森の都④
「ワシもよぅ解らんが…、何やら水の皇女との婚約をトンズラして、別のおなごをかっさらってきたらしい。なんでも、長い黒髪の美人な踊り子さんらしいぞ?ルタの旅団からかっさらってきたとか…」
「……ルタ…?」
…ドクン――…!
村人の言葉を聞いて、ユキノブの心臓は思わぬ形で大きく撃ち抜かれる。
「ルタの長い黒髪の女性ですか?赤髪でなく…??」
「赤髪ぃ…?いやぁ、黒髪って書いてあったと思うが……」
(…………)
若が連れ帰ったという女の特徴を聞いて、ユキノブの中である予感がざわざわと駆り立て始める…。
『…先生?俺は諦めるつもりは微塵も無いよ』
ここを発つ前。
若の残した意味深な言葉が脳裏を横切る…。
『俺は欲しい物は必ず手に入れる。楽しみにしてて。賭けに勝つのは最後は俺だよ』
考えるよりも先に、ユキノブは勢いよくその場を走り出していた…。
「先生?!」
「ユキノブ!?お主何処に行く気じゃ!!?」
後ろから中年男性とヤールの呼ぶ声が聞こえたが、今はそんな所ではなかった。
まだ騒ぎの原因を知らずに避難する人々の波をかき分け、ユキノブは一目散に警報の伝わってきた方向。
森の都の入り口へと全力で走っていく…。
(若…。まさか、あなたは…!?)
走りながら、ユキノブの頭の中には、ある小さな赤髪の女の子の姿がよみがえってくる…。
『…先生』
『あなたはここにいちゃだめな人…。あなたは外で人の為に生きなきゃいけない人よ……』
そして、自分はその子に救われてここいる。
でも…。
"片や一方"は、赤髪の女の子に大事な存在を奪われた…。




