出会い
「すいませーん。」
からんからん、と内側についてた呼びベルが
店内に響く。
中は基本、木製で製作された建物のようだ。
とても落ち着いていて、外のパステル地獄とは
思えないくらいの居心地良さを感じる。
中は薄暗く、けれど明るすぎるくもないアダルト感を感じさせる。
(へぇ・・・中はしっかりしているんだな。)
杉田は思う。
すると
「いらっしゃませ。見つけていただき、ありがとうございます。お客様。」
と、若い女性の声が聞こえた。
杉田は、その声の主に目をやる。
肩まである、潤いのある髪。
パリッとスラっとした、体のラインが分かりやすい
おそらく20代後半であろう、バーテンダー姿の
女性が、カウンターへ立っていた。
「まあ、お客様!びしょ濡れではございませんか!
寒かったでしょう?今拭くもの、何かお持ちいたしますね。うわぁっ!」
ドンガラガッシャン!!っと物凄い音が店内に
響き渡る。どうやら転んだらしい。
「ちょ、ちょっと!大丈夫ですか!?マスターさん!」
杉田は慌てて駆け寄りカウンター外から
顔を覗かせる。
「いたた・・・すいませんお見苦しい所を・・・
まだヒールには慣れてなくて・・・。」
「は、はぁ・・・・。」
これが俺と、このへんてこりんなバーテンダーとの
初めての出会いだった。