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マヤ 〜忌みつ姫と森の若長〜  作者: 早瀬ヒカル
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森の都②






タンデが門番を始めて6年間…。いや、生まれてこの方27年間で初めて見る光景だった。

無論、サジルも同じだろう。





森の都と言うからには、確かに植物を操る戦士は少なくはない…。




しかし…。




木々が自ら砂煙を撒き散らしてよっこらせと地面を抜け出し、脇に避けては再び元の位置の地面に戻っていくなんて…、





前代未聞だ…。





(※普通操るなら精々、枝や弦や葉を操る程度だ)





しかも何故か、ものすごい勢いでその異常現象はこちらに近づいてきている気がする…。





「なぁ、サジル…」




「……何?タンデ…」




「これは森の皆に知らせるべき事柄だよな…?」




「……そうだね。急いだ方がいい気がするっ…!」





二人は顔を見合わせると、一目散に矢倉の鐘の元へと向かって走り出す…。





「ま、待て二人共ーっ!気持ちは分かるが、はやまるなぁー…っ!!」




土煙の中…、





何か聞き覚えのある声が聞こえた気もしたが、タンデもサジルも最早振り返る余裕なんて何処にも無い。





数秒後…。





ガンガンガンガンッ……!!





門番二人の異常事態を知らせる鐘の音が、《からくり自動警鐘機》の伝達によって、都の隅から隅のまでくまなく響き渡る…。





「……?なんだ、なんだぁ?」





「……敵襲かのぅ?それともまた太古の樹林帯から魔獣か獣魔が出てきたのかぁ…?」





畑で土を耕す者も、台所で食事する者も、皆手を止め、警鐘の鳴る方角を確かめるために辺りを見回す…。





「みんなーっ!取り合えず避難だー!やる作業はいったん中止してくれー!」




「女、子供は世界樹の根元の避難所に!男共は鐘のなった方角の様子を見に行ってくれー!急げーっ!」





留守を任されているクムジ直下の森の兵士達は、素早く情報収集を始めると同時に、人々の安全を守るため、的確に非難誘導を始める。





《自分の判断で人を殺してしまうなら、最善を尽くし、尽くし尽くしてから後悔しろ》が、緊急時のクムジの教えの一つだ。






色物揃いのこの都で、その教えは、日々色んな意味で兵士達の骨身に染み着いている。





「敵襲か!?若も将軍も手練れの若い衆も不在の時に、何てこった!!ユキノブっ!ワシの剣を持てぃっ!!!!」





そう言って、プンスカ真っ赤に息巻く可愛いおじいちゃんは、ヤール・カルバ。95歳。





身長約140センチメートル。




こう見えてクムジの師匠…。





森の民の五賢人の一人にして、ラダと呼ばれる長剣の達人である。





今、彼のいる森の都の中枢。




長老院大会議塔モハフスナの中では、国の中枢を担う若者達が不在の中での緊急事態ということで、皆落ち着きを無くして、てんやわんやのちょっとした騒ぎとなっていた…。





「まぁまぁ、ヤール殿。落ち着いて下さい。まずは民の避難が先です…。あなた様も、他の長老院の方々とご一緒に非難された方がよろしいかと…」





このままだと本気で飛び出して行きそうなおじいちゃんを、幸信と呼ばれた眼鏡をかけた優しげな男性は、のほほんといった雰囲気でそれとなーく止めに入る。





「ワシは絶対こうなると思っちょった!!だから若がよそ者と婚姻なんて、絶対反対じゃったんじゃいっ!!」






……しかしヤールは人の話を聞くどころか、ますますテンションはヒートアップだ…。






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