森の若長 ツワブキ②
ポイっと女達に投げ出され、マヤはマッサージ台に盛大にベシャッと体を打ちつけた。
体を打ちつけた痛みより、はるかに筋肉や骨諸々に突き抜ける痛みに、マヤは気絶寸前だ。
(な…、なんで私は今こんな状況に……)
働かない頭を振り絞り、マヤは状況を理解しようと必死に痛みをこらえて辺りを見回す…。
湯気で暖かく、霞がかった視界…。
乳白色の広い石造りの湯殿に、生き生きとした緑の観葉植物がところかしこに飾られている。
暖かい湯は次々と石造りの獅子の口から流し込まれて、先程までつかっていた湯には美しい花々が色とりどりに、優しい芳香を放って浮かんでいた。
そして投げ出されたマッサージ台の上で、今自分は5~6人の使用人らしき若い女性に取り囲まれている。
女達の髪の色は全員緑色…。
美しい飾り石をあしらった、伝統工芸の耳飾りや額飾りが印象的だ。
(森の民…。じゃあここは森の…)
目を覚ます前の記憶が、徐々にマヤの脳裏に蘇ってくる。
その時だ。
「さぁ!マヤ様?ご準備は良いですか?いきますよ~~??」
「ちょっ……っ!まっ……!」
待ってと言いたくても、体の痛みに邪魔されて、マヤはうまく言葉を発することが出来ない。
若い女性の何人もの手が、四方八方から容赦無くマヤに向かってのびてくる。
「~~~~~…っ!!」
こうなれば、耐えるしかないのか…?!
間近に迫る彼女達の手の気配に、へたな拷問より悶え苦しむだろう痛みを覚悟しながら、マヤがぎゅっと目を閉じたその時…。
女達の壁の向こうから、聞き覚えのある男の声が彼女の窮地を救った。
「皆、今日はその辺で勘弁してやってくれないか?彼女は他人に身体を触れさせるのはあまり好きではないんだ」
(……!?)
「オレが触れるのは別だけどね。悪いけど少し彼女と話がしたいんだ。二人にしてくれないかな?」
聞き覚えのある男の声に、混乱していたマヤの頭が一気に冷えた。
水の都での出来事が、彼女の中でありありと鮮明によみがってくる。
うつむせのまま。
女達の間から、痛みをこらえて湯殿の入り口の方をなんとか見てみると、そこには都で出くわした、あの憎たらしい男が爽やかに笑みを浮かべながらこちらを見ていた…。
「やぁ、オレの愛しい人。目覚めの気分は?」
「…っ!」
視線が合い、ご機嫌いかがとばかりの陽気な男の言葉に、思わずビギィ!っとマヤの眉間に深いシワが刻まれる。
目覚めの気分…?
愛しい人………!?
(………っ。良いわけないでしょ!この野郎っ!!!!)




