お友達は出来ましたか?【2】
燕太は思考を巡らせていた。
友とは何か。
隣国の王子の事を、何故、自分は友と呼んだのか。
昔からの同盟国であったので、彼とは幼い頃から交流があった。
同盟国同士の会食などに連れられる事が多く、その度に彼と顔を合わせていた。
明朗活発でよく笑う、太陽のような少年だった。
彼は頻繁に、国王や警備兵の目を盗んでエリオットを連れ出し、城下町へ遊びに出かけていたが、すぐに気付かれて保護される事を繰り返していた。
隣国の国王は毎度毎度、そんな彼をこっぴどく叱りつけていたが、彼は懲りていない様子だった。エリオットも父に叱られたが、「連れ出したのは俺だ」と彼はいつもエリオットを庇っていた。
エリオットは彼の言うままに行動を共にしていたが、城下町に一緒に遊びに行ったり、何でもない会話をしたりするのは楽しかった。
エリオットは、彼の事を友と思っていた。
いつからだろう、彼と城下町へ遊びに行かなくなったのは。
会う度に、交易の話をするようになったのは。
他愛のない話すら、しなくなったのは。
それでも、彼のエリオットに対する態度は変わらなかった。
だから、エリオットは今の彼でも、友であり続けているのだと思っていた。
友とは、そういうものではないのか?
楽しい時間を共有したり、取り留めのない会話をしたり……。
たとえ会話が少なくなったとしても、友であるに違いない。
ひとまず、学校で自分が恐れられる存在でない事を証明しなければ。
「おはよう!」
翌日、教室のドアを開けたと同時に、燕太はクラスの生徒に向かって挨拶した。
もちろん、生徒たちは凍り付いている。
「今日は天気がいいな」
そう言って席につき、燕太は周囲の様子を見た。
あからさまに、周囲は自分の事を見ている。
しかし、誰とも目が合わない。
みんな、忌まわしい存在がいるという事しか見ていない。
これでは、らちがあかない。
ひとまず、自分は穏やかであることを示さなければ。
燕太は、普段からニコニコとして過ごしたり、所作も丁寧にしたりして、周囲にアピールした。
クラス内の雰囲気は、一言でいうと困惑だ。
「何か機嫌いいみたいだね。つっかかって来なさそう」
「でも、いつ気分が悪くなるか分からないでしょ」
小声でそんな会話が聞こえてくる。
今は、これで様子を見る。慣れてくれば、話しかけても怖がられる事はなくなるだろう。
そんな事を考えていたが、実際は燕太の予想していたものと違っていた。
数日後、クラスメイトの一人の男子が燕太に話しかけてきた。
「堤くん……。これ、この間話していた分のお金。遅くなってごめんなさい」
男子生徒は燕太に3万円を渡そうとした。
「これは……何の話だ?」
「ご、ごめんなさい。準備が大変だったのもあるけど、声を掛けるタイミングが分からなくて」
目を泳がせながら、男子生徒は怯えている。
「なぜ謝る?ワタシは事を覚えていないところがあってな。悪いが、状況を説明してくれないか?」
「ごめんなさい!お金は置いておくから!」
燕太の机に現金を置き、男子生徒は逃げ出すように離れて行った。
これは、おそらく『堤 燕太』が彼に恐喝紛いの事をしていたのだろう。
しかし、声を掛けやすくなったからといって、こういう事での会話しかないとなると、それは大問題だ。
用がない限り、会話は望めない。




