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Snow drop  作者: サナリ
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第3話

目が覚めると、視界が一瞬ぐにゃりとした。起き上がると、体を支えていた腕がカクンっと力が抜ける。

まだ、少し横になっていた方が安全と判断しベッドに横になる。

額とこめかみに手を当て、デバイスがついてないことを確認すると安心した。


「デバイス、吸出し状況は?」

ピーッ

「100%です。」

寝ている間に、外すということもしていない。


「すーーーーっ…はぁ…」

酷い汗。服や髪がまとわりついて気持ち悪い。疲れたからか、お腹も空いたけど食べる気力がない。

幸い、寝ていると脳の揺れもなく視界が揺れることもない。このまま、大人しくしていれば立ち上がれるだろう。


まさか、ここまで気持ち悪くなるとは思わなかった…。でも、これで3人を創り出す準備が進んだ。このために、必要だったことだと思えば報われる。


そういえば、3人目の名前を考えていなかったことを思い出す。少しワガママな男の子…。身長はユーリよりも更に低くケアリーより若干高い位にしよう。

賑やかになるかと思うと自然と笑顔になっているのが分かる。


(つかさ)…」


可愛らしく、いい名前だと我ながら思った。蓮には研究の助手をしてもらい、ユーリはケアリーの補佐と研究の助手をしてもらおう。司は、依頼されたアンドロイドを創ってもらう。


司は駄々をこねて、研究の手伝いがいいと言い出しそうだな。

早くみんなに会いたい。


コンコンコンコンッ

「どうぞー。」

「失礼致します。」

ケアリーが入ってきて、止まった。

「眠ってらっしゃいましたか?」

「違うよー。情報の吸出しが気持ち悪くて横になってるの。」

否定の意味を込めて手をヒラヒラさせる。

「さようでございましたか。まだ、調子が悪いのですか?」

「横になっていれば大丈夫だから、心配はないよ。」

ケアリーが顔を覗き込んできた。

「体温、脈拍などに異常はありませんね。」

ケアリーは、見ただけで相手の身体をスキャンして身体の異常を検知できる。これは、アンドロイドなら元から持っている通常の性能。

「何か軽めの食事を用意致します。」

「ありがとう。」

上半身を起こしても、さっきみたいなふらつきはない。そのまま、立ち上がる。

「じゃあ、その間に汗を落としてくるから。」

「かしこまりました。」

ケアリーは頭を下げると、部屋から出ていきキッチンの方角へ足音が遠ざかった。

着替えを用意しバスルームへ向かう。


ジェットスチームで身体の汗を落とし、頭から足の爪先まで綺麗にする。

ほんの数秒で、綺麗になるのだから便利なのだが、昔はお湯を使って入っていたらしい。とてもリラックスできると主任研究員の彼女が言っていた。

彼女は今でも、お湯を使うお風呂を愛用していると話していたことがあった。


きっと、こんな時に入るとリラックス出来るのだろう。


部屋に戻ると、ケアリーが食事を運んできていた。

「お疲れのため、あまり食欲がないようにお見受けいたしました。そのため、お粥をご用意いたしました。」

なんだか、病人になった気分。だけど、あまり、噛まずに食べられるのは有り難かった。大分、気力がやられている。

「ありがとう。助かるよ。」

お粥を口に運ぶと、薄味で食べやすかった。ゆっくりとほぼ、流し込むように食べる。

「本日は、もうお休みになられた方が良いと思います。」

「さっきまで、眠っていたから目が冴えちゃって眠れそうにはないかな。」

「相変わらず、睡眠時間が短いですね。」

少し困った顔でケアリーは笑う。

「蓮の…助手アンドロイドのプログラムを創ったら寝るよ。」

「かしこまりました。」

それきり、会話はなく食事に専念した。


研究室に移動しデバイスで吸出したデータを確認する。3人同じデータを使うことになるのだから念入りに記憶データの取捨選択をしていく。

それから、1人ずつプログラムを組み上げていく。学習機能、感情プログラム、自分から吸出したデータ。主従関係にならないように、データの改竄。最後に念入りにセキュリティを幾重にも重ねていく。

無理に突破しようとしたら、全データが削除されるようにする。


基本データを3つコピーし、彼らの性格をそれぞれプログラムしていく。

基本となる性格。どんな風に成長するかは学習プログラムと自分から吸出したデータで変わってくる。きっと個性的な子たちになってくれるだろう。


気が付くと、朝になっていた。

ケアリーに怒られる…。もしくは、呆れられる…。

しかし、吸出しで眠っていたから眠気はない。ケアリーは自室で待機しているだろうからバレないはず…。


ケアリー…ユーリに補佐を頼むのだからケアリーのデータが欲しいがケアリーに何かすれば警報がなる。

プログラムに何かしなくても吸出しだけなら警報はならない気がする。

ケアリーに確認をとってみよう。本人が分からないなら、研究室に確認するか外で待機している警備アンドロイドに聞いてみれば良いだろう。


しかし、ケアリーも私と同じく体調を崩してしまわないかという心配があった。


ユーリには必要な情報だが、ケアリーに負担はかけれない。少し試して無理なら他の方法を考えよう。


それからは、思考を切り替えて身体の設計を行った。

バランスを考えながら、骨組みを設計し筋肉等を付けていく。多すぎると骨組みが持たない場合もある。もちろん、筋力にも影響が出るし、見た目も変わってくる。

肌の色、髪の色、瞳の色、唇の色等を微調整を繰り返し創りあげていく。

最後まで出来上がったら、プログラムと一緒に培養施設の培養機に送り込む。


培養施設は素体を自動で運びだし、培養機に入れ情報通りに創り出してくれる。だが、様子を見て情報の書き換えが必要になるケースもある。骨組みと筋肉のバランスは繊細で、何かをきっかけに崩れることもある。だから、培養施設の所持を申請し自分で毎日様子を見に行く。


それに、1度でも誕生の瞬間を味わうと手放すことはできない。本当に感動の瞬間なのだから。


コンコンコンコンッ

「ど、どうぞ」

「おはようございます。また、寝ずにやられていましたね?」

バレている。ケアリーの笑顔が逆に怖い。ケアリーに効果音を付けるなら『ゴゴゴゴゴゴッ』と迫ってくる感じがピッタリな気がする。

「いや、全然眠気がこなくてさ」

「さようでございますか。」

怖い!!笑顔なのが怖いです!

話をそらそう!

「あ、そうそうケアリーの情報吸出しってしてもいい?」

「私は、かまいませんが…警報がどうなるかまでは分かりかねます。それで、眠気がないからと私室にも行かれなかったのですか?」

そらせれませんでしたー!

「ん?なんで、私室に行ってないって分かったの?」

「足音が研究室から移動していませんでした。」

忘れていたが、アンドロイドは視覚や聴覚、嗅覚なども人間より優れている。

「ごめんなさい。つい、没頭してしまって…」

「私に謝られる必要はございません。ただ、体調を崩したばかりなのに無理をされたご自身の身体を労ってくださいませ。」

「以後、気を付けます。」

ケアリーは、ため息を付くと頭を下げた。

「出過ぎた事を申し上げまして、申し訳ございません。」

「いいよ。プログラムしたら寝るって言ったし」

ケアリーは頭を上げ、笑顔を向けてくれる。今度のは怖くない、いつもの優しいケアリーの笑顔だ。

「それでは、朝食は如何されますか?」

「サラダだけでいいや!あと、糖分が欲しいから…」

「アッサムをミルク多めですね?少しお砂糖もいれておきます。」

「うん。お願い!」

ケアリーがキッチンへ向かうのを見送ると、自分は、まずは楽な方の道を試すことにした。


家の玄関まで来た。この区域に入ることは滅多にない。博士は外出を禁じられているからだ。来客もない、博士が住んでいる事が隠されているからだ。

人がいるということも隠匿されている。


玄関の内側から外側に向かってノックをする。

すぐに、警備アンドロイドが出てきた。本当にずっといるんだな…感心してしまう。

「おはようございます。博士、何かございましたか?」

体格の非常に良い、というかゴツい男性型アンドロイドと真逆の細くて素早さそうな男性型アンドロイドが敬礼をしながら訊ねてきた。

「おはよう。聞きたいことがあるんだけどケアリーの情報吸出しをアンドロイドを創るために実施したいのだけど、これは禁止事項?」

「禁止事項です。ケアリーの中には、国に関する情報や博士の情報がありますのでトップシークレットです。」

ちぃっ。心の中で舌打ちをする。

「国から許可が下りる可能性は?」

「ありえません。」

ユーリには、自分でケアリーから学習してもらうしかないというわけだ。

「分かりました。ありがとう!」

「無茶はなさらないでくださいね。」

「貴方たちもね!」

研究室に確認する手間は省けた。でも、ケアリーからの情報提供が難しいとユーリが慣れるまで苦労しそうだ。

自分では家事が一切できない女の知識と知恵じゃ、役に立たないだろう…。


自分の研究室に戻ると、ケアリーがサラダと紅茶を準備していた。

「ケアリー…」

そのまま、ケアリーの背中に抱きつく。

「如何されましたか?」

「警備アンドロイドが、ケアリーの情報吸出しは国が許可しないってー」

ぐりぐりとケアリーの背中に額を押し付ける。

「では、私の補佐をしてくださるアンドロイドの方を1日お貸しください。」

ケアリーは振り向きながら笑顔で言ってきた。

「何かあるの?」

「1日で覚えていただきます。主にマスターに関することを。他は補佐していただきながら覚えられるでしょう。」

心強いが、自分のなにを覚えてもらう必要があるのだろうかと疑問に思う。

「さ、朝食を召し上がってください。」

「わかった。」

ケアリーから離れ、紅茶に口を付け一息つく。それから、無言でサラダを食べた。いつも、あまり食べないからなのか、生まれつき食が細いのか、肉や魚より野菜の方が食べやすかった。

あ、こういうことをユーリに教えるのかな?自分の趣味趣向的なものを?

でも、自分は、そんなに特殊な人間じゃないから1日も掛からない気がする。

ケアリーに考えがあるのだから、任せて大丈夫だろう。


朝食を済ませると、培養施設に向かった。今、培養機にいるのは蓮だけ。

ユーリと司は、まだプログラムまでしか創れていない。

デバイスを起動させ、進捗状況を確認する。姿は身長180位であることしか分からない状況だ。筋肉組織が骨組みを包み込むように覆い被さり神経を繋いでいっている。こめかみと額には機械が繋がっていてプログラムを流し込んでいるが、まだほとんど入っていない。 まだ脳の部分が完成していないのだから当然だった。

「蓮…。」

ピクリと指先が僅かに動いた気がしたが、そんなはずはない。

プログラムされる順番は、アンドロイド三ヶ条が最初だ。それが済んでマスター登録になるが、蓮たちには主従関係は無効にしている。仮に、アンドロイド三ヶ条までの登録が完了していても、今は感情プログラムが登録されている最中だろう。感情だけで、記憶や知識がなく眠っている状態の蓮が動くはずがない。

「またね、蓮…。」

動く気配はない。やはり、勘違いというか見間違いだ。

デバイスを連れたまま、培養施設を出た。


ピーッピピッ

白衣のポケットから、キューブを出すと国からのアンドロイド依頼だ。

ユーリや司を創り出したい時に限って依頼が来る…。依頼内容を確認する。

「女の子か…」

是非とも司の初仕事にしたかった。

キューブをポケットにしまい、研究室に向かった。


今回の女の子は、破棄された幼女型アンドロイドの後継という依頼。

幾分か身体を成長させたものを創る。そして、前のアンドロイドのデータを移植し精神を少し大人に近づける。

普通なら、前に創った人に依頼されるものだと思うのだが…。

国からの依頼という名の命令には背けないので、創ってしまおう!


まずは、プログラムの確認を…この子を創ったのは博士だ!プログラムが物凄いことになってる!同じ博士に依頼がいかなかったのは既に亡くなっているのか?

考えても仕方ない。

このプログラムは複雑過ぎる!全力でやらなくては、相手に落胆されてしまう!そうなれば、なんの罪もないアンドロイドに申し訳が立たない!

デバイスを普段より多く使う必要がある。普段はデバイスを5つで、作業しているが多めに10は用意しよう。

「デバイス1から3はプログラムの解析。4から7で、成長過程の予測を演算と理想体型の構築。8から10はバックアップと補助。」

まずは、プログラムを理解しないと同じ子を創り出せない。解析しているデバイスを操作し、解析の終わったプログラムを次世代の博士にも分かる様にプログラムを組み立て直していく

この博士は何を考えて、こんな複雑なプログラムにしたのか…。そんなことを考えている暇はない!

とにかく、プログラムの解析が遅い!!

自分でやった方が早いと、判断しデバイスから解析権限を取り上げる。

「デバイス1から3は、解析後のプログラムを整理。」

身体の回りをふよふよとデバイスが明滅しながら浮かんでいる。その中からデバイス10を、引っ付かんでプログラムの解析を始める。

デバイス3台では、足りなかったのかドンドン解析が進んでいく。デバイス3台では、プログラム整理が追い付かなくなり始めた。すぐに、デバイス8と9が加勢している。


翌朝、プログラムの解析は終了した。今は蓮の培養機の前にいる。

「おはよう。蓮…。」

やはり、動く気配はない。

それが当たり前だ。

デバイス10だけ連れてきているので、蓮の進捗状況を確認する。

今は、皮膚を創っている最中で筋肉や神経が見えている部分もある。プログラムは、感情プログラムの最終段階まできていた。

感情プログラムは、それこそ異常なほどに複雑にできているので脳に読み込ませ馴染ませるのに時間が掛かる。

隅々まで確認し、蓮が順調であると判断できた。

「またね。蓮…。」

そのまま、研究室に戻り成長過程の予測演算を確認する。

「可愛いなぁ…。」

趣味の良い博士だったのか専門家に頼んだのかは分からないが、成長後の姿は可愛かった。スタイルも良いだろう。

継続して設計を指示しておく。

自分は、未だ終らないプログラム整理を無視して終っているところからプログラムの組み立てを始めた。

たまに、ケアリーが紅茶を置いていくので糖分をほしくなったりすることなく没頭することができた。

プログラムを組み立てながら、精神年齢を少し上へと設定していく。言動や動作、考え方等多岐にわたる年齢による影響を考慮する。

そうか、アンドロイドをただ、老化させるんじゃダメなんだ。年齢に合わせて考え方とかも変わるのは自然なことだ。

見た目だけ年齢を重ねても、精神が子供なら意味がない。

自分の研究にも穴があった。こんなことにも気が付かないなんて恥ずかしい限りだ。

博士と呼ばれて実は調子に乗っていたのか?

自分は、天才だと自惚れていたのか?

自己嫌悪で、手が止まりそうになっているのに気が付く。

邪念を払うように頭を左右に振る。

今は、そんなことよりプログラムに集中しないと!!

遅くなれば、遅くなるほどユーリや司に会える日が遠ざかる!


翌朝、また蓮の所に来ていた。

「おはよう。蓮…。」

反応はない。

デバイス10で進捗状況を確認する。

身体全体は皮膚に変わっていた。筋肉や神経などは見えない。

こめかみと、額に機械が繋がってプログラムを直に流し込んでいるのが機械の明滅で分かる。感情プログラムは無事に馴染んできているようで、平行して知識や経験を流し込まれている。

自分から吸出した時に、あれだけ気持ち悪かったのだから逆に流し込まれるのも大変ではないかと心配になり顔を覗き込む。

苦し気な感じはないように見える。

「よかった。またね。蓮…。」

少しふらつきながら、階段を上って研究室に向かう。流石に眠い。

プログラムの組み立てが終わったら一旦、仮眠を取らなければ効率が落ちる。

研究室でデバイスから設計を確認する。

設計に関しては細かな希望があり、尚且つ前のアンドロイドの情報もあるので順調だ。

設計の微調整を済ませると、プログラムの組み立てを始める。

プログラム整理は終っているので、デバイス1から3と、8から10で組み立てる。デバイスはあくまで、補助。メインで稼働するのは自分自身だ。


気が付くと、椅子にもたれ掛かるように寝ていた!

記憶がない!いつ寝てしまったのか!

「いたっ!~っ!!」

変な姿勢で寝たせいで、身体を動かすと痛みが走る。

「デバイス、何時間寝てた?」

ピーッ

「3時間27分です。」

仮眠としては良い数字だが、記憶がないのが厄介だ。なにかヘマをしていないか急いで確認しないと…

自分の作業分と、デバイスの作業分をチェックする。自分の意思で寝ていたら区切りの良いところまでやれて、こんな余計な作業は必要なかったのに!

確認が済むまでに、1時間掛かった。ミスがなくて安心はしたが、1時間分を取り戻さなくてはいけない!

眠ったお陰で、頭はスッキリしている。

ピピッ

「なに?」

「設計が完了しました。」

「見せて」

内容を確認、とりあえずプログラムが組み立て終るまでは現状のままで問題はない。

「全デバイスで、プログラム組み立て実施」

これで、効率は良くなるはずだ。

プログラムを年齢に合わせながら変更し、組み立てていく。

元の記憶や経験には、一切手を加えない。これは、依頼主からの当然の希望だろう。自分の子供が知らないはずのことを知っていたり記憶しているのは嫌なのは当たり前の感情だ。

今回の経験は、蓮にも共有したかった。

この女の子からは、色々と学ばされた気がする。


翌朝、また蓮の所に来ていた。

デバイス10を連れている。

「おはよう。蓮…。」

蓮が目を開け、目が合う。まだ、ぼんやりとしていて自分の状況を理解できていないようだ。

進捗状況の確認をする。

身体はほぼ完成。少し癖のある黒髪に長い睫、黒い瞳、自分好みにし過ぎた端正な顔つき…。

プログラムは、感情プログラムは無事に馴染んだ。苦しくないか心配していた私の記憶と経験の流し込みは終っている。

後は、学習機能や戦闘プログラム等を流し込んで馴染めば終わりだ。いや、誕生だ。

「またね。蓮…スリープ。」

ゆっくりと、蓮が目を閉じていく。

蓮の様子を見届けてから、研究室に戻った。

「お腹空いたな…」

研究室に戻り、第一声がそれだった。

完成も見えたので安心して、お腹が減ったのだろう。

「ケアリー!ごはーん!」

コンコンコンコンッ

「お食事は、何になさいますか?」

「すごく、お腹空いたからパッと作れてお腹いっぱいになって、サッパリしたもの」

「かしこまりました。」

ん~、これで通じるのだから凄いな。

ケアリーは私の感心している姿にきょとんとした顔をしながらも頭を下げるとキッチンへ向かっていった。

「デバイス、プラグラムの構築状況は?」

ピーッ

「89%完了しています。」

今日で、プログラムと微調整は終らせる!

ご飯が出来るまで、プログラムを創っていよう。デバイスを操作しプログラムと設計のウィンドウを並べる。プログラムを創りながら微調整を平行して行う。

コンコンコンコンッ

「はやっ!どうぞー。」

「失礼いたします。サンドイッチを作って参りました。」

デスクにフランスパンに切り込みをいれ、レタスとトマト、モッツァレラチーズを挟んだサンドイッチと紅茶を用意してくれた。

「ありがとう!これ大好きなんだ!」

「恐れ入ります。」

私は、パンにかぶり付きモグモグと食べていく。この組み合わせを考えた人は天才だと思う!

大きなフランスパン1本分はあったのを、完食した。

「お腹いっぱい!美味しかったぁ!!」

「お気に召していただけて、なによりです。」

「じゃ、仕事をしちゃうね。」

「はい。失礼いたします。」

ケアリーは空になった食器をもってキッチンへ向かっていった。

私は、さっきの続きだ。

プログラムを進める度に、設計に微調整をしていく。地道に確実に、間違い等無いよう作業に没頭していく。

没頭していくほどに作業のスピードが早くなっていく。


プログラムと設計を終え、培養機にデータを送り込んだ。

既に夜になっていた。

意外と時間が掛かった。残り89%と聞いていたから、もっと早く終るかと思っていた。

今日は、もうサッパリして寝よう。

ジェットスチームで汚れを落とし、着替えていると蓮のことが気になった。

寝る前に様子を見ておこうと思い、デバイス10を連れて培養施設へ向かう。

培養機には2つの影があった。

1人は、さっきまでプログラムしていた女の子のアンドロイド。データを送ったばかりで素体の状態。これから、身長に合わせて骨組みが変形していく。

もう1人は、蓮だ。

進捗状況を確認する。

プログラムの最終段階に入っていた。身体との融合も問題なさそうだったが、念のために軽く微調整を行う。

コンコンコンコンッ

「?」

音のした方角、斜め下を見るとスリープ状態のはずの蓮が起きている!

私、声は出していないはず!

「蓮、なんで?!」

まさか、足音で目を覚ましたの?

主従関係は無いが、創造主である者の声には基本的に従うのがアンドロイドだ。最後に言ったのが、スリープなのは間違いないはず。

だとしたら、やはり私の足音で起こしてしまったのか?

「ごめんね、蓮。起こしちゃった?」

蓮はゆっくりと、頭を左右に振る。否定ということだろうか?

「じゃあ、どうして…?」

蓮は、もう1つの培養機を指差した。

培養機の稼働音?!

今まで、培養機の稼働音で目覚めたアンドロイドはいない。

蓮の聴覚が良すぎるのだろうか?

「デバイス、蓮の身体情報」

確かに、通常のアンドロイドより身体能力は秀でているように創ったが…蓮が休めないのでは意味がない。

コンコンコンコンッ

「ん?」

蓮がまた、頭を左右に振る。私と同じ知識と経験を持つ蓮は、私が何をしようとしてるか察知して止めてる?

「聴覚の調整はいらないの?」

蓮がコクコクと頷く。

「でも、稼働音がうるさくない?」

また、蓮がコクコクと頷く。

「我慢するの?」

今度は、笑顔になった!

やばっ!可愛いっ!

心配を掛けないように笑ってくれているのだろうけど…その心遣いが嬉しいのもある。けれども、好みの顔に笑顔を向けられて…悶えそうになるのを必死に堪えた。

「蓮、自力で眠れる?」

少し考え込んでいる様子だった。

「寝たくない?」

コクコクと頷く。

え?なんで??いま、色んなプログラムとか入れられて情報整理したいはずじゃないの?

なんでって聞いても培養機の中じゃ話せないし…。

あ、身体は出来てるんだから培養液を抜いても平気か。

「蓮、培養液を抜いても良い?」

コクコクと笑顔で頷く。

可愛いーっ!!はぁーっ落ち着け自分!

培養機を操作し半分まで培養液が残るようセットする。

「蓮、培養液を半分だけ抜くけど、頭のコードは取ったらダメだよ。」

コクンと大きく頷く。

いちいち動作が可愛いんだよ!!!

心の中で転げ回る自分が見える気がした。

ピーッ

「完了しました。」

ふたのロックを解除し、開ける。

「蓮、はじめまして。それと、こんばんは。」

培養液は滑るため、起き上がりやすいように手を差し出す。

その手をとって、ゆっくり蓮が起き上がる。

「はじめまして、ルナ。こんばんは、それと手を汚してごめんね。」

蓮は申し訳なさそうに、私の手を見る。釣られて手を見るとヌルヌルした液体が付いていた。

「これくらい大丈夫だよ!」

「そう言って貰えると、助かるよ。」

蓮は笑顔になった。はぅあっ!

手のヌルヌルなんか一瞬で忘れてしまう破壊力だ。早く、蓮の顔になれないと仕事にならなくなる。

「あ、それで何で寝たくないの?」

「ルナがいるのに、勿体ないなぁって思ったから。」

首を少し横に傾けながら真顔で言いやがった!可愛いじゃないか!!

首をかしげるとか可愛すぎる!!

「じゃあ、私が部屋に戻れば寝てくれる?」

「情報の整理をしたいから、大人しく寝るよ。」

「よかった。」

何か問題があって寝ない訳じゃないので安心した。話し相手がほしかったのかな?

「ルナ、俺は明日の昼頃までここにいるんだよね?」

「そうだね。情報整理と馴染ませる時間を考えたら昼頃だね。」

さすが、私の知識と経験!賢い!

「ユーリともう1人は?」

「創る前に依頼が来て、プログラムの途中なの。名前は司だよ。」

「今、培養機の中にいるのが依頼の子?」

「そう。プログラムが複雑すぎて、すっごく大変だった。」

「後継機だったのか…ルナが大変な思いをするってことは誰か博士の創ったアンドロイドだったんだね。」

話をしててもストレスがない。余計な説明をしなくても理解してくれる。

まさに、理想の助手!

「そうなの!プログラムは大変だったけど顔は凄く可愛いんだ!!」

「俺とどっちの顔が好き?」

ふぇっ?!今、何を言いやがりましたか?!蓮に決まっている!

「蓮に決まってるでしょ!私の理想と言うか好みの顔に創ったんだから!」

「知ってる。」

蓮が笑いを堪えている。顔を背けているが肩が揺れている。

「え?」

私、何かおかしなこと言った?

「あっさり、認めるんだね。好みの顔だってこと。」

「私の経験、つまりは記憶を持っているんだから今更でしょ?」

「それもそうだけど。俺、結構あざとい動きしてたと思うのに反応がなかったから創られてる最中に変えられたのかなって少し思ったからさ。」

やっぱり、あの動きは可愛らしく見せてたのかー!!効果的中だったよ!よく我慢したグッジョブ自分!

「それは、ない!断言できるよ!!」

「ん、分かった。夜も更けてきた。ルナはそろそろ寝ないと。いつも睡眠足りてないよ!」

「分かった。蓮も寝てね!おやすみ!」

「おやすみ、ルナ」

そっと、ふたを閉じロックをする。培養機を操作して培養液で満たされるのを確認する。

蓮が笑顔で手を振ってくれた。

私も手を振って、自分の部屋に戻った。

部屋に入ってすぐに腰が抜けた。

あれは、ずるい!可愛すぎる!!尊いよ!!

はぁ~っ創造主として情けないところは、見せられない。

「デバイス、蓮の進捗確認」

創っている最中に培養液を抜いて、しかも会話までしてしまった。情報整理に費やす時間を浪費させてしまったのだ。

何か影響が出ていても不思議じゃない。

ウィンドウを凝視する。

「見たところ異常はなし。」

蓮はアンドロイドだ。脳内マルチタスクで一方は演算、もう一方は会話、更に一方で情報処理も出来るだけのアンドロイドの、中でも超高スペックだ。

むしろ、私が蓮の助手になってしまう可能性が高い。

そうならないよう、頑張らないと!

立ち上がり、手の滑りをとりベッドに横になる。疲れがたまっていたのだろう一気に睡魔が襲ってくる。

微睡む意識のなかで、何か機械音が聞こえた気がした。

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