調査依頼
それから1週間は順調に薬草摘みの依頼をこなし、冒険者ランクもEへと上がった。ついでに魔物もそこそこ倒しているのでポイントもたまっている。が、欲しいものもないので今は貯金中だ。どこかのタイミングで一気に使ってやろう。
「今日も薬草摘みの依頼をうけたいのだが、」
俺たちはギルドにいる。今日もいつもの薬草摘みだ。
「すいません。今日はなぜか薬草摘みの依頼が来てないんですよ。」
そうなのか?今までそんなことなかったのにな。
「そうか、なんでだろな。」
「それは、わからないです。すいません。」
「いや、謝ることじゃない。」
「うんうん、そうだよ、ミイ。でもちょっと不思議だよね。」
普通薬草摘みの依頼なんて無くならないのにな。
「変わりと言ってはなんですが、ゲッカの森の調査依頼に行ってみてはどうでしょうか。」
「「調査依頼?」」
「はい。実はゲッカの森の中心部は情報が少ないんですよ。この辺りの冒険者では中心部に入るほどのランクの人はいないんです。この依頼もCランク依頼で、ほんとは適正ランクじゃないシュウさんに頼むのは良くないんですが、シュウさんは強いですからちょうどいいんじゃないかと思いまして。」
中心部か。危ないんだろうな。
「できれば行きたいんだが、危ないところにナナをつれていくわけにもいかないし、ナナを置いていくなんて言語道断だからな。」
「シュウが私のこと気遣ってくれてる。嬉しい。」
ギュッと抱きついてくる。あー、可愛いわ。なんか犬っぽい感じがする。タヌキだけど。まぁタヌキも可愛いけど。
そういや、この世界にもタヌキっていたんだな。
「はいはい、よしよし。」
「ふはぁ~。」
「・・・楽しそうですね。」
なんかミイが羨ましそうな顔をしている。
「でね、シュウ。私シュウの邪魔はしたくない。だから連れてって。」
「でも・・・わ、わかった。」
「やった!これでシュウと一緒。」
この一週間でナナの甘えがひどくなった気がする。まぁ俺がナナの心の拠り所になれていると思っていいのかな。
とにかく、調査依頼とやらを受けてみるか。
「じゃあ、ゲッカの森の調査依頼受けてみるよ。」
「ありがとうございます!調査依頼の期間は一ヶ月以内です。野宿になると思うので、テントとかご飯とか準備してから行ってくださいね。」
野宿か。爆発したらテントが出てくるグレネード、なんてあったらいいんだけど。さすがにそんな夢みたいなものはなかった。逆にあったらあったで怖いけどな。
「テントとかはあの袋に入れればいいよ。食べ物は保存食になっちゃうけど、仕方ないね。」
まぁそこまで贅沢は言ってられないな。
「一応調味料でも持っていっておけば魔物からドロップした肉を調理したりできるかもしれないからな。」
「うん。わかった。」
じゃあ準備もしたいし、そろそろ家に帰るか。こないだ「ナナの家に」ってゆったら今はシュウも住んでるでしょ!って怒られたんだよな。
「じゃあ準備もするし、そろそろ家に帰ろうか。」
「うん!テントあったかなぁ。」
なくても買ったらいいけどな。薬草の依頼のお陰でだいぶお金も貯まっている。毎日50本なので一日で50×150で7500ミル。これを一週間なので7500×7の52500ミルだ。単純計算で一月20万ミルぐらい稼げるので、十分だ。
因みに1ミル=1円ぐらいの感覚だ。
家に着くと、さっそく倉庫を漁った。
「テント、テント~」
「ありそうか?」
「ん~、前見たような気がするんだけど、どこやったかなぁ・・・。」
ガシャァン
「ナ、ナナ!大丈夫か!?」
「ゴホッゴホッ。うわ、ホコリだらけになっちゃった。」
「あ~、はたかないとな。」
パンッパンッ!
「ありがと。ん?あ、あった!」
「え?何が?」
「テントだよ。テ・ン・ト!やっと見つかったぁ~。」
「ほんとか。さっそく出してみるか。」
テントを引っ張り出す。これもホコリだらけなので、外に出してホコリをはたきながら広げてみる。
「よし、穴あきとかはないみたいだな。」
「そうだね。ちゃんと使えそう。狭いテントでシュウと二人・・・。うふふ。」
・・・撫でてやらないとな。あと、ミミか?そういや、シッポ触ったことはないな。触ってみたいな、ふわふわしてて気持ち良さそうだし。
「じゃあテントはこのままもっていくとして、後は布団とかだな。で、保存食は、」
「保存食は買っとかないとね。家にはないからなぁ。」
「じゃあ一通り持っていくものの準備が出来たら買いにいこう。ゲッカの森に行くのは明日の朝からでいいか?」
「そうだね。今からだとすぐに暗くなっちゃうし。」
それからはテントや布団など持っていくものの準備をした。
「保存食買うのにどこかいい店あるか?」
「ん~。買ったことないからわかんないけど、冒険者の人たちが良く行ってるところは知ってるよ。」
行きつけの店みたいなのがあるのか
「なら、そこに行ってみるか。」
「うん!」
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保存食を買ってきた。保存食といってもよくある干し肉だけじゃなく、なかなかレパートリーも豊富で驚いた。
「最近は耐腐魔法の施された容器なんて魔道具も一般的に普及してるから、色んな保存食が作れるようになったんだって。」
「これも魔道具なんだな。そのわりには値段も手頃だし」
「冒険者には確実に売れるからね。多少安くても利益があがるんじゃないかな。」
考えられてるな。
諸々の準備が終わった頃には日も落ちていた。
「暗くなってきたし、お風呂入ろってからご飯にしよっか。」
「あぁ、わかった。」
お風呂は準備してる途中に入れておいたのですぐに入れる。
「はぁ~、あったかい。」
「ふぅ~、気持ちいいねぇ。」
今は二人で入っている。ちょっとの間も離れたくないとのことだ。もちろん、ちゃんとタオルで隠してはいる、いるのだが、ナナはその、それなりに女性らしい体をしているので、タオルをつけていても目のやり場に困る。
「シュウ、どうしたの?もしかして、見たい?」
「な、なわけないだろ。」
「ふぅ~ん。見たくないんだ。悲しい。」
「いや、その見たくないってわけでは、その・・・。」
そんなことで悲しいとか言わないでくれよ。
「・・・ふふっ。シュウ面白い。ギュッてするね。」
「え?いや待て、あがって服を着てからにしろ。」
「やだ、もうするって決めたもん。」
「あ、当たってる。当たってるから!」
「何が?」
「うっ、うぅぅ。」
結局逃げることは出来なかった。
その夜も、二人でベットに入った。やはり離れたくないとのことだ。それに最近は
モミモミ・・・。
「はふぅぅ。気持ちいいぃ。」
ミミを撫でてやらないと落ち着いてくれない。一度触っちゃったんだから責任とって毎日触りなさい、ってことらしい。そんなに重いものだったとは・・・。
「そういや、シッポって触ったことなかったな。」
「し、シッポ!はぅ、シッポはその、ふゃぁ、ミミより上の、ひゃぅ、やつだから。」
すごく喋りにくそうだが、やめると怒られる。それにしてもミミより上のやつか。
思いきって触ってみた。・・・いや、触ってみたかったんだ、モフモフしてるし。
「ふゃぁぅぅ。だ、ダメなのに、普通仲のいい夫婦でも触らないのに。」
え、そんなにヤバイことだったの。夫婦でも触らないって、マジでヤバイんじゃ・・・。
「す、すまん。すぐやめるから。」
手を離そうとすると、捕まれた。
「ダメ、もうやっちゃったんだもん。シッポはミミより依存性が高い。責任とって触って。」
「は、はい。」
もう一度モミモミする。あぁ、モフモフだ。
「ひゃぅぅ。シュウぅ~。」
「そ、そんなにギュッてするな。顔が近い、近いから。」
「キスする。」
「しない!彼氏じゃないんだから。」
「でもミミ触った、シッポも触った。もう彼氏とかわらない。」
「と、とにかく違うもんは違う。」
「うぅぅ。野宿の間に奪ってやるんだから。」
そろそろ諦めるべきだろうか・・・。いや、心を強く持て!ちゃんと線引きはしとかないと。
とりあえずその日はシッポを触ったまま、眠りについた。