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オレの生き様はこうだ!~サイラー王子、チャラいぜ~【6】

しかし何も起こらなかった。

まあ、そうだよな。ハハハ。

で、結局どうするか。

そろそろ剣を受け続けるのは限界だ。



ん?

何か視界に入ると思い、その物体に目をやると、サイラーの隣に小さい女の子がいた。

その子はしゃがんで、サイラー王子の足首辺りを石で殴っている。

ちょ、ちょっとツッコミ追っつかねえよ。

「お、おい、そこで何してんだ」

「んー?ケンを折ってるの。ケンってここの事でしょ?」

もしかしてアキレス腱の事言ってんのか?何だこの鬼畜な幼女は。

「ていうか、お前何なんだよ。どこから現れた?それにそこに居たら危ないぞ」

顔を上げた幼女を見て、オレは動揺した。

その姿は、オレの実の妹の幼少期と同じだった。

幼女の髪は長く、目と髪の色が澄んだ青色で、服装も青を基調としたワンピースとなっており、妹と似ているのは顔と声だけだったが、それでも間違いなく幼少期の妹と同じだった。

「エリオット……よそ見してボソボソと独り言とは余裕だなー」

サイラーがより力を入れて剣を押してくる。

「お前、この子どもが見えてねえのか?」

「子ども?何言ってんだよ。どこにも居ねえよ。そうやって注意を逸らす気だな?」

「いや、さっきからお前のアキレス腱を石で殴ってんだけど」

「ただの石じゃないよ。サファイアだよ。とっても硬いの」

真顔で手に持っているサファイアをオレに見せてくる幼女。無邪気とは怖いぜ。

しかしサイラーにはその姿が見えておらず、これだけサファイアで殴られても痛みを感じていない。

やはりオレにしか見えないのか。いや、オレが幻覚を見ているのか。

その割にはしっかりと見えているし、そもそもこのタイミングで幼女が見えるようになるって幻覚は異常だろ。

これはオレにしか見えていないものだ。

幼女はサファイアを持っているって事は、サファイアに縁のある存在に違いない。

「なあ、お前はサファイアで何が出来る?」

声を潜めてオレは話しかけた。

「サファイアで?」

オレを見つめた幼女はニッコリと笑った。

「なんだって出来るよ」

「じゃあ、剣を……」

いや待て。冷静に考えれば、サファイアを使ってサイラー王子の剣を折れば、何かそれは不正になりそうな気がする。魔法使って卑怯だとか言われそうだな。

せめてオレでも対処出来るほどの隙を作れれば、コイツの剣を叩き落とせるかもしれない。

サファイアで何でも出来るなら、過去にウォマク国に贈与したサファイアを使ってひと騒動起こせば、サイラーの気も逸れるだろう。

「……じゃあ、この城の中にあるサファイアを使って皆の気を引いてくれ」

「いいよ!」

「よし。上手くいったら後でいっぱいおんぶしてやるからな」

しまった。つい昔の癖で妹に話しかける感じでやってしまった。クソ恥ずかしい。

幼女は目を輝かせてスキップしながら城内に向かった。



さて、どういう事になるか分からないが、ここからまたしばらくはサイラーの攻撃を耐えなければならない。

もう限界突破レベルだが、ここを耐えれば上手くいくはずだ。

そう思ったのも束の間、城内からざわざわと人の声が聞こえてきた。

サイラーが一瞬、目をそちらに逸らし、力が弱まったところでオレは剣を跳ね返し、サイラーの手首に柄頭を思いっきり振り下ろした。

「いってえ!」

サイラーは剣を落とした。

「気を逸らす方が悪いんだぜ。オレの勝ちだ」

「うわー……相変わらずセコい……」

呆れて思わず声を漏らしたファイローネを一瞥し、オレは剣をしまった。

「ひとまず1勝1敗って事で」

サイラーは気にくわない顔をしている。

「オレはお前と喧嘩したい訳じゃない。今日だって条約更新で来たんだ。ウォマク国とは長い付き合いで、過去には助けてもらった恩もある。これからも良好な関係を続けたい思いはオレもお前も相違ないだろ?」

オレは手を差し出し、握手を求めた。

「さっきは言い過ぎた。お前もオレに言いたい事があれば、これからもはっきり言ってこい。オレはもう逃げねえし、オレとお前はそういう仲なんだろ」

ふてくされた顔で、サイラーは手を握り返した。




城内の様子を確認するためにオレたちが戻ると、ウォマク国王が騒ぎ立てていた。

「エ、エリオット。教えてくれ。何故か突然アーロン国王に貰ったサファイアが光り出したんだ」

「そりゃ魔石なら光る事もあるだろ」

「いや、おかしいよ。魔法が発動しかけている」

ファイローネが不思議そうにサファイアを見つめている。

「これはアーロン国王の防御魔法が込められたものだろ?つまりウォマク国王を守るために発動させようと光り出した事になる。でも今の状況からして外部から何も攻撃は受けていない。発動する理由がないんだ」

「強いて言えば、俺がキレてエリオットがやりあってた事くらい?」

「きっとそうだ!アーロン国王はお前たちの仲違いを止めさせようとしたんだ。だからサファイアを通してお前たちの仲を守ろうとしたんだ」

何かメッチャ美化するじゃん、この国王。

「もう喧嘩はしないようにな。もうお互い成人なんだから、振る舞いには気をつけなさい。手合わせも健全に」

はいはいはーい、とサイラーは相変わらず生返事をしている。

とりあえず助かった。これで当面コイツと手合わせする事もないだろう。


くい、くい。

オレの服が引っ張られる感覚があり、目線を落とすと先程の幼女が立っていた。

「ちゃんと出来たよ!」

「あれ、本当にお前がやったのか?」

「やったよ!みんな集まって大騒ぎだったもん。嘘ついてないもん」

幼女は頬を膨らませている。

「あ、いや、そういう意味じゃないんだ。泣くな。お前のおかげでオレはすっごく助かったんだぞ。ありがとな」

そう言って幼女の頭を撫でた。

何だか不思議な感覚だった。

そこに存在していて触れられているのに、どこか実体のないような、いまいち触れている感覚がないような。

幼女自身は、オレに撫でられてニコニコとしている。

本当に小さい頃の妹みたいだ。

「じゃあ約束通り、いっぱいおんぶしてやるよ」

しゃがんだオレの背中に幼女は勢いよく飛びつき、ころころ笑って喜んでいた。

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