ハロウィン記念
移動を忘れていました
本当に申し訳ありませんでした
※ネタバレを含みます
以前の投稿を見ていない方は、学園内トーナメントが終わってからの閲覧をお勧めします
「トリック・オア・トリートですよ。お兄様」
可愛らしくそう言ったのは、ゼウスティアの妹であるセシリアだ。
その右腕には可愛らしくフリルのついた籠をかけており、左手には魔法を構えている。
この世界でのハロウィンは、地球という惑星のある異世界ものとは一味違う。
『トリック・オア・トリート』だ。
いかに物騒かが分かるだろう。
まあ、魔法と言っても水をかける程度や、酷くても家中が一日ほど真っ暗になる程度だ。
その筈・・・・なのだが・・・・・なぜ、セシリアは笑顔で『爆炎の刃』を構えているのだろうか?
「なあ、セシリア。その物騒なものは何だ?」
「あら、お兄様でも分からない魔法があるのですか?『爆炎の刃』ですよ」
「何で、そんな物騒のものを構えているのか聞いてもいいかな」
「トリック・オア・トリートですよ。お兄様」
なぜ構えているのかを聞くと、最初の言葉がそのまま返ってきた。
「お菓子を渡せばいいのか?」
「はい!」
「ちょっと待ってろ・・・ほら」
ゼウスティアは『アイテムボックス』の中から、魔道具『クッキー袋』を取り出しセシリアに渡した。
「これでいいか?」
「はい!ありがとうございます!では、私は出かけてきますね」
「よそ様には迷惑をかけないようにな」
「分かりました。では、行ってまいります」
「行ってらっしゃい」
ゼウスティアのお見送りの言葉を聞き終えると、セシリアは足早に家の外へと飛び出していった。
それから数十分が過ぎた。
ゼウスティアは朝食を終え、自分の部屋へと戻っていった。
「ゼス君。トリック・オア・トリート?ですよ」
ゼウスティアが自身の部屋へと入ると、少々迷いながらそう告げ、出迎えたのはこの国の王女であり、ゼウスティアの婚約者でもある『フェスティーヤ』だ。
ティーヤはこのようなイベントに参加したことは、今まで一度もなかったのだろう。
それが、ゼウスティアに魔法を習ったことで、転移魔法を使えるようになり、王城を抜け出してゼウスティアの家・・・部屋へともぐりこんだのだろう。
「はいはい。で、どうやって此処に来たのかな?」
「はい。魔法を使ってきました!魔法とはここまで便利なものだったのですね」
満面の笑みを浮かべ、即座にそう返してきた。
「王城の誰かに連絡は?」
「していませんよ。誰にも言わずに来ました」
「じゃあ、さっさと戻った方が良いよ」
「どうして、そんなつれないことを・・・」
「もう、すぐそこまで、王城の近衛兵が向かってきてるからね」
「本当ですか?」
「うん」
「では、ゼス君。改めて、トリック・オア・トリートですよ」
ゼウスティアは、またかとは思いながらも、顔には出さず『アイテムボックス』を開いた。
「はい。これをどうぞ」
ティーヤに渡したのは、魔道具『キャンディー・ボックス』。
「ありがとうございます!」
ティーヤは満面の笑みを浮かべたまま、転移魔法を使って王城へと戻っていった。
「ゼウスティア様!フェスティーヤ様はおられませぬか!」
「たった今、王城へと戻りましたよ!」
「ありがとうございます!では、私たちはこれで失礼します!お騒がせしました」
ティーヤを迎えに来た近衛兵たちは、ティーヤが帰った事を訊くと、王城へといそいそと戻っていった。
それから数時間が経ち、昼食を作るためにキッチンへと向かっている途中のことだった。
「「ゼス様!トリック!オア・トリート!」」
元気にゼウスティアにお菓子を要求してきたのは、ゼウスティアが買い取り奴隷から解放した、金孤の姉妹である転生者のルーラと、将来勇者になる素質を持つメリナだ。
「二人とも今日も元気だね」
「はい!これも全て、ゼス様のおかげです」
「これからも誠心誠意、お使いしていきます!」
「お菓子だったよね?え~っと・・・・はい。二人とも、これをどうぞ」
二人に渡したのは『ラムネ』だ。飲む方ではなくタブレットの方である。
「これな~に?」
「これは・・・ラムネですか?」
「うん。知識だけはあったから、再現してみたんだけど・・・どうかな?」
「食べてみてもよろしいでしょうか?」
「もちろん」
「では・・・・ん!」
「何かおかしかったかな?」
「いえ!このラムネとてもおいしいです!一粒一粒味も違くて、とても面白いと思います!」
「なら良かったよ」
「私も食べる!」
メリナも口へラムネを入れると、美味しそうに食べ始めた。
「成功だったみたいだね。また、新しいものが出来たら、味見を頼んでもいいかな?」
「はい。ダイエット中でなければ、いつでも大歓迎です!」
「じゃあ、その時はまたお願いするよ。お仕事頑張ってね」
「「はい!ありがとうございました!」」
ゼウスティアはそのままキッチンの方へと向かった。
昼食を作り終えたゼウスティアは、日当たりのいいベランダへと出ると読書を始めた。
普段から下界の事情を見ていたゼウスティアにとって、自分の知らない下界の物語を見ることはゼウスティアにとっても目新しいものだった。
しばらく読書を続け、2刻ほどが過ぎた。
ゼウスティアも(精神的に)目が疲れてきたので、読書を終え部屋へと戻ろうとした。
「お?ゼスくーん!」
「ん?ああ、フィアか」
「トリック・オア・トリート!お菓子をくれないと、お家壊しちゃうよ?」
「ふざけるのはやめてもらえると助かるかな?それはそうとして・・・・はいどうぞ」
ゼウスティアは二階から飛び降りると、フィアに『饅頭』を渡した。
「これ何?」
「饅頭っていう、異世界のお菓子だよ」
「んー?おいしそうだしいいや。ありがとね!バイバイ!」
フィアはお菓子を貰うと、満面の笑みで馬車へと戻っていった。
フィアを見送ってすぐにリーナはやってきた。
「丁度良いタイミングだったようですね。トリック・オア・トリートですよ。ゼス君」
「リーナも来たのか」
「む!失礼ですね。私が来るのは嫌でしたか?」
「いや。そういう訳では無かったんだ。不愉快にさせたらごめんね」
「大丈夫だよ!」
「良かった~。リーナに嫌われたらどうしようかと思ったよ」
「私がゼス君のことを嫌う訳がないでしょ!」
「それもそうだね。じゃあ、はいどうぞ」
「わぁ!ありがとう、ゼス君!」
「喜んでもらえて良かったよ」
リーナに渡したのはチョコレートだ。
普通のものでは無くて、イチゴやバナナにチョコをかけた物だけどな。
「では、私はこれで帰らせてもらいます!さようなら」
「ああ、またね」
リーナも馬車で来ていたようで、近くの空き地に止めた馬車に乗り込んでした。
それから数刻が経ち・・・・
「先輩、何をしておられるので?」
床に就き、眠りについたゼウスティアが気配を感じ目を開けると、リーズがゼウスティアの腹部の辺りに跨っていた。
「うーん・・・まあ、いいや!トリック・オア・トリートだよ。ゼス君!」
「何でこんな夜遅くに、人の家に忍び込んでいるんですか?殺人未遂兼不法侵入の現行犯であなたを通報しますよ」
「なんで!?後輩君は私にだけ辛辣過ぎない!?」
「まあ、それは冗談として。すいませんが、もうお菓子はありませんよ」
「え・・・・じゃあ【完全破壊術式・オールデリート改】」
「やめてくださいよ!【術式破壊】」
「ちっちっち!甘いよ!【術式強化】」
「そんなもので!【術式封印】」
術式がでかすぎるので、全てを一度に封じることは出来ないが、この手の術式魔法は一部を止めてしまえば・・・
「まだまだ!【魔術強化】術式展開【轟・雷雲】」
「まだです!人化解除!天界型術式【破雷】!」
そんなこんなで、夜は更けていくのであった・・・
ここまでお読みいただき有難うございました
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