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宴の翌朝 消えた族長⑧
その時だ。
マヤが意識を手放す瞬間、ピィィィとかすかに空気に溶けるようなかん高い音が森全体に響いた…。
ピクリと反応したのはコウ青年だが、一瞬の出来事と馬車が道を走るり抜ける音で、辺りを見回してただの気のせいか?と頭をかしげる。
しかし…。
意識が深い眠りに堕ちる中、マヤの暗殺者として長年染み込んだ感覚が、そのかすかな音の意味を聞き逃さない…。
マヤの頭の中に、片目を眼帯で覆った銀髪の男が姿が映し出される。
《マヤ……》
《命令を続行しろ………》
頭の中で、男は侮蔑する様な目でマヤに命令を下してくる…。
……マヤは汚い物を見るかの様なその男の瞳が、何よりも大嫌いだった。
(……間違いない。……あの男だ…)
進む馬車の中からも、あの男の視線が感じられる…。
きっと森の都はただでは済まない…。
そう確信しながら、マヤの意識は深い眠りの底にどんどん沈んでいく…。
「わ、若…!彼女が……」
「……………」
向いの席から戸惑うコウの声が社内に響く。
マヤの瞳から一筋の涙が流れていた事は…。
深い眠りの奥底で…、彼女自身が気づくことは全く無かった。




