ノーチート ~女神との勝負に負けた俺2~ (短編)
…はっ!? 気付いた時俺は少女だった。
「はぇぇぇえええーー!?、少女ノータッチ!、警察に突きだされちゃうー」
男は錯乱して過去のトラウマを思い出していた、親切って怖い ((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
よし、落ち着いた、C級パーティーの面々にお礼を言い、回復魔法を使ってあげた。
残り寿命29日
「減ってるぅぅー、あれかあれが原因なのか!? それにしても俺何忘れちゃったのぉーー!?、気になってしょうがないんだけどぉおおーー」
説明しよう、どうやら男は少女に使ったポーションの残留思念か元々そういう錬金物だったのか、とにかく命を再び拾った、期限付きという形で…
その時、男は元ポーションだったからなのか、ポーション回復術もとい生気を使う術を会得していた。
頭の上に浮かぶ日数、本来なら生者には見えないのかも知れないが、これもよく分からない…
こうしてハードボイルド少女が誕生し、男は心の内にいまだ眠り続ける少女の為に己がやれる事を探すのであった…
男が取れる選択なぞ少女の為に大金を稼ぐことくらいである、少女救出の代金もギルドが肩代わりしたからだ、少女はD級、まだまだ駆け出しの魔術師であった。
女神に負けた経験から地道に行くか、一発逆転を狙うかとても頭を悩ませていた。
掲示板を凝視していると、銀の鎧を纏った女性が近付いて来て、声を掛けられる。
一緒に廃都の調査に行きませんかと? どうやら髪の色で属性が分かるらしい、少女の毛色は赤、火属性の魔術師だ。
女性のパーティーはBランク、輝くのはミスリルの鎧だ、一緒にひょろりと全滅したと噂がたった廃都の調査依頼を受けることになった。
誰もやらない仕事はギルド経由で指名依頼となるようだ、その分報酬に色が付く。
道すがら適度に自己紹介を行う、道中魔物を倒し、怪我したメンバーを治療したら、それは見せない方がいいと神官さんから苦言を頂いた、回復魔法はとても貴重なものらしい、それと切り札は最後まで取って置くものだとも…
残り寿命23日
ややあって目的地に到着、幽気が漂っているのか、身震いがする。
街に入ってしばらく進んだ時、突然スケルトンやゴーストの大群が襲って来た。
流石はBランク、ばったばったと倒して行くが、唐突に神官さんが吹き飛ぶ、頭に何かを食らったみたいだ、そのあとはあっという間だった、スケルトンやゴーストの合間を縫う黒い高速の球で一人一人と倒されていく…
「初めに最もやっかいなかた、それから各個撃破、戦略の常識でしょうか…、残る可愛いおふたかたは私の魂の糧としてあげましょう」
強烈な濃い魔力と幽気を伴って、そいつは現れる、エルダーリッチー高位の知能を持つ化物である、…足が震える。
銀の甲冑の乙女は素早くミスリルの剣で斬りつけるが、バキンッ!、相手の魔力強度の前に容易く折れてしまう。
「ひははは、待ってたかいがありましたね、こんな上玉、あなたがたの魂はさぞ美味そうだ」
「うっせんだよ、ハゲの骸骨が!」
魔物が饒舌に語る最中、生気を集めた攻撃を飛ばし、魔物の半身を削り取る、仕留め損なった…、ここが正念場だ、大切な記憶ー少女への献身だけを残して、全てを出し切れ!
少女の体から生気が立ち昇る、魂を燃料にした一回限りの大博打ー超身体強化だ!
間欠泉のように沸くその力は周りにも伝播する、隣にいた金の乙女の髪が白く染まる。
乙女はそれを収束させ、折れた剣を新しく創り直す。
「がぁあああー、*****」
半身を失ったリッチは発狂し、支離滅裂な怨嗟を飛ばす、それは高速の矢となって、少女達へと襲いかかる。
少女はそれを躱し、リッチに近づきながらもある一点に生気を溜める、乙女は高速で近づき、生気で練られた剣で魔物を斬りつける。
近づくにつれリッチの攻撃も激しくなり、体に突き刺さるが、生気の回復がそれを上回る、そしてリッチへと全力の拳を放った。
こうして廃都での攻防戦は終わった、Bランクパーティーのほぼ全滅、誰も知らない男の犠牲という結果を残して…
だが、魂というものは引き継がれるもの、眠れし少女は眼を覚まし、その髪の毛先を橙色へと変えた。彼女は回復魔法を使えるようになり、その色は “緋色” だったいう…
これは後に白の剣聖と緋の賢者と呼ばれる者達の若き日の冒険譚である。(完)
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