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マヤ 〜忌みつ姫と森の若長〜  作者: 早瀬ヒカル
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囚われの身 脅迫⑤






その瞬間、マヤは獣のように大理石の冷たい床を駆け出し、瞬時に体を反転させ素早く男の側面へと回り込む。





回転の反動を利用し、鋭い手刀が男の首目掛けて思い切り振下ろされた。




「………なるべく穏便に済ませたかったんだけど…、やっぱり無理か」




「!」




手刀がきまる数センチ手前…。

いきなり男の目がふと変わった。




バシィッ!!




激しい肌を打ちつける音と共に、男がマヤの手刀をきれいに受け止めていた。




(こいつ…!)




片手を男に掴まれ、利き手を拘束されてしまったマヤだったが、すぐさま状態を倒し、そのまま倒れた反動と体重の力を足に乗せ、強烈な蹴りを男の顔に向けてくり出す。




「無駄だよ…」




男がそう言うと、再びすんでの所で蹴りを肘でかわされてしまう。




しかしマヤの猛攻は止まらない。



再び体の回転と手首のひねりを使い、腕の拘束を巧みに振りほどく。




その間にもう一度蹴りを繰り出したのだが、力の軸を反らされて払われてしまった。




(………、この男…強い!)




一度体勢を整えようと、蹴りと打撃の連打の後、マヤは飛び退いて低く着地の体勢に入る。




しかし、それを見逃さない男の手がマヤに向かって伸びてくる。

またもや片方の手が男に拘束されてしまった…。




「逃がさない」




にっこり笑う男の顔はさも余裕げである。




「…………っ!!」




そうして二人の激しい攻防は数十分続いた。




ハァ…、ハァ…、ハァ…。




段々とマヤの息が上がってくる。





(まさかこの私が、ここまで手こずるなんて…!)





予想外の展開にマヤは困惑していた。





(…それに思った以上に体力を使ってしまっている……)





マヤが刻々と消耗する中、男の方は額から汗を流しているが、それ程息は切らしていない。




あれからどれくらいたったのだろう…。




後の事を考えると、もうマヤには一刻の猶予も無かった。




すると男はマヤの焦りを感じ取ったのか、再び話しかけてくる。




「もう抵抗は止せ。オレは君よりも強いつもりだ。体術に関しては特に…」





「っ!……黙りなさい!」




男の挑発に乗せられ、マヤは男に向かって肘鉄をみまわす。




しかしまた力の重心を反らされかわされてしまう。




(戦いずらい…!私の苦手な動きとパターンばかり)




そして何より、男の方は全く反撃をして来ないのだ。




その代わり、マヤを捕らえようと必要以上に接触してくる。




それがますます彼女を苛立たせた。




武器が無いとはいえ、普段巨大な魔獣達をいとも簡単に倒すマヤだ。




ここまで彼女に対抗するとなれば、実力はどこの国を見ても将軍クラス…。




下手をすれば一師団も全滅する覚悟でいかないと、マヤを抑えることはまず無理なのだ。





なのに、マヤに集められていた各国のあらゆる軍事情報の中に、男の存在らしきものは全くない。




それに加え、時折見せるまるでマヤを知っているかのような言動…。




(ただの下っ端兵では有り得ないのに…。いったい何者なのコイツはっ…!!)




とにかくはやくケリをつけなければ、今回の計画は続行不可能とされて水の国からは撤退を余儀なくされる…。




それではマヤの本来の目的は達成出来ないのだ。




タイムリミットは目前…。




時間はもう残されてはいない。





(力を…貸しなさいっ!)






マヤは自分の奥底に眠る何者かに訴えかけた。





その時だった。





ふいに男の拳がマヤを襲う。





「……っ!!」





マヤの中で何かが応えようと、力の隆起がのぼりつめてきたとき、初めて男が反撃してきたのだ。



「なっ…!」




ふいに虚を突かれたマヤは、男の拳をはらうのに精一杯で、続けざまにきた足の攻撃についていけなかった。




マヤは状態を崩し、激しく床に身体を打ちつける。





大理石の床がマヤの痛みを倍増させた。




「…っ!」





「……すまない。力を使われれば流石のオレも勝てないから…。悪く思わないでくれ」




「……!!」




(……こいつ!!)




あからさまに力の使うタイミングを見計らっていた。

まさか私の力の存在も知っているというのだろうか…!?





強烈に打ちつけた痛烈な痛みと混乱に体が動けないでいると、ゆっくりと近づいてきた男に上からのしかかられ、うつむせの状態で両手を頭の上に拘束されてしまった。




すると…、




ガシャン。 ガシャン。





マヤの両腕に冷たい鉄の感触と、嫌な金属音が鳴り響く。




そして…、




カシャン。




マヤの首のあたりで少し品の良い金属音が鳴った。





「この首飾りはオレからのプレゼント。気に入ってくれると嬉しいんだけど」





(首飾り…!?)







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