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初登校のご気分はいかがですか?【1】

「ちょっと!この資料の部数足りないんだけど」

「す、すみません。印刷してきます」

週初めの月曜日、一気に現実に引き戻され、私は感覚が鈍っているようだ。

「どうしたの、玲奈ちゃんがミスなんて。大丈夫?何かあった?」

「あはは……。休み明けでボーっとしちゃってたのかな。いかんいかん」

同僚にも心配されるなんて、それくらい私が仕事でミスする事は珍しい。





それもそのはず、あんな訳の分からない出来事があったからだ。

土曜日の夜、スーパーの帰りに一国の王子を名乗る男子高校生に婚約者だと言われ、一旦自宅に引き入れる事に。(これは成り行きでだ、成り行きで)

彼が異世界から来た事が分かり、私はそれを信じて、日本で生活していく彼を支援して見守る事となるが、彼は私をやたらと慕うようになり―――。



私、どうなっちゃうの!?的な展開だ。

いや、実際のところ、私に今のところ何か被害が起こる可能性は少ない。

彼がちゃんと日本での生活に馴染めるかが何だか気になるのだ。

世界が違うから、文化とか物事の考え方とかの違いで、トラブルを起こさないか心配になってしまう。

それに、元々の燕太くんがどんな性格や人物なのか分からないから、周囲は今の燕太の様子に戸惑うのではないだろうか。

そもそも、燕太にとって、日本という『イセカイ』で過ごす感覚とはどのようなものなのだろうか。





……ハッ!またしても、そのような事を考えてしまった。

こんな状態だから、仕事でミスを犯してしまう。

異世界モノの事は考えるな。燕太の事も仕事中は考えるな。

私は、そう自分に言い聞かせ、仕事を続けた。







仕事を終え、スマホを見ると燕太からLINEが来ていた。

アイツ、完全にスマホを使いこなしてやがる。充分、日本で生活していけんじゃん。

『お仕事、ご苦労様です。昨日はワタシに一日付き合って頂き、疲れが出たのではないかと心配しておりましたが、体調はいかがでしょうか?』

あー、私の事を気にしてくれてるのね。気配り上手だわ。

『私は大丈夫。今日は初めての学校だったでしょ?どうだった?』

『いろいろと戸惑いや違和感がありました。今はそれを解決していこうかと考えております』

『まあ、全く違う環境だからね。燕太も無理しないでね』

『ありがとうございます。ところで、今は電話を掛けても宜しいですか?』

『いいよ。もう職場出ているし』

その一文を送った瞬間に燕太から電話が掛かってきた。

「レスポンスが速くない?」

「玲奈さん!ああ、遠くにいるのに貴女の声が聞けるなんて、電話は本当に画期的なものですね」

「分かった分かった。それで、どうかした?電話でないと説明しにくい事でもあった?」

「いえ、全く。ただ貴女の声が聞きたかった。いけませんか?」

いや、いけない事はないけど、恋人でもあるまいし。

……彼氏からは、こんな電話やLINEすら、もうないけど。

「じゃあ、具体的な今日の学校の感想を聞こうか」

「あ、またはぐらかしましたね。いじらしい」

「いいから。さっさと話さんかい」

「そうですね。授業についてはまだ初めてなので、各科目の知識はこれから深めていくといったところでしょうか。クラスメイトも皆さん穏やかですね」

「違和感も感じたんでしょ?」

「ええ、まあ。もう少し様子を見ていこうと思います」

「ふーん。それって何だったの?」

「おや、知りたいですか?ワタシにあからさまに興味を持って下さるなんて、玲奈さんは素直になってくれたんですね」

「いや、違うし。まあいいや、キミがうまくやってくれれば一安心よ」

……学校で何かあったな。

燕太は私にそれを隠している。

でも、この感じなら、それほど大きな問題という訳ではなさそうだ。

燕太が話してくれるのを待っていよう。

そう思い、私は燕太を見守る事にした。

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