なろう系の申告がちょっとムカつく件
物事は数字で計れるものばかりではない。
物事は常に理想とは限らない。
「…………は?」
なろう系だとか書いたが、それも失礼という感じか。
電話の相手を見た瞬間。あ、こいつは確か昔。変な事を申告してきた奴だと察知していた山口には、嫌な予感しかなかった。それでも、電話をとらなきゃいけないのが社会人の第一歩。
コールセンターもなにやら困惑したみたいな表情で、担当者を呼んでいた。この時点で、想定している話じゃねぇのは分かる。こっちのミスじゃないんだろう。
「えー、代引きの荷物が届いていないんですか……」
『そーなんだよ!今日欲しい荷物が、届いてないんだよ!なんとかしてくれよ!』
不着申告。要約すれば、お客が言うように荷物が届いていないというもの。
この問題。配達側の不敵際として、最も疑われるのは誤配である。別のお宅に配達したんじゃねぇのかという不安。届く日に届かないからこそ、そーいう気持ちになるのは分かる。だが、こちら側の不手際の場合。真に残念な話し、解決するのが難しい。
理由は
「いやー、どこに配ったかわかんねぇや~(笑)」
「木下。お前、減給!!」
以上である。
そんな配達員が地域の配送を任されているとしたら、ホントに申し訳ない。
さて、山口の電話に戻る。
「荷物ってどこからですかね?いつ頃お出しになられているか、分かりませんか」
コールセンターから場所は聞いてはいるが、念のため。再確認である。荷物を出した時刻が分かれば、どこらへんに今。その荷物があるか分かる。荷物を追跡するバーコードを辿れば、今は楽に調べられるが。
『福岡からだよ!!昨日出したって言っていたんだ!!東京に着いてもいいだろ!!』
「まー、そーっちゃそうですが……。ですけど、1日じゃあ。そこからお宅まで、届けられる事はまずないですよ?荷物が午後に出されていたら、2日はかかっても……」
荷物がどのような形式で送られて来ているかも、大切だ。
どの会社も通常発送なら、そんなに早くは荷物が届かない。山口の対応案件も、おそらくは通常発送だろう。というか、このお客は欲しいと言っても、出している側が全然急いでない場合もある。急ぎの荷物にすれば、追加料金をとられるし。
おそらく、その荷物は全国に配られるため、仕分をされているところだろう。配送地域の方に来ていない。というのが山口が最初から出している結論。このお客と差出人が荷物を追跡するバーコードの情報をやり取りしてれば、さっさと終わっていたのだが……。
『そんなの関係ないよーー!こっちは急いでるんだよ!』
そりゃ差出人に言えよ。もう1日早く出すとかさ……。
耳から受話器を少し離して、客の指摘を聞かないようにする。というより、この手の相手には何を言っても、ムダだからだ。なにせそもそも、
『福岡から東京まで、800キロくらいでしょ!今は、新幹線でも5時間弱!飛行機なら90分でいけるんだよ!!なんで君は配達ができないんだよ!』
馬鹿だろ、こいつ……。
直球過ぎる事は、絶対に心の中に留めておこう。陰口にしなければならない。
山口は頭を手に置きながら、悩んでいた。こちらの反応がないと、余計なので
「はー」
溜め息のような相槌をついて、ひとまず話をさせる。
なんというか、根本から違い過ぎて理解してくれと言うよりも、好きなだけで喋らせて満足させて、電話を切らせるのが最善。山口側がせめてできる事は、荷物が届き次第。最速で届けてあげるのが、精一杯。
『時速50キロの速度でも、16時間で着くんだよ!!子供でも速さと時間は習うでしょ!!計算できないの!確かに、800キロの距離があるとは限らないという問題があるけど……!あ、分かりやすく言ってあげると、距離÷時速で時間だからね!君にも分かるように言うけどさ!』
いや、そこじゃない。
そーいう話しじゃない。
距離の問題とかじゃない。
『小学生でも習うんだよ!!こーいうこと!!』
さすがに小学生でも、そんな計算で荷物が届くわけないだろって分かるだろ……。小学生を馬鹿にしてんの、あんた。
まぁ、なんというか。
お客のイライラを解消させて、こっちも話しを進める必要がある。
「つーか、俺達じゃどーにもならんっつーの」
さっさと話し終われよって、缶コーヒーを口に含んで、話しが終わるのを待つ。
『はーっ、まったく。これだから、オタクの仕事はいい加減だよね』
5分間も、誰も聞いちゃいない演説ご苦労さまってところで。受話器を再度とり、
「ひとまず、分かりました。明日、その代引きの荷物が届けばこちらからお電話します。こちらからは、最速で届けるのがせめての対応なので」
『あーもう、なんでもいい!とにかく、急いで!』
ただし、分かっている事がある。予感はしていた。
◇ ◇
お目当ての代引き商品が届いた。山口の予想通り、通常発送なんで規定通りの到着である。
荷物が届いたので一報を入れるも、
「こいつ、電話にでねぇ~……」
仕方なく、家に直接行くも。
「こいつ、いねぇ~……」
もう不在票を入れるしかないという対応。3日後、再配達の夜間帯で配られることに。
なんだったんだよ、あの対応……。
おそらく、電話してきたその日にしかいなかったんだと思いますがね。
もう1つの申告というか、客との世間話程度だったんですが
「再配達が大変?なら、深夜帯の時間に荷物を配るようにしたらどうだ?その時間帯ならみんな、仕事が終わって家にいるもんだろ。再配達することはないと思うよ」
って、おっさんに言われたのには、ちょっと笑ってしまいました。
「僕は仕事してるんですけど?」と返したら、
「うっかりしてたぜ」って笑いに変えてくれる分にはいいですね。
ま、そんな時間帯に配ったら、寝ている人とか近所の方々に迷惑ですし。誰しも夜間希望ってわけでもないですしね。
そもそも家に帰ってこられない方とかいるんで、再配問題は難しいです。