引き立てている…。




…………ちなみに今の姫は、その目をすうっと細め、両手を腰に、ぷぅっと少々お怒りのご様子だ。


無理もないが、皆慌てて笑顔でとりつくろう。無論、騒ぎの渦中の二人も同様だ。




「あ~…、姫さん。これはだなぁ~」




「すみません。私としたことが…」




オロオロと謝る二人に、姫は仕方のない二人ねと少し呆れた様子だったが、すぐその唇を笑みに変えた。




「…ふふっ。ケンカする程仲が良いとはよく言うけど、あなた方のケンカはこの広間どころか、城だってあっという間に粉々よ?気をつけなきゃ」





群青色の瞳をイタズラにちょっとだけ細め、姫は笑って二人を許す。




「お兄様との仲を取り持ってくれたのもあなた達のおかげなんだから…。大好きな二人に今回の私達の婚約を一緒に楽しんでもらいたいのよ」




そう言って王女は二人に歩み寄り、そっと彼らの手を取る。




「今日はその辺にして、ゆっくり宴を楽しんで下さいな」




にこっと微笑む王女はとても可愛らしい。




「姫…」

「姫さん…」




二人の胸がきゅぅんと温かくなる。




「ほら。テーブルを見て?二人の為にあなた達の大好きな物を用意させたの。クムジ将軍には高級ヤグーの照り焼きに、ハーク隊長にはグラッツとフルーツの盛り合わせ。ね?」




王女は二人にそう言うと、今度はくるりと後ろを振り向いて、広間で働く者達に聞こえる様声をかけた。




「今働いてる皆もよ。一段落したら、皆で好きなもの食べて休んでね?これは命令よ」




一気に兵士達だけでなく、周りの給仕、メイド、料理を切り分けるコック達…。

彼らの瞳に涙がにじんでくる。





「「「っ!姫~っっ!!!」」」




そうなのだ。王女はめちゃくちゃ良い子なのだ。




あぁ…。自分達は何てちっちゃいのだろう。




当事者の二人だけでなく、周りで様子をうかがっていた兵士や招待客達も、心洗われる。




王女には幸せになってもらいたい…。




だからこそ今回、争いの絶えなかった各部族間の垣根を越えて、自分達は歴史上前例の無いミラクルを実現したというのに…。




「………仕方ねぇな。姫がそう言うなら一時休戦だ。水の」





「それはこっちのセリフです。姫にここまで言われたら引き下がるしかありません…。あなたとは、いずれ必ず決着をつけます」




クムジを一睨みした後、ハークはガチャンと剣を鞘におさめ、クムジは樽をドゴンと床に置いて、それぞれの席に戻る。






………ひとまず危機は去った様だ。







「そんな事より姫?今日は一段とお美しいですよ。後で一曲お相手願えますかな?」




兵士の一人に席を譲ってもらった王女は、しばらく二人と歓談していると、ハークが優雅な仕草で彼女をダンスに誘う。




「もちろんよ。隊長。クムジ将軍も後で踊りましょうね?」




「んん?…あぁ~」




姫からダンスの誘いを受け、本来喜ぶ所のクムジだが、まるで苦虫を噛み潰した様に返事がはっきりしない…。




(……姫!!秘密なんですが、見かけ通り将軍はダンスが苦手なんですよ~)




(そ~。そ~。密かにこっそりダンス教室にも通ってるそうなんですが、めっきり上達しないみたいで…)




「まぁ。そうなの?」





コソッと隣にいたクムジの部下達が姫に耳打ちする。


しかし残念。何せクムジに付き合って、彼も相当酔っている……。コソコソ話が、声がダダ漏れて全員に筒抜けだ。




「ほ~」




弱みを握ったとばかり、ハーク隊長はさも楽しげにクムジを見やる。




「お…、お前らぁっ!!余計な事を言うでないっ!何じゃ水のっ!男がダンスなんぞ女々しいっ!後で飲み比べで勝負じゃっ。潰してやる!」




余程悔しいのか、クムジは顔を真っ赤にしてハークにまくしたてる。




「無駄ですね。返り討ちにしてさしあげますよ」




ハークは負けるなど有り得ないと言わんばかりに自信満々だ。




「ふふっ。大丈夫よ将軍。私がダンス教えてあげるわ。場数をこなせばきっと上手くなる。明日いらっしゃる奥様を驚かしてさしあげましょう?」




王女は頑張りましょうと言う様にガッツポーズをクムジに向けた。




「………………一曲だけじゃぞ?」





普段なら絶対に断るクムジだが、この優しい姫の前では森の野獣も形無しだ。




「あとダンスの前に今日は珍しい旅の旅団を呼んでいるの。異国の踊りと曲芸が素晴らしくて、都で大人気らしいわ。もうすぐ始まるから…」





その時だった。




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