若長のに愛人 黒髪の乙女⑤
ざわめきの中、老婆は若長を見て、ふむ…と言葉を紡ぐ。
「若よ…。フォーリンラブとな……?」
「フォーリンラブです」
「若の一目惚れかぇ…?」
「はい。シーイズマイスイート。マイエンジェル。マイディスティニー…」
(っ…!!)
次々隣の男から出てくる不穏な言葉の数々に、マヤは思わず頭を下げるのも忘れ、ぎっと若長を睨みつける。
次々と出てくる聞き慣れない単語と言葉の数々が、何を差し示しているのかマヤにはわからない。
もしかすると異世界の言葉かと、察することはできるが、はっきりとした確信はない。
だがしかし、直感と周りの反応が激しく訴えかけているのだ。
この男。
今間違いなく、とんでもないことを口走っている…!!
「ふぅむ…。ディスティニーとの~…」
若長の言葉に、老婆は細い目をマヤへとちらりと向ける。
目が合い、マヤは慌てて頭を下げるが…。
老人の方は、丸めた背中をカタカタと震わせて微笑んだまま…、
「ええではないか~~、ばばよ。青い青春じゃ~。甘酸っぱい愛の駆け引きじゃ~。わしらの若い頃もそうじゃったの~~。危ない恋の駆け引きは、人生の最高のスパイスじゃ~~~~」
なんて事を言っている。
まずい。
なぜか老人は、若長に無条件に肯定的だ。
「……今一度問おう。若よ。その娘…。確かに美しいが、同意とは至らぬうちに、ほんにそなたの愛人にするのかぇ?それでほんにええのかぇ?」
老婆が若長に問う。
「もちろんです」
即答する若長。
「彼女以外、私は受け入れられません」
はっきりとした意思表示…。
一瞬、周りの空気がシーンと静まり返る。
「……………若長がそこまで言うのであれば、きっと後悔はせんのだろぅ。わしらとしては、長のつとめさえ果たしてくれれば、後はぬしの主張を大事にしたいと思うちょる。水の姫には申し訳ないと思うが…」
老婆は致し方ないと言いながら、どこかほっとしたかのように、息をもらして肩から力をぬく。
「その者をそなたの愛人と認めよう。のぅ、えぇじゃろか?じじ様」
「そうじゃの~~~~。えぇと思うの~~~~。わしゃあ、はやくひ孫の顔がみたいの~~~~」
「……ありがとうございます!」
(!!!?)
若長は二人の言葉に感謝をあらわして、勢いよく深々と頭を下げる。
マヤの方は、内心反故になるのを期待していたので思わずぎょっとしてしまう。
おおおーーーっ!!!!
周りにいた森の民達も一斉に色めき立つ。
その中で、マヤはただ唖然とするしかない。
………認められてしまった。
………公認的に。
………愛人の立場を………。
いやいやいやいや、どう考えても普通ダメだろう。ひょっと出の、しかも出所のわからない娘を…普通は反対すべき所だ。
いやややややゃぁ…!!という女性達の悲鳴と、若さまぁ~~!一部野太い声が聞こえてくるが、大半はこの場を祝福しているようだった。




