若長のに愛人 黒髪の乙女③
「声…、あんまり出ないと思うけど、許してね?とりあえずうまく調子合わせてくれればいいから…。"ルタの踊り子さん"」
「…っ!」
ツワブキに支えられ、マヤがよたよたと前へと進む中、
誰にも聞かれないような小さな声で、隣の若長から言葉が投げかけられる。
『………だ、黙り…なさい…!!』
しかし、マヤの喉から出てきたのは、聞くにも耐えない、かっすかすの音にもならない声…。
元の声とは、到底比べるにもあたわない。
それでもマヤは、この異様なシチュエーションの中、言わずにはいられなかった。
『また……、クスリ…に、変な…の、入れた…わ…ね。お…、覚えて……なさい…………!!』
(この落とし前、必ずつけてやる…!)
必死のマヤの言葉も、音にもなれない乾いた音が虚しく空気の中に消えていってしまう…。
周りのざわめきと、突き刺す無限の視線と、自分たちの座敷を歩く畳のこすれる音…。
果たして、隣にいる若長。
ツワブキの耳にもマヤの声は届いているのだろうか…?
「残念。解毒剤以外、よけいな薬は入れてないよ。ちょっと悩んだけどね」
隣から楽しそうな若長の返答が返ってくる。
………どうやらこのかっすかすの声でも、通じてはいるようだ。
「たぶんその声は、君が受けた《ボンキュッボンマッサージ》であげた悲鳴…、というか雄叫びをあげまくった結果だと思うよ?マッサージ直後の君が魚の干物の様に声も生気も枯れ果ててたって侍女から聞いてたけど………、予想以上にかっすかすだね」
「……………。」
ククッっと微かな笑い声と共に、歩きながらツワブキに本当の原因をざっくり指摘され、マヤは思わずぐっと黙ってしまう。
(……………あれか)
つい、マッサージの直後に数回に分けて飲まされたあの薬が原因かと思ってしまっていた…。
マッサージの効果は、確かにあったかもしれない。
あの後…、確かに肌艶が良くなった気もするが、しかし、暗殺者の自分に肌艶の良し悪しなど関係ない。
二度とゴメンだ。
「あとで喉に良い薬煎じて届けるよ」
『………い…らない……!!』




