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Snow drop  作者: サナリ
2/6

幕間

夢だ…。

これは、夢…夢と認識できる。

周囲は、いつもの研究室で、他のアンドロイド創作研究員、『博士』と呼ばれる人たちのの成果が表示されている。

彼女と別れるまで見ていた画面のまま。

私を含めた4人の情報が表示されている。


話したこともない、ましてや顔も知らない人たち。

彼らは、何を思い研究しているのだろうか…私は、選ばれたから此処にいる。

それだけで、意味どころか理由はない。

『博士』に自由はなく。外界との接触を禁じられている。

もちろん親も例外ではなく、引き離されて生活することになる。

しかし、親と離れたことに対して、なんの感慨もない。

薄情なんだろうなと、自分では思っている。


『博士』という称号をもらった。

その時から、並んでいる研究員たちの名前は変わってはいない。

私が4人の中で1番の新人と言うことだ。

最年少だと言われているが、成績や業績で選ばれただけ。

きっと、他の研究員も同じだろう。もしかしたら、大切な家族や恋人がいた人もいたかもしれない。

それが、『博士』という称号をもらった瞬間には崩れ去る。貰うというのは適切ではない気がする。

受け取り拒否は、拒む事は、許されていないのだから…。

認定は、決定を意味している。覆ることはない。逃亡するか、死ぬしかない。

功績を残せば、歴史に名を残すことが出来るが死んでしまえば『脳』だけ生かされ続ける。

利口なのは、国からの依頼を淡々とこなすことだけに従事すればいい。

そうすれば、衣食住と高額な給金が約束されている。


ここでは小さい頃に頭脳レベルを計測され、それに見合った学校に通うことになる。

自分の頭脳レベルに興味はなかった。

ただ、知らないことを知ることが出来る楽しさから勉強は全く苦にならなかった。

その結果、常に勉学では主席だった。


運動はあまり得意ではなかった。

普通の子供だった。学校の後は友達と遊びに行き家に帰れば母の蔵書を読み耽る。

本も知識を与えてくれるものとして、とても好きだった。


我が家にも、生活支援型アンドロイドがいた。

しかし、母が料理が好きなため、もっぱら掃除をメインに働いてくれていた。

私が本を読んで眠ってしまったときは、アンドロイドが起こしに来てくれていた。

それでも、私が移動を拒むと抱き上げて部屋まで運んでもらったことがある。


父は、私の頭脳レベルを知ってから態度が変わった。

本当に激変した。かわいがってもらっていたと思う。

しかし頭脳レベルを知ってからは、私を見る目が変わり言葉を交わすことがなくなった。


母は、変わらなかった。

相変わらず、毎食の料理を異常なまでにこだわって作る人だった。


この生活が続くものだと思っていた。学校も順調に進級していた。

主席の座は変わらず維持していたが、運動も変わらず不得手なままだった。

学校が楽しみで、もっといろいろ知りたいと貪欲になっていた。知識を渇望していた。


学校も卒業間近になると、再度頭脳レベルの計測が実施された。

次は、どんな学校で何を学べるのか、とても楽しみにしていた。

しかし、進学ではなく就職となった。落胆した。


節目の度に、頭脳レベルを計測され個人にあった進学もしくは就職となる。

知っていたことだが、まさか自分が就職だとは思っていなかったので激しく落ち込んでいた。


この時に、就職したのが国の研究施設だった。


見たこともない世界に興奮した。

廃棄されたアンドロイドを解体し再利用可能な部分を探し再利用できる状態まで再生させるという研究員の助手だった。最初は、パートナーの仕事を見て覚えることから始まる。


破棄されたアンドロイドたち…一見きれいに見えても内部が壊れて修理できない状態の子もいれば、体の破損が原因の子もいた。一緒に暮らしていた家族は、どんな思いで破棄にしたのか考える。


そこで、何を血迷ったのか…やらかしてしまった。


「なんで?まだ、動けるよ?」


その場にあったデバイスと工具で、追加材料なしに治した。

そのアンドロイドは技師でも治すことが出来ないと判断され廃棄されたアンドロイドだった。

周りの大人たちの目が少し怖かったのを、覚えている。

嫉妬、羨望、驚愕…。


自分が何か悪いことをしたのかと怖くなった。

父と同じ目で、私を見ている大人たちが怖くなった。

自分はできることをしただけで、あんな視線を今後も向けられるのかと怖くなった。

今後、仕事中は余計なことはしないでおこうと思った矢先に、また治すことのできるアンドロイドが破棄されていた。技師は何をしているのかといら立ちを覚えた。

そして懲りずに治した。

戻る家庭があるのなら戻れたほうが、アンドロイドや家族のためになるだろうと思ってやっただけだった。治したアンドロイドは、異常がないか検査され問題がないと判断された結果、もとの家庭に戻ったと聞いた。


周りの大人たちの視線は、怖いままだった。

1人、2人、3人と…どんどん視線が増えていくような錯覚を覚えた。


「治せるんだから、治したほうがいいじゃん!!」


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