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今もあなたの世界を探している。  作者: ほたるwork
第一章
2/16

ー01 屋上での出会い






オレは"いじめ"というモノに縁があるのだろうか。







目の前で女子生徒三人に身体を押さえつけられている少女。

女の子から苦しそうな、水を含んだ息づかいが聞こえる。





ーーーーーーーー




縁があると言ってもオレがいじめられる側ではない。もちろん、いじめる側でもない。

それがあると...身近で起こっていると分かっているが、自分が巻き込まれないよう距離を置き、傍観する側の人間だ。

わざわざ赤の他人同士のイザコザに首を突っ込んでも自分が傷付くだけでロクな事にならない。そんな誰もが考える理由で関わろうともしない。


しかし、その悪意を受けているのが

"自分の身内"なら..."自分が守ってあげなければならない存在"なら...そうはいかない。


 



妹がいじめの対象にされていた。今でこそ無くなりはしたが解決までは長かったように思う。


妹がいじめられていると知ったのは中学1年の頃だ。一つ下の妹は学校から帰ってきたら目の下を腫らしている事が多かった。

ある日は服に泥がついている。

またある日はカバンを無くしてしまった。

中学へ上がった頃のオレはそんな妹の変化に気付いてはいたものの、友達と喧嘩したんだろう。いつもみたいにドジ踏んでコケでもしたんだろう。と特に不思議に思う事は無かった。



だがある日、妹と宿題をしている時、目にしてしまう。

たまたま妹のノートの前のページが視界に入ってしまった。



ーー死ねーー



1ページだけではなく他のページにも似たような誹謗中傷する文字があった。

その文字を見た時分かってしまう。本人の字ではない。

今まで何度も目を腫らして帰ってきた妹。

考える間もなく繋がってしまう。理解してしまう。





ーーあぁ...いじめられてるんだーー


 




ーーーーーーーー





妹の件があったからといっても、オレはわざわざ面倒事に首を突っ込む人間じゃない。


でも...無視なんて出来なかった。

その子の姿が妹と重なったのが、話しかけるきっかけだった。

まともに顔を合わせたのは昨日だが既に言葉を交わしている。




そして赤の他人とは思えないくらい、彼女に何かを感じていたんだと思う。






ーーーーーーーー





違和感を感じる日々。


何をしても満たされない自分に嫌気が差していた。


生きる理由を探して、生きる意味を探していた。



ーーーそして、彼女と出会ってーーー


ーーー自分の中の何かが動き始めるのを感じたんだ。ーーー




ーーーーーーーー






『あ...!ありが...とう...ございましゅっ...。』






昼休み。

いつもの様に屋上に来てみると、彼女は何をすることもなく、フェンス沿いに腰掛けて蹲っていた。

最初は特に関わろうという気は無かったんだが、雰囲気が昔の妹に似ていたからか、話しかけてみると昼飯を忘れたって言うから、おにぎりを提供した。


恥ずかしそう... ... そして警戒心が強そうだというのが第一印象だ。

しかし頑張って言葉を紡いだのだろう。最後噛んだのが妙におかしくて... ...何でだろうな... もっと、話してみたいと思った。



『アンタ...話したことないよな?何組だよ?』


『ふわっ!?......あ...う...。』


慌てている様で、中々話そうとしない。

...とりあえず自分の事から話してみるか...。



『.....神奈(かんな)。2組の神奈っていう。』


『かんな...くん...。』


『そう。...で、アンタは?』


『え...と...その...』


ギュっと目を瞑り、口をパクパクさせながら、少しの間を置いて耳にギリギリ届くような微かな声で少女は、自分の名前を伝えてくれる。




『私...の、な...名前...』







それが雪峰(ゆきみね)との出会いだった。







ーーーーーーーー






雪峰は1年の中でも、かなり小柄だ。人形のような、と見た瞬間感じてしまう程整った顔をしている。

肩の下まである銀色の髪はフワフワしていて、前髪が長く見えづらいが、そこから覗く青い瞳は何というか、引き込まれる様な美しさを持っている。


でも、なんでだろうな...ここまで印象に残りやすそうな見た目なのに、今まで彼女を見た記憶が無いんだよなぁ。


寒がりなのか、おしゃれなのか、制服の上からピンク色のケープを着用している。



今年に入りもう1ヶ月が経とうとしている。冬の寒さは未だに衰える事なく、気温は日々下がり続けている。

そんな時期に屋上で昼休みを過ごそうとする物好きがいるとは思わなかった。


......。


...まぁオレも物好きか...。





簡単な自己紹介。そしてお互いの話を少ししただけで昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る。

思わずため息を吐き、重たい腰を上げる。


『自由な時間って、経つの早いよなぁ。

 とりあえず...戻るかぁ。』


サボりたい。でもバレたら妹に怒られちまうし真面目に出なければ...。

妹はオレの学校での行動を知っている時がある。誰と情報共有しているのかは何となく分かるが、あまり不真面目な事してると、アイツを悲しませる事にしかならない。


『サボりたいなら、私と一緒にサボろー!私が入学するまでは真面目に授業に出るんだよー♪』


と、以前授業が面倒くさくなりサボった時、妹に釘を刺されている。どこからツッコメば良いか分からない釘の刺し方だな...。


そんな事を考えていると雪峰から袖を引かれる。


『ん?』


『...あっ...あのっ!か...神奈君!

 今日は!...あ...ありがと...う...ございました!』


少し頬を赤らめ、上目遣いで言われ少し固まってしまう。

自分の変化に驚いていた。


(何だ?これ...。)


心臓の鼓動が急に早くなり、息を吸ったものの、吐き出すのを忘れてしまう。

こんな感覚は初めてだった。

今まで女性と付き合った事は無い。関わろうとも思わなかった。

それは好きという感情を持った事が無い、というより相手を好きになる事、そのものがよくわからないからだ。

2、3回告白された事はあるが、赤の他人と時間を共有できる程の余裕が当時のオレにはなかった。なにより惹かれる事がなかったのだ。


『... ... ... 。』


『?か...神奈君?

ふわっ!?... ...あ...ぅ... 。』


なぜだろう。オレは気がついたら雪峰の髪を撫でていた。無意識、反射的に。

妹と接する時にする様な事をしてしまう。


『あ...悪い... 。』


謝りはするが撫でる事は止めない。

...流石に怒られるのでは?と内心思いつつも撫でてしまう。


『ん...えと...ビックリしました...けどイヤじゃ...ないです...。』


『あ、あぁ...。えーと...そうだな...。

 またタイミング合ったら一緒にメシ、食うか?』


『え?』


照れた顔に驚いた表情が加わり、こちらを見つめてくる。


『えと...神奈君が...嫌じゃ...なければ...お願いします...。』


『はは...嫌じゃないよ。オレよくココでメシ食ってるから、来たい時に来れば良いさ。』


『... ... 。』


特に返事がないまま、雪峰は下を向いて立ち上がる。

何か考えている様だが、表情が見えないからよく分からない。


すると雪峰はオレの目を少し潤んだ瞳で見つめてくる。


ふと、雪峰が纏う雰囲気が変わったように感じた。



『えーと...どうした?』


『神奈君の... ... ...いに...。』


『... ... え?』








ーーー私はーーー神奈君の世界に...いても良いのですか?ーーー







『オレの世界?...どういう...。』



空気を読まないチャイムに言葉を止められる。



『え...と!また...です!神奈...君!』


慌てた様に俺から離れ、そのまま雪峰は頭を下げ、屋上から出て行った。



オレの世界...?どういう事だ?



『っ!...う...ぐ。』


心臓の音が早くなり、右目に痛みが走る。

何かが、自分の中に入り込む感覚。

何かは分からないが雪峰の言葉を思い出すと、また痛みが強くなる。まるで火で炙られるような痛みが右目から広がっていく。


『世界...

... ...よくわかんねー...。』


最後に聞いた雪峰の言葉を考えていると、ある事に気付く。





『今のチャイム...授業始まってんじゃん...。』




仕事が忙しい...。でも負けないぞ。

投稿頑張ります。

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