宴の翌朝 消えた族長⑤
「……昨夜の事なんですが、宴に紛れて誰かがうちの神殿に侵入しようとしたらしいんですよ」
(!)
「報告を受けて私も調べに行った所、確かに途中まで侵入の形跡があるんですが、それから先に進んだ様子は全く無いんですよね…」
(それは初耳じゃぞい…)
内心ドギマギしながら、クムジはハークの言葉に少しだけピクリと反応する。
「その侵入者はどうやら女性だったらしいのですが、夜遅くにそちらの若がなにやら大きな荷物を持って城を出て行ったとか……」
「心当たり御座いますよね?将軍」
(!!!!)
ピッシャーン!ドッゴロドッコーン!!
クムジの中で激しい雷鳴が鳴り響く。
若と荷物と侵入者(女)。
大いに引っかかるその言葉…。
ついでに若の事も筒抜けている。
クムジの顔から徐々に血の気が引いていく。
「その荷物。女の髪の毛らしい物が一房出ていたそうです。あまりにもホラーすぎて見かけた使用人が止めるにも止められなかったとか」
ガチャリ。
ハークのもう片方の剣がクムジの喉元に鋭く添えられる。
「……説明して下さいますよね?将軍??」
(説明しろじゃと…?)
若が姫との婚約をトンズラしたあげくに、謎の女と自分の国へ愛の逃避行…?(しかも無理矢理)
……言えると思うか?
(絶対ムリ)
(ワシ…。生きて帰れるじゃろうか…)
クムジだけが危機的状況にいる中、周りからは変わらずのんきないびきが響き渡っている。
(寝てられるのは今のうちじゃぞ……)
クムジは生温かい目で部下達の寝顔を見やる。
その後。
誕生祭に合わせて後から着いたクムジの奥方の手によって、その場にいた森の民全員が再び地獄を見るはめになったという事は…。
詳しく知らない方が身のためである。




