ー00 存在が欠けた世界
夢を見る。
良い夢じゃないのは間違いない。
オレの目の前に人がいる。正確には人らしきモノ。
誰かはわからない。なぜならソレは、全身に黒いノイズの様なモノを纏っているからだ。
男か女かも判別がつかない。
ただオレのいる場所はわかる。ここは学校の屋上だ。よくここで時間を潰しているから見慣れている。
オレは床に跪く形でいる。動けず、体の自由が効かない。
屋上は安全の為フェンスで囲まれているが、目の前のソレはその囲まれているモノの向こう側にいる。
口が動いているのはわかる。オレの方を見て何か伝えようとしているのだろうか。
風の音やフェンスの軋む音はクリアに聞こえる。
だが、ソレの声は全くというほど聞こえない。
最後にオレを見て...笑ったのだろうか?はっきりはしないが何となく、そう思った。
そしてソレは空を見上げると、フェンスの向こうへ消えた。
身を投げたのだろう。だがソレを見てもオレは何も感じない。『あぁ、自殺したんだな。』という感想だけを一言思い浮かべるだけだ。
嬉しくもなければ、怖いという感情すら湧かない。
でも、理解できる。きっとこれは"良くはない夢"なんだと思う。
追い込まれて、逃げ道と居場所をなくしたモノが選択できる最後の抜け道。
この世界からの出口。
オレは動けない。周りにはソレ以外に誰もいない。
きっと誰もソレが身を投げるのを止める事はできないのだろう。
夢を見る。
記憶が薄れてきた頃に、ソレを見る。
オレはいつも無関心にソレを見る。
夢から醒めれば急激に恐怖が奥深くから登ってくる。身体中から汗が噴き出し、意識が朦朧としてきて、気がつけば泣いている。
何に恐怖したのか。
落ちたソレか、
何もできなかった自分か、
でも、願わくばソレが
オレの大事な人ではないようにと、祈る。
小説投稿は初なので頑張りたいと思います!