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Snow drop  作者: サナリ
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第4話

頭がぼんやりと覚醒する。

久しぶりに、睡眠を堪能した気がする。

薄く目を開け、起き上がり身支度を整える。

まだ、頭がぼんやりする。


コンコンコンコンッ

「どうぞー。」

「失礼いたします。」

いつもながら、見計らったかのようなタイミングでケアリーが訪ねてくる。

「おはよう。ケアリー。」

「おはようございます。食事は如何されますか?」

「紅茶とサラダをお願い」

「かしこまりました。」

ケアリーは頭を下げると、キッチンへと向かっていった。

ところで、いま何時なんだろうか?

ふと、時計を見ると昼近くだった。

「え!?…寝すぎた!!」

私は、培養室に走った。

蓮が待っているかもしれない。

「蓮!」

培養室に入り、直ぐに蓮のもとに駆け寄ると蓮が少し驚いた顔をしていた。

また、起動している。

それとも、眠っていなかったのか?

「来るのが…はぁっ…遅くなって…っ…ご、ごめんね。」

日頃から運動をしないので、家の中を全力疾走しただけで呼吸が荒くなる。

蓮は、私を見て頭を左右に振ると笑顔になった。

「デバイス、蓮の状況確認」

あ、デバイスを連れてくるのを忘れた。

へなへなと、その場に崩れ落ちる。

「蓮、デバイスを連れてくるから少し待ってて。」

蓮がコクンと頷くのを確認すると、早歩きで部屋に戻る。

みっともないところを見せないようにすると、昨晩決意したばかりなのに醜態を晒してしまった。

部屋に戻って直ぐにデバイスの存在を確かめた。

「デバイス10!いくよ。」

コンコンコンコンッ

「食事をお持ちしました。」

忘れてたーっ!

「ごめんケアリー、蓮を優先するから食事を置いたら培養室に来て!」

「かしこまりました。」

私は、デバイスを連れて早歩きで培養室にむかった。


「蓮、お待たせ!状況確認!」

蓮は特に変わった様子はなく大人しく培養機の中にいる。

プログラムは全て完了、身体も問題なし。

培養機を操作して、培養液を抜く。

「お待たせいたしました。タオルをお持ちしました。」

「ケアリー!良いタイミング!」

「ありがとうございます。」

培養液がすべて抜けるまで時間が掛かる。蓮のことだかは勝手な行動はしないだろうから、ふたを開けよう。

培養機のロックを解除し、ふたを開ける。蓮が起き上がりやすいように手を差し出した。

「こんにちは、蓮」

蓮は手をつかみ起き上がる。

「ルナ、こんにちは。朝に来ないから何かあったのかと思ったよ」

「それは…寝てました。」

あまりの情けなさに、声がしぼんでいく。

「じゃあ、疲れは多少とれたんだね。普段寝てないから仕方ないよ。」

蓮はあくまで、優しい表情のままだった。

「身体の調子はどう?」

私は、それでも自分の情けなさに意気消沈したまま蓮に確認する。

「異常はなし。馴染んでいるよ。そんなに、落ち込まないで。」

「マスター、蓮さんのことは私が見ています。もうお1人の状況確認をされた方が宜しいのでは?」

「そうだね。よろしくねケアリー。蓮、少し外すね。」

「わかった。ケアリーさん、はじめまして。」

「はじめまして。蓮さん、今後よろしくお願いします。」

2人は、笑顔で挨拶をしている中、私は、もう1人の培養機に近付く。

培養機の中は骨組みを構築している最中だった。

「デバイス、状況確認」

素体との体格差で、進捗が遅れぎみ。

それ以外は、問題はない。

プログラムはまだ何も入っていない。

脳が全く出来ていないからだ。

焦らず、創り出す。まずは、骨組みがある程度出来てないないとプログラムをいれても馴染まない。

このまま、様子を見る必要がある。

ケアリーがこちらに来たのが、見え視線を向けた。

「蓮さんの、培養液が全て抜けました。このまま、浴室へお連れしてもよろしいでしょうか?」

ケアリーは、私の滑った手をタオルで拭きながら確認する。

「え?!ケアリーが洗うの?」

「いつも、そうですが何かございましたか?」

なんだろう、なんか嫌だな。

「蓮たちは、私の知識を持ってるから1人でも大丈夫だと思うよ。」

ケアリーと話ながら蓮のところに向かった。

「もう、コード外しても良いよね?」

蓮が邪魔そうに、コードを軽く引っ張っている。

「いいよ、壊さないように手加減してね。」

蓮は見た目に似合わず、かなり筋力を付けている。全力で引っ張りでもしたらコードが壊れてしまう。

「もちろん、大丈夫だよ」

コードを引っこ抜き、ケアリーが用意したタオルで頭を拭う。

「じゃあ、浴室借りるね。ケアリーさん服の準備お願いできますか?」

「はい。何か希望はありますか?」

「なんでも良いよ。あー、ただ動きやすいものでお願いします。」

「わかりました。」

ケアリーが、少し砕けた話し方をしている。蓮も私と比べて丁寧な話し方だ。

2人はどういう関係性になるんだろうか?

ケアリーが、服を準備するために培養室から出ようとしていたのを引き止める。

「ケアリー!」

「はい。何かございましたか?」

「ケアリーにとって、蓮ってなに?」

ケアリーは考え込んで、首をかしげる。

「仰っている意味が分かりかねますが…?」

単刀直入に聞きすぎたと反省する。

噛み砕いて話さないと、私の考えは通じないなんて当たり前のことだ。

「私に対する態度と、蓮に対する態度が違うから…なんでかなと思ったの。」

「マスターは主従関係にあり私の主人です。ですが、蓮さんはマスターではないため同じ立ち位置の存在と認識しています。」

納得した。確かに蓮は私の助手アンドロイドで、ケアリーと主従関係にない。だからケアリーは蓮に対して砕けた態度をとれる。

蓮が羨ましかった。

私がずっと、ケアリーに求めていたものを手に入れることが出来ている。

「そっか、ありがと。困らせてごめんね。」

「とんでもないです。」

ケアリーは頭を下げてから、培養室を出ていく。ケアリーを見送り、私も自分のや部屋に戻ろうと白衣のポケットに手をいれたときだった。

寝る直前に機械音を聞いたような気がしたのを思い出しキューブを取り出す。

キューブにはアンドロイドの、依頼が来ていた。

「また!?連続で?!」

ユーリと司が遠退くのを感じて不安になる。2人に会えないのだろうか。

アンドロイドの内容を確認する。

男性型、修理?

一般の技師では修理できないアンドロイドの修理依頼だ。夕方に運ばれてくるとある。

幹部のSPアンドロイド。

主人を守って故障したのだろうか…。

私は、研究室へ目的地を変更し歩きだした。

「デバイス、キューブからアンドロイドの情報を出して。」

ピーッ

「開示しますか?」

「お願い。」

歩きながら、アンドロイドの故障理由を確認する。

「主人を守って、複数ヶ所の刺し傷と銃撃を受けた…。」

何故、技師で治せないのか。

「骨組みに歪み、プログラムに異常有。ウイルスの可能性。」

相手は最初からSPを狙って攻撃したということ?

いや、私が考える必要はない。ウイルスか…蓮にもし感染でもしたら困る。

私が、修理しよう。

ユーリ、司…もう少し待っていてね。

研究室へ入り、故障アンドロイドの骨組みを確認する。

神経まで損傷して、動ける状態ではなく自己回復が機能していない。ウイルスのせい?

「ウイルスの解明が先になりそうだなぁ。」

コンコンコンコンッ

「どうぞー。」

「遅くなりましたが、食事をお持ちしました。」

ケアリーが部屋から運んできたのだろう。紅茶は淹れたてのようで湯気が出ている。

「ありがとう。いただきます。」

私は、紅茶を口に運びため息を付く。

そのまま、サラダを食べていると蓮が入ってきた。

「お待たせ、ルナ。」

培養液まみれだった蓮は、髪は少し癖のある巻き髪で黒い瞳、身長は180位の長身で全身黒い服を着て立っていた。

格好いいなぁっ!!

「蓮、似合うね。」

平静を装うのも大変だ。早く慣れないと仕事にならない。

「ありがとう。やっと、粘液まみれから解放されてサッパリした。」

粘液まみれの時でも、見ずも滴るなんとやらだったけどね!!

「これから、修理の仕事が来るんだけど蓮は研究室にいたらダメだからね。あと、ケアリーも立ち入り禁止。」

「かしこまりました。」

「なんで?」

ケアリーは、説明をしなくても言うことを聞いてくれる。主従関係の影響だろう。

「修理が必要なアンドロイドにウイルスが入ってる可能性があるから。ダメなの。」

「なんだ、それなら大丈夫。ルナが創ったセキュリティが侵入を妨害するから。」

蓮…マジだ。真面目に言っている。私を信用してくれているのは嬉しいが未知のウイルスに対して、なんという自信。

「国の重要人物であるSPアンドロイドがやられる位のウイルスなんだよ?」

「ルナのセキュリティの方が強いよ。」

どこから、そんな自信が出てくるのか…。

蓮は折れるつもりはない様子だし。

小さくため息を付いてしまう。

「わかった。でも、プログラムには触らないで。」

「それじゃあ、俺は設計を見るから。」

話しはまとまった。

蓮の仕事振りには興味はあるが、危ないことはしてほしくない。

「アンドロイドが届いても、培養機までは業者に運んで貰うから絶対に触らないで。」

「わかった。ルナは過保護だな。」

なんと言われようと、私の家族を守ることが優先だ。

家族…あ!ユーリと司を蓮にお願いすれば、修理に携われなくできる!

「蓮、貴方にやってほしいことがあるんだけど。」

「なに?」

「蓮には、ユーリと司を創ってほしいの。」

我ながら名案だ!危ないことから遠ざけられて、2人にも会える!一石二鳥だ!

「でも、優先するのは国の依頼でしょ?」

「それは、私が与えられた縛りで蓮は助手なんだから国からの縛りは関係ない。」

少しの間、蓮が私をじっと見ている。目をそらしたら負けな気がして、私も蓮を見る。あー、格好いいなぁもう!!

「わかった。」

「よかった。それじゃあ、よろしく。」

「まさか、ここまで過保護だと思わなかったよ。」

アンドロイドが来るまでの間、研究室で蓮にはユーリと司の進捗状況の話をしていた。最終的な微調整は私がやることになったが、これで蓮の能力が分かる。

私の知識と経験があるのだから、疑いようもないがアンドロイドなのだから私より優秀な可能性は十分ある。

「デバイスは何個使う?」

「んー、ルナが使わなかった分で良いよ。」

「わかった。今回の件が終わったらデバイスも性能あげないと…。」

「あぁ、昨日の夜話してた女の子アンドロイドのプラグラム解析?」

「そう、解析も整理も遅すぎだもの。」

蓮は、ため息をつきながら苦笑いをした。

「ルナ、君は優秀すぎるんだよ。」

「それを蓮が言うと自画自賛に聞こえる。」

「まぁ、聞いて。機械の方が演算が早いのは当然だけれど複雑なプログラムは演算だけじゃどうしようもない。整理の遅さは改善の必要があるかもしれないけど、あまりデバイスを責めないで。」

「わかった…。」

私は、少し落ち込んでいる。蓮なら気持ちを理解してくれると勝手に思っていた。プログラムが複雑であっても解析するというのは人間より機械の方が演算が早いと思っている。

それを、正面から否定された。

複雑になれば、機械の演算も遅れると。

それでも、私の方が早いというのは…。

「ルナ、君は自分が思っている以上に優秀すぎる。自分を過小評価してるくらい。」

そんなことはない。私は、たまたま博士に選ばれた。メイクも家事もできない。

少しアンドロイドに詳しいだけだ。

ポンッ

私の頭に、蓮が手をのせる。

「責めてる訳じゃない。俺はルナが創ってくれたアンドロイドだから自分の能力を分かってる。それは、俺の能力はルナの力ってこと。俺の働きを見てて、それはルナの能力だから自信に繋げて。」

自分を過小評価したことなんてない。

でも、蓮が言うなら自分自身を見直す機会だと思うことにする。

「わかった。」

蓮が頭をゆっくりと、撫でる。

ピーッ

「業者が来ました。」

デバイスが来客を告げる。

「アンドロイドをそのまま、培養室まで運んでもらって。蓮は、ユーリと司をお願い。」

「わかった。」

私は、培養室に向かった。

業者の方が先に培養室へ着いていた。

「博士。よろしくお願いします。」

業者の男性が、壊れたアンドロイドが入っているのであろう黒い袋を担いでいる。

「こちらこそ。あと、申し訳ないのだけど、私のアンドロイドを感染させるわけにはいかないので培養機に移すのを手伝って貰える?」

「もちろんです。」

黒い袋を開けると、目を閉じ眠っているようにしか見えない男性型アンドロイドがいた。身体には報告通りの傷。

私が、培養機のふたを開けると業者に男性がアンドロイドを培養機にゆっくりと横たわらせた。

「ありがとう。」

「いえ。…博士、ウイルスのワクチンが作成可能ならおねがいします。」

「わかりました。」

そのまま、業者を玄関まで見送る。

「それでは、後をよろしくお願いします。」

「分かりました。お疲れ様です。」

培養室に戻り、培養機を操作してSPアンドロイドにコードを繋ぎ培養液で満たす。培養液は普段とは違い再生に特化した液体で普段より粘度が高い分、培養機を液体で満たすまで時間が掛かるだろう。

その間に、連れてきたデバイスでSPアンドロイドの状況確認をする。

骨組みに歪み、神経切断などなど。

プログラムでは、歪みに対応できないまでも神経を再度繋ぐように再生機能が働くはずが機能していない。

プログラムの解析をしていると、蓮の言葉を思い出す。

優秀すぎる。嬉しい言葉のはずなのに…。

今は、落ち込んでいる暇はない。

プログラムが停止し、全ての機能が麻痺している。国の情報を盗むためでもなく、SPを遠隔操作し幹部を殺すためでもない。

「このウイルスの目的は…?」

まだ、培養液は半分も入っていない。

デバイスをもっと連れてこれば…っ!

デバイスを責めないで。また蓮の言葉を思い出す。

今は、思い出さなくて良い!!

ウイルスを何とかしなければ、治しても復帰できない。

ふと、視界にもう1つの培養機が映る。

ウイルスがあの子に感染しても困る…。

SPアンドロイドの培養機をスタンドアローンに設定した。念のため、彼女の状況も確認しておこう。

彼女の側まで行き、培養機を覗き込む。

「デバイス、状況確認」

昼よりは進んでいるが、やはり長い目で見る必要がある。

考えにくいが、少しの間でも同じサーバーに繋がっていたのだからウイルスに感染していないかを確認する。

念入りに確認して問題ないことが分かると、小さなため息がでた。

「研究室に戻りにくい。」

まさか、ここまで自分が弱いなんて知らなかった。これじゃあ、子供だ。

いや、私は、子供なんだ。小さい頃から外界から隔離されてここにいる。

身体は大きくなっても、精神が子供のままなんだ…。

私は、その場でうずくまってしまった。

情けない。こんなことじゃ、ユーリと司にも落胆される。

怖い…。

こんなことをしている場合じゃないのは分かってる。早く治してあげないといけないのも分かってる。

でも、研究室に戻りにくい。でもでも、1人でいるのは寂しい。意味が分からない。

「デバイス、他のデバイスを5台連れてきて。」

私は、のろのろと立ち上がりSPアンドロイドの側にいく。

結局、逃げている。こんな私のどこが優秀なんだ。

「貴方は偉いね。ボロボロになっても守ったんだから…。…?」

SPアンドロイドの培養機を撫でていた手を止める。

キューブを取り出し、情報を確認する。SPアンドロイドはツーマンセルで行動すると、聞いたことがあった。

なのに、運ばれてきたのは1人。

もう1人は、どうなっているのか気になった。

「…接触なし?…通信接続。」

ピーーーーーーーーーッピピッ

「なにか?」

男性研究員がうんざり顔で映った。

無駄な時間を使いたくない。申し訳ないが主任と直ぐに話がしたい。

「主任と代わって。直ぐに!」

「はぁ?せめて、用件を…」

「代わりなさい!!」

相手が話している途中に、食いぎみで大声を出す。

「かしこまりました。」

相手も不愉快そうだが、構っている余裕はない。

「お待たせいたしました。何かありましたか?」

笑顔の主任が映る。

今回は世間話を挟む余裕はない。

「今回の依頼の件です。SPはもう1人いたんですよね?侵入者との交戦はあったんですか?」

主任の笑顔が消え、真面目な顔になる。切り替えが早くて助かる。

「監視カメラ、アンドロイドの視覚データから確認しましたが、交戦したのは今回お願いしているアンドロイドのみです。幹部を背に庇って、交戦には参加せず応援要請をだしていた記録もありました。」

「相手の人数が1人というのは?」

「そちらも、監視カメラ等で確認しています。」

「監視カメラの映像を貰うことはできる?」

「かしこまりました。監視カメラと視覚データを、お送りします。」

「ありがとう。それじゃ。」

「はい。失礼します。」

通信を切ると、すぐに映像データが送られてきた。

映像を確認してすぐに分かった。

視覚データで、相手の目が光っている。アンドロイドの証拠だ。

加えて、戦闘特化のSPアンドロイドを凌駕する動き。このアンドロイドならSPアンドロイドを無視して、幹部を殺すには十分な力がある。多少は、手傷を負うかもしれないが三ヶ条の範囲だろう。

映像を見るとSPアンドロイドが倒れてから、接続している。この時に、ウイルスをいれ逃走。もう1人のSPアンドロイドには、手をださず幹部もスルーしている。目的は最初からSPアンドロイドだ。


SPアンドロイドは、常に最新の戦闘データをアップデートされている。そんな彼らを圧倒できるアンドロイドとなると…。

「違法アンドロイド…。」

既存のアンドロイドを改造したか、新たに創り出されたアンドロイド。

量産型アンドロイドの改造は専門家にしか許可されていない。

改造内容も全て国が管理している。

専門家を使わずに自らで行うことは禁止されている。

また、博士以外がアンドロイドを創ることも禁止されている。そもそも、創る能力があれば博士になっている。

だが、頭脳レベルが高くても功績、業績を残さなければ博士にはなれない。

今回の件は、違法アンドロイドが起こした…。つまり、国に対しての反乱分子。

国も違法アンドロイドと気が付いているだろう。だから、博士である私に依頼が来た。

培養施設を持っている博士は、今の4人だと私と、もう1人。今回は私に白羽の矢がたった。

「SPアンドロイドだけを狙った。」

なぜ?

人間には医者がいる。アンドロイドには…技師…研究員…博士。

博士のもとに運ばせるため?

映像データを止め、キューブをしまう。

「何かを伝えるため?」

デバイスは、既にいる。

ウイルスは暗号で、複雑だ。技師や研究員でも分からなかったウイルスなら尚更だろう。

「デバイス、バックアップ!」

フォローは、危険かもしれない。感染のリスクがある。

「解除したものを、整理」

私は、ウイルスの解除を進めながらも頭で警鐘が鳴っている気がして怖かった。


培養機の側に座り込んで作業をはじめて数時間経った。

何かおかしい…?

「デバイス、整理したものを見せて。」

ピーッ

ウィンドウには、古代文字が並んでいる。

「えっと、たしか…。これが、『に』で、こっちが『ろ』、『さ』に『る』か…。」

まだ、ウイルスが全て解除できているわけではないから、断片的にしか分からないが博士に向けたメッセージだろう。

「はぁ…。腰が痛い。」

「なら、研究室の椅子で作業したら?」

声がしたのは、真後ろだった。

「ひゃっ?!びっ…くりしたー。」

「全然、戻ってこないしデバイスは行っちゃうし。ずっといたのに気が付かないし。」

私は、培養機を見る。

既に培養液は満ちていた。

「ずっと?」

「キューブで主任と話してる途中から。」

「声かければ良いのに…。」

「集中してたから。」

良かった。蓮と普通に話せている。

依頼のお陰かな。

「あ…、蓮が来たのは主任と話してるときって…。」

「そう。だから、映像も見てたよ。俺も戦闘じゃ勝てないなぁって思った。」

「蓮は戦闘タイプじゃなくて…!」

「分かってる。ただの感想。」

「蓮はユーリと司を創ってると思ってた。」

私は、視線を蓮の足元まで下げていた。

「創ってたよ。途中まで創ってて、こっちに来て、ルナが没頭しだしたら創ってた。」

おずおずと蓮の顔を見る。

「ほんとに?」

「あーぁ、俺の仕事してる所を見て欲しかったのに…結果だけ見て貰うことになるなんて残念だ。」

結果…?もう、過程ではなく結果?

「もう、できたの?!」

「ついさっき。」

私のテンションは一気にはね上がった。

「デバイス!ユーリと司の情報!」

表示された情報を嬉々として見つめる。

プログラムと設計のバランスが良い。私が調整する必要はなさそうだ。

「すごいよ!蓮!!パーフェクト!」

「どうも。基礎は出来てたから。」

言葉とは裏腹に蓮も嬉しそうにしているのが、表情で分かる。

「それじゃ、送信!」

培養機が稼働する。素体が、培養機の中に入り、ふたが閉まり、ロックされ、培養液が注がれていく。

「これじゃあ、2人を創ったのは蓮だね。」

「創ろうと考えてくれたのはルナ。基礎を創ったのもルナ。だから、生みの親はルナだ。」

そっか…そう考えてくれるのか。

「それじゃ、行こうか。」

「はーい。デバイスおいで。」

警鐘はまだ、鳴り止まない。

でも、私は、蓮を創り出す程の天才なんだから大丈夫だ。

「ルナは、まず食事をとって寝ること。」

「え?!まだ、仕事が進んでないよ!」

「期日がある訳じゃないんだし、大丈夫。俺が勝手にやったりもしない。俺はデバイスの調整をしてるから。」

「でも、いつもは仕事を…!」

蓮が足を止め、私を見る。なんだろう?

「また、ユーリや司のときも昼近くまで寝るの?」

「!?」

確かに、睡眠不足だったから起こった事だけど…。

「今回の依頼は、そんなに時間掛からないから!」

「朝に来るはずの、ルナが来なくて寂しかったなぁー。」

「ぅ…。」

「なにか、あったのかと心配したなぁー。」

「うぅ…。」

チラチラと私を見ながら、わざとらしく顔を伏せる蓮。

でも、いつも仕事を優先させてきた。それで問題が起きたことなんて、今回が初めてだ!同じ過ちを繰り返したりしないし、目覚ましをかければいい!!

「ルナ。俺は譲らない。」

急に真面目な顔になって目を見てくる蓮に一歩下がってしまう。

くそぅ!顔が良いとズルい!格好いい!

「くぅーっ。はぁ…。分かりました。」

私は、両手を軽くあげて降参を示した。

「よし。じゃあ、ルナの部屋に行こうか。ケアリーには研究室立ち入り禁止を命じてたから。」


それから私は、ケアリーの食事を頂き、ジェットスチームに入り、寝ることになった。

蓮に敗北している。情けない…。


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