オレの生き様はこうだ!~攻撃魔石生成~【1】
満たされない。
何をしても、何を奪っても。
理由は分かっている。
あの時、オレが無力だったから。あの出来事がオレの心をずっと縛っていたから。
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「ここは……」
目を覚ますと、見た事のない洒落た天井が視界に入った。
「ああ、エリオット様!良かった!」
「目を覚まされたぞ!国王をお呼びしろ!」
……うるせえな。
辺りを見回すと、オレは無駄に豪華なベッドで横になっており、見知らぬ人達がオレを取り囲んでいた。
いや、どこだよココ。つか、誰だお前ら。
体を起こし、周囲の人達をまじまじと見た。
メイドっぽい服を着ている奴もいれば、執事っぽい服を着ている奴もいる。え、何、そういう店?オレってば気絶させられてヤバい店に放り込まれた?
ふと、窓の外に目をやると、見た事もない庭園が広がっている。
……マジでどこだよココ。日本か?
「エリオット様」
執事の一人がオレに向けて声をかけた。
「……エリオットだあ?誰だよソイツ」
「何を仰いますか。貴方はエリオット様でしょう。意識を失くして倒れていたところを私が見つけ、ここまでお運びしたのです。ご気分はいかがですか?」
オレはまだ夢を見ているのか?
こういう時は、頬をつねったりして『夢じゃない』って確認するのがベタだよな。
つねるのは地味だな。モヤモヤした感じを晴らす意味合いでも、ここはグーで殴った方が良い。
「せーの!」
ドゴォ!
オレは執事の顔に右ストレートを決めた。
執事は勢いよく床に倒れ、鼻から血を流し、「ドウシテ……?ドウシテ……?」と言いながら、うずくまるように痛がっている。
「うん。これはマジなリアクションだ。どうやら夢じゃないらしいな」
他の執事やメイド達がざわつき始める。
「エ、エリオット様!何をしているのですか!」
「夢じゃねえか確認しただけだろ。自分の顔殴ると思ったら大間違いだ。何でオレが痛い目に合わないとならねえんだよ」
「暴君!暴君になるぞこれは!」
「きっと悪魔に取り憑かれたのよ!誰か!誰か聖魔導士を!国王にも報告して!」
メイド達がワーワーと騒ぎ出し、その場が一層うるさくなった。
聖魔法を操る魔導士の若い女が呼び出され、オレは魔法をかけられた。
すっごく体が回復した。
さらに、すっごくお肌がモチモチになった。何故だ。
「ちょっと!エリオット様が未だに悪人面で口が悪いままなんだけど。悪魔祓いが出来てないんじゃない?」
「いや、悪魔は憑いておりませんわ。そもそも悪魔など迷信ですし……。何故このような性格になってしまわれたのか」
「我々を癒して下さる、あの素敵な微笑み!我々を心から労って下さる、あの優しい言葉!何故だ!!いたずらに消し去るなァァ!」
「あー!!うるせえ!!」
いい加減、頭に来たオレは大声を上げた。
「さっきから訳分かんねえ事ばかり言ってんなよ。オレにも分かるように話せ。だいたいオレはエリオットって奴じゃねえし。ここもどこだか分からねえし。とりあえず気分悪いから顔洗いに行きたいんだけど。誰か案内しろ」
辺りが静かになったが、ふと我に返ったメイドが洗面所までオレを案内した。
マジか。
これがオレか?
洗面所の鏡に映る自分の顔を見て、ようやくオレは状況を理解した。
明らかに自分の顔ではなく、日本人の顔でもない。
金髪サラサラヘアーに、サファイアのような青い瞳、端正な顔立ち。
男のオレでも思う。コイツはイケメンだ。
服装もよく見てみれば見慣れないものだ。何故か宮廷服を身に纏っている。
洗面所も、あり得ないくらい広く、見た事もない装飾がされており、現代のものではないと分かる造りだった。
これはアレだ、異世界に来ちゃったってヤツだ。
オレは異世界モノの漫画とか読んだ事ないけど、ネットでよく広告とかで流れているから、そんなジャンルがある事くらいは知っている。
でもこの体は誰だ?オレが体ごと、この世界に来ちゃったってんなら、わざわざ姿まで変わるか?
いや、さっきの執事達は、オレの事をエリオットって呼んでいた。つまり、この体は元から存在していた訳だ。
てことは、心が入れ替わったって事か?
うわー。ないわー。オレの体に知らない奴の心が入っているってキモいわー。
でも、この体の主がイケメンで良かった。それだけはマジで良かった。イケメンから見た世界ってこんな感じに映るのか。いや、それは特にイケメンでなくても変わらないか。