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マヤ 〜忌みつ姫と森の若長〜  作者: 早瀬ヒカル
33/59

愛人⑩






(………………賭け……!?)





意味ありげな男の言葉に、マヤはただ睨み返す事しか出来ない………。





すると、ふとどこからか…。

甘い微香がかすかにマヤの鼻をくすぐり始めた。






(……!?)





最初、マヤは目の前の男の香りが香ってきたのかと思ったのだが…。





最初かすかに香った花の様な甘い芳香は、徐々にその芳香の濃さを増し、マヤを優しく包み込んでいく…。






(この香りは……)





眠り花のアトラス……?





「……悪いね。少しの間君には眠っててもらうよ。次目覚めるときには森の都に着いてる。楽しみにしてて。俺の愛人さん」





「………っ」





急激な眠気が、容赦ない力でマヤを深い眠りの底へ引きずり込んでいく。





朦朧としていく意識の中、マヤは落ちるはずのない眠りの吸引力に必死に抗おうとする。





(おかしい…。アトラスは一般的な催眠剤。…………その程度の眠り薬なら耐性がついてるはずなのに…)





「………眠りの薬効のアトラスの花にネラスの毒を少しだけ配合してあるんだよ」





(……!)




マヤの考えている事がわかるのか。




なおも抗おうとし続けるマヤを見て、男は香の成分の秘密を明かす。




「ネラスの毒を体に害がない程微弱な量を配合すると、割合によって眠りの効能を10倍引き出す効果を出すんだ。薬の効きにくい君の為に、俺が特別に配合したんだよ」




男の言葉を聞いて、マヤは霞んで閉じつつある瞳でぎっと男を睨みつけた。





ネラスの毒と言えば巨大な動物でも一舐めで5分と保たない猛毒の神経毒だ。





不思議とその症状は感じられないが、その毒を使うなんて、やはりこいつは狂っている…。






そんな事を考えながら…。

マヤの意識はもはや限界だった。






「お休み。良い夢を……」





月明かりの差し込む、シンと静まり返った青白い広い神殿の中。




抗う力もぬけ果てて…。





男の目の前で、マヤは力なく深い深い眠りの中に落ちていった…。



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