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ご出身はどちらですか?【3】

「そして、フィル王国はサース王国と親交を深めるために政略結婚を取り付け、王子であるワタシはグレイス王女と婚約する事になったのです。数か月前に婚約の挨拶と、それを祝しての会食が行われ、その際に初めてグレイス王女とお会いしたのです」

すげえ……。そこそこ異世界設定している……。妄想が捗るわ。

「ちょっと思ったんだけどさ、その結婚ってどちらかというとサース王国に乗っ取られる感じにならない?国の規模も違うし、サファイア家の能力を確保したがっているような気もする」

「ええ、仰る通りです。サース王国がフィル王国含め、他国を取り込んで帝国を築き上げるのは時間の問題でした。正直、あのサース王国に太刀打ち出来る国家は皆無に等しいでしょう。それならば後ろ盾として利用すれば良い。結果的に属国となってしまうかもしれませんが、フィル王国としては存続し続ける。何としてもそれを成し遂げる覚悟でした」

「いろいろ事情があるのね……。政略結婚で好きでもない相手と一緒になるって嫌よね。それでグレイス王女は素敵な人だったの?」

「あちらはワタシの事を気に入ってくださいましたよ。ワタシというより、サファイアを気に入ってくれたと言った方が正確ですか。しかしほとんどそれを思わせない態度で、所作もとても美しく、妃として迎えても申し分ないですね」

そういうエリオットの表情は、どこか複雑だ。



「婚約が決まっている以上、一刻も早く元の世界に戻らなければなりませんが、ワタシは日本というイセカイに来た事に意味があるのではないかと思うのです。これから国家が変革する時期、エリオットとして元の世界にいるであろう燕太様、そして燕太様として日本で生活していくワタシ。今こうしている時間も向こうの世界がどういう状況になっているのか想像もつきませんが、ワタシは日本で何かを成し遂げて、それで得たものを持ち帰らないといけない気がする。たとえ元の世界に戻る術が分かったとしても、それからでないと戻れない。元の世界には父である国王もおられるし、たとえ属国となってしまったとしても、今のワタシではどちらにせよ太刀打ち出来ない可能性もある。もしかしたら燕太様がうまく対応してくれるやもしれませんが、ワタシが日本で十分に経験を得てからでも遅くはないでしょう」

エリオットは両手で持っていた緑茶のペットボトルを握りしめた。

「これはきっと試練なんです。王子という身分がない世界、魔法が使えない世界、誰も異世界から来たという事を理解してくれない世界。それを乗り越えて、日本で偉業を成し遂げてこそ、ワタシは将来、真の国王になれると思うのです」







緑茶を飲み干し、ごちそうさまでした、とエリオットは満足そうに言った。

「さて、そうと決まれば、まず手始めに日本を統治しなければ……」

「やめろ、いきなりそういう思想を持つな。それにそう簡単に統治出来るようなもんじゃないでしょ。ひとまずは燕太くんとして高校生活を送っていったら?燕太くんの家庭についてはよく分からないけど、今のキミは高校生だから、勉強第一に考えてさ」

「それもそうですね。今のワタシには日本における知識が乏しい。学問を十分に学べる場として学校に通えるなんて願ってもなかった事です。さすが、ワタシが結婚を申し込んだ程のお方だ」

「え、それまだ言ってんの?私に会うための口実みたいなものと思ってたんだけど」

「まさか。ワタシは本気ですよ。ワタシにとっての全ての始まりは玲奈様、貴女だ」

正気か?と言いたくなるくらい、エリオットは真剣な表情をしている。

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