若長のに愛人 黒髪の乙女②
「おんゃ、まぁ~~~~~~」
足を一歩踏み入れてからの、第一声。
可愛らしい老婆の声がマヤを迎え入れる。
「ほんに、ほんに。森の伝統衣装のリャマがよ~う似合うちょる。普通は白のリャマが一般的だども、真っ赤なリャマに黒と金の刺繍とは、風変わりだが、なかなか豪華で良いもんじゃの~~。のぅ?じじ様」
「そうじゃの~~~~~~。ええの~~~~~~~~」
ホッホッホッホ。
ケタケタケタケタ。
広いお座敷の様な広間の奥。
一段敷居が高い場所に、ちょこちょこんと座る年老いた老夫婦。
その両脇には、いかつい顔をした老人や男衆がずらりとあぐらをかいて座っていた。
「遅かったね。待ちわびて迎えに行こうかと思ってた」
そう言って、奥座敷の老夫婦の前から立ち上がったのは、あの男…。
"森の若長"。
あの男だった。
老夫婦の前に座していたツワブキは、マヤの到着にニコッと笑みを浮かべると、さっと立ち上がってこちらに向かって近づいてくる。
奴も着替えたようで、今までマヤが見た水の兵士の服装でもなく、移動中や風呂場で着ていた楽そうな森の民族衣装の服でもなく…。
(森の長……………)
頭ではわかって。
言葉も交わし、殺そうともしていたが…。
それでも目の前の男が本当は誰なのか、この瞬間。ようやく自分の目に、正しく見えた気がマヤにはしていた。
首には黒い飾りひもと、シンプルな飾り石の首飾り。玉が飾られた木玉の腕輪…。
額飾りも、先ほど会った時より断然良い物をつけている気がする。
身につけている衣は、一目で上位の者とわかる、良い生地とセンスのある仕立て。
憎々しいが。
何倍も男ぶりが上がっている気がしないでもない…。
「体の調子はどう?痛みは良くなってるとは思うけど…」
「……………」
若長が目の前まで来て話しかけても、マヤは答えない。
「さぁ、俺が手を貸そう。こっちに来て先代の長のじじ様やばば様に挨拶しないと。皆にも君を紹介するよ。君たちは下がって待機しててくれ」
「「「はい、若様」」」
着飾った女達は、若長の指示通り、支えていたマヤの手を彼へと渡し、ススッと後ろへと下がって行く…。
「………ゆっくりでいい。転ばないように前に歩いて」
「…………。」
ぐらつく体で、マヤは男の手を取り、促されるまま…。
広間の最奥。
老人と老婆が座る上座の方へとゆっくりと歩いて行く。




