授爵と婚約
二日連続投稿です
では、第三部『授爵と婚約』お楽しみください
現在、ゼウスティアは王城内にある応接室のソファーに座っている。
誰もいない部屋で一人、これから謁見するために待機しているのだ。
5歳の子供一人を、こんな部屋で待たせる意味が分からなかった。
今回の謁見の理由だが、魔物を100体ほどを倒して、王女殿下と公爵令嬢二人を助けたのは確かだ。
だが、騎士たちから事情は聴いているだろうし、今更何を話すことがあるのかゼウスティアには理解できなかった。
結論が出ない考えをしていると、扉がノックされ執事が入ってきた。
「ゼウスティア様、謁見の準備が整いましたのでご案内いたします」
「あ、あの・・・謁見の方法すら知らないのですが」
ゼウスティアは初めて王都に来た。
「確かに未成年の方が平民の方がが謁見するのは珍しいですからね。謁見の間に入られたらまっすぐと進み、絨毯の切れ目のところで片膝をついてください。そして、右手を胸に当てて頭をお下げください。あとは、その場で国王様が声をかけられると思いますので、そしたら頭を上げてください。それで大丈夫だと思われます」
「ありがとうございます」
丁寧に教えてくれた執事にゼウスティアは感謝する。
「それではご案内いたします」
「はいっ、よろしくお願いします」
王城の廊下を執事の後について歩く。
廊下には絵画や鎧、他にも美術品が数多く並べて置かれている。
どれも高級品で、この国が栄えていることが象徴されているかのようだ。
廊下を進み、大きな扉の前に立つように指示され扉が開くまで待った。
数分で扉が内側から開かれ、言われるがまま前に進む。左右には貴族と思われる人たちが一堂に並んでいる。
ゼウスティアは絨毯の切れ目まで進み、片膝をつき頭を下げる。
「面を上げよ」
正面から国王の声が掛かる。
先ほどの説明通りに顔を上げる。正面の玉座に国王が座り、周りには王妃とその子供たちが立っている。もちろん第二王女であるフェスティーヤも並んでいた。フェスティーヤはゼウスティアを見ながらニコニコとしている。
玉座に座っている国王は、金糸で彩られた立派な服を着て王冠をつけており、銀髪で、四十代に見えるが、鍛えているようで、しっかりとした体をし、顎鬚があり貫録を見せつけている。
横から、宰相と思われる人が一歩前に出てきた。
「この度、フェスティーヤ王女殿下並びに、ティファリーナ・フォン・ラース嬢、レイフィア・フォン・シスフォード嬢が、150体を超えるオークとウルフの群れに襲われた。しかも最上位種であるオークキングや上位種であるオークジェネラル、シルバーウルフリーダーを含む一団にだ」
そんな内容に謁見の間にいる貴族たちが一斉にざわめきだした。
「静まれ。そんな時に、そこにいるゼウスティアは自ら死地へ飛び込み、一人で最上位種及び上位種含め100体以上のオークとウルフを討伐したのだ。討伐後は負傷した騎士たちを回復魔法で癒し、亡き者となった誇り高き騎士たちも王都まで持ち帰ってきてくれた」
まだ幼い少年(←については先に聞かされていた)が一人で最上位種や上位種を含む100体以上の魔物を倒したと聞き、さらに並んでいる貴族たちが騒ぐ。
最上位種が率いる魔物の群れに立ち向かうには、相当な人数が必要だと理解しているからだ。
「そこで褒賞を与えることとなった。陛下、よろしくお願いいたします」
宰相が説明を終え一歩下がる。
国王が頷き、話し始めた。
「ゼウスティアよ、この度の活躍みごとであった。そなたがいなかったら、ここにいるフェスティーヤもティファリーナ嬢、レイフィア嬢も助かってなかっただろう。よって、ゼウスティアを伯爵とし、オルコットの姓を与える。また、八金貨二十枚と王都に屋敷を与える」
並んでる貴族たちがまた一斉に騒ぐ。
無理もない、貴族の新興党首という名は、そう簡単になれるものではない。新しく授爵され独立するためには、相応の努力と結果が必要となり、年に一人出ればいいほうである。
騒いでる貴族の中から、一人の貴族が、太った体をゆすりながら国王に歩み出る。
「お、お待ちください陛下。いくらなんでも5歳に授爵はあり得ません。まだこんな子供なんですよ」
反対意見が出てきた。
(正直、僕も反対だよ。いきなり授爵なんて・・・・・何も聞いてないし)
「だまれ。フラーク侯爵。ならお前は一人で死地に飛び込み最上位種と上位種を含む100体ものオークやウルフを殲滅できるのか?」
「うっ、そ、それは・・・だ・だからといって・・・」
それでも引かないフラーク侯爵に、次第に国王の機嫌が悪くなっていく。
「ゼウスティアは平民だったな。今の貴族の嫡男でもない。このような優秀な子が野に放たれてしまったらどうするのだ。この決定は変えん。フラーク、二度は言わん。下がれ!」
「わ、わかりました・・・・・」
国王にとがめられたフラーク侯爵は貴族が並んでる位置に、ゼウスティアを睨みながら下がっていく。
「ゼウスティアよ。受けてくれるな」
「(断れないふいんき作るのうまいな・・・国王陛下)あ、ありがたく・・・・・・お受けいたします」
「これにて謁見を終了とする」
宰相の言葉が終わると、国王が退出し、その後を追うように王族が退出していく。
「詳細は別室で説明する。案内するからそこで待っていてくれ」
宰相に告げられゼウスティアも退出していった。
メイドに案内された部屋は、先ほどは違いテーブルが中央にあり十人位が座れるほど椅子が並んでいた。
椅子に座り、メイドに出された紅茶を飲んでいると、扉が開き数人が入ってくる。
先頭で入ってきたのは、先ほど玉座にいた国王で、その後ろには王妃、宰相、フェスティーヤ、ティファリーナ、レイフィア、ティファリーナとレイフィアの父と思われる人がいた。
ゼウスティアは国王が入ってきたタイミングで、椅子を立っていた。
国王が一番先に一番奥の真ん中の椅子へと座った。
「皆、ここは謁見の場ではない。座ってくれ」
その言葉の後に、皆、座り始める。
ゼウスティアは国王の対面に座っていた。
「よし、揃ったな。ゼウスティアよ、まず、今回は本当にありがとう。フェスティーヤから話はすべて聞いた」
国王が頭を下げる。それにならって王妃も頭を下げた。
「ゼウスティア君、私からもお礼を言わせてくれ。ティファリーナの父のエリアス・フォン・ラース・マルタナだ。本当にありがとう。おかげでティファリーナが助かった」
「俺は、レイフィアの父親のレクス・フォン・シスフォード・アルカナだ。お陰でレイフィアが助かった。ありがとう」
公爵であるエリアスとレクスもゼウスティアに頭を下げる。
「陛下、王妃様、公爵閣下、頭を上げてください。僕は襲われていた人がいたので、助けに入っただけですから」
ゼウスティアの言葉に四人が頭を上げる。
「ありがとう。ただ、やはり王としてではなく、一人の親として礼を言わせてもらう。それでは今後の話をしようか」
国王の言葉に皆が頷く。
「それにしても、僕はまだ5歳ですよ。授爵して良かったのですか」
「いいのだ。フェスティーヤから話は聞いた。5歳にして、魔法も剣技も超一流、アイテムボックスまで持っている。5歳にしてその腕だ。神から加護を貰っているのであろう。そんな優秀な子を放置しておくほど、我が国はお人よしではないのでな」
ゼウスティアを見て国王がにやりと笑う。
それをみて、ゼウスティアは苦笑した。
「授爵、と言ってもまだ5歳だ。何をするわけでもないぞ。伯爵ともなれば街を収めるのが普通だが、まだ学園にも通っておらんしな。今回は特例として給金は規定通りに支給し、街を治めるのは初等部を卒業してからにする。屋敷の維持もあるからな」
この世界の勉強は一通りしたが、街の経営ともなればほんの知識を活かしたからと言ってうまくいくとは断言できない。免除されたことにゼウスティアは安心する。
「それよりもな、大事な話がある。ゼウスティアよ。良ければだが、うちのフェスティーヤと、エリアスのとこのティファリーナ嬢、エリアスのとこのレイフィア嬢を貰ってくれんかな?勿論正式な結婚は成人してからになるが、とりあえず今は婚約者としてだ」
「「「!!!!!!!」」」
ゼウスティアは愕然とした。
三人の方を見ると、顔が真っ赤になって下を向いている。
「それは一体・・・何故ですか」
「ゼウスティアよ。馬車の中や、宿のことなど」
なにがあったか頭の中で思い出していく。
馬車の中では、腕を組んで交代しながら両隣に座っていた。宿では、同じ部屋に泊まると頑なな態度をとったフェスティーナに根負けし、ベッドを分けて同じ部屋で一緒に寝た。同じベッドではないので問題ないとゼウスティアは思っていた。
「王族や、公爵家の未婚の女性が、未婚男性と同じ部屋で寝て、馬車の中では手を組んでたとあっては、他の家に嫁に出すわけにはいかまい?」
「それを言わなければ問題ないのでは」
「三人が他の人とゼウスティアを比べてしまい、ばれてしまったら問題となる。それとも、我たちの娘達では不満か?」
「・・・いえ、受け賜わりました。ただ、二つほど確認してもよろしいですか?」
「うむ。なんだ?」
「一つ目です。僕は人族ではありません。そして、寿命もありません。まぁ、今の年は見た目通り5歳ですし、どうとでもできますから問題ないのですが」
「そうか。人族の姿をしておるし、寿命が無いというのはどういうことだ?」
「姿に関しては人化をしているので。今ときますね」
ゼウスティアは人化を解いた。
するとそこには。銀色の狐の尻尾9本に金色の尻尾が1本、天翼人と精霊の翼を一対ずつ持ち、とがった耳にとがった角を持ったゼウスティアがそこにはいた。
「この姿が僕の本当の姿です。姿でわかる種族に加え、ドワーフと人魚もありますよ。全て古代種です。人族の血は混じっていないですよ。寿命に関しては、一応神なので寿命はないということですね」
「・・・神、だったのですか」
「あぁ、別に、普通に接してくれて結構です」
「あ、あぁ。では、もう一つの質問というのはなんだ?」
「フェスティーヤ王女殿下とティファリーナ嬢、レイフィア嬢がいいのか。です」
「この話は、三人から相談された話だったのでそれについては大丈夫だ。言質はとったぞ。これでいいか?三人とも」
三人は顔を真っ赤にして、口を抑え、涙目になりながら頷いている。
こうしてゼウスティアは、5歳にして三人の婚約者を持つことになった。
ここまでお読みいただき有難うございました
楽しんでもらえたでしょうか?
次の話の投稿は何時か決まっておりませんが、早ければ同時更新、遅ければ明日に投稿とします
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