祝宴 死の踊り子⑥
「………おや?婿殿。どこへ行かれる?」
「あぁ…!すみません。ちょっと厠へ行ってきます」
マヤの舞いに、誰もが目を惹きつけられる中…。
広間の上座から、にっこりと一人だけその場を離れる者がいた。
使用人が慌ただしく行き交う中を静かに移動して廊下まで出ると、ようやくホッと息をつく。
「……危ない、危ない。もう少しで全てが水の泡になる所だった」
そう言って、彼は笑いながら額を拭って歩き始める…。
「……人生、賭けてみるもんだな」
ふふっ、っと少しだけ楽しげに呟いて廊下を歩くのは、四日前…。あの城の片隅で、難しい面持ちで都を見下ろしていたあの青年だった。
「あっ…!君…」
青年は何か思いついたのか、廊下を警備していた若い水兵士に声をかける。
声をかけられ、水の兵士は失礼があってはいけないとビシリと緊張する。
「はいっ!!何でしょうか!?」
「悪いんだけど、ちょっと君に貸して欲しい物があるんだ」
「はい!すぐにお持ちいたします!!何をお持ちすればよろしいでしょうか!?」
兵士が大きい声で勢い良く応えると、それでは遠慮なくとでも言うように、青年は若い兵士に向けてすっと指を差した。
「君の服……」
「……?」
「君のその制服、ちょっとだけ俺に貸してくれないかな?」
にっこり。
彼の口から出たのは、兵士の予想だにもしないトンチンカンな要求…。
「じ…、自分のこの制服でありますか……??」
青年の要求に、兵士は思わず目を点にした。




