秘密の行方
「シュウ。お風呂にしますか?ご飯にしますか?それとも・・・。」
「お風呂にさせてもらうよ!」
「うぅぅ。最後まで言わしてほしかった・・・。」
なにを言うつもりだったんだか・・・。で、お風呂にさせてもらうか。ん?お風呂?
「この世界ってお風呂あるのか!?」
「うん。文化として馴染んでるよ。」
「おぉ!そうなのか!」
異世界ってゆうとお風呂の文化がなかったり高価だったりすることが多いからな。一般的に広まってるのは嬉しい。
「あ、シュウごめん。言ってみたかったから言っちゃったんだけど、そういやお風呂入れてなかった・・・。先ご飯作るからその間にお風呂入れるね。」
「あ、あぁ。わかった。俺が入れてくるよ。」
「ありがと!」
「今日は泊まらせてもらうんだからな。それぐらいしないと。」
俺はお風呂場に向かった。
「今日は、か・・・。」
何か聞こえたかな?まぁいいか。お風呂は、このスイッチだな。まさかのスイッチでお風呂が入るというハイテクぶり。これは魔道具らしく、以外と普及しているみたいだ。地球の機械ともさほど変わらない。いや電気を作る必要がないからそれよりいいのかもな。
お風呂を入れてリビングに戻る。
「今ご飯作ってるからちょっと待っててね。」
「わかった。ありがとな。」
回りを色々と見てみると、きれいに整頓されていて女の子らしさを感じる。といっても人形とかの女の子らしいものは置いてないみたいだな。
しばらくするといい香りがしてきた。
「できたよ。簡単なものだけど、頑張ってつくったの。」
「いい香りがしてきたと思ったら、予想通り肉料理だな。」
これは、豚のしょうが焼き、みたいな感じだな。米はさすがにないみたいだが美味しそうだ。
パクっ
「うまいな!味も濃すぎないし肉も固くなってない。」
「ほんと!よかった。」
なんだろうか。何か特別なものを使ってる訳でもない。特別料理が得意な訳でもない。なのに、
「今までで一番美味しい。」
「え?ほ、ほんとに?」
「あぁ!ほんとだ!」
なぜだろう。すごく暖かい。
「よかった。シュウにそんなふうに思ってもらえて。」
美味しかった。すぐに食べきってしまった。
「ごちそうさま。」
「うん!私もごちそうさま。」
それからはしばらくリビングでゆっくりさせてもらった。
「そろそろお風呂入ったかな。」
「そうだな。」
「じゃあ入ろっか。」
「わかった・・・。ん?入ろっか?」
「うん。入ろ。一緒に。」
は、はい?
「い、いやいや。それはさすがに。」
「え~。お願い!入ろうよぉ~。」
「だ、ダメだって。」
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はぁぁ~。気持ちいい。やっぱりお風呂はいいな。
それにしても急に一緒に入ろって言うとは思わなかった。さすがにやめておいたが。男女だからな。うん・・・。
それにしても、
「ナナは、大丈夫だろうか・・・。」
もちろん、ナナの心の傷についてのことだ。獣人であることはやはり隠したいのだろうか。
「心の拠り所、か。」
テナさんがゆってたが、実際必要なのだろう。俺がどうにかできたらいいが、今日会ったばかりだからな。・・・俺を心の拠り所にはできないよな。
「深く考えてもダメだな。俺はできることをするだけだ。」
それから少しして、俺はお風呂から出た。
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「気持ちよかった。やっぱりお風呂はいいね。シュウ」
「そうだな。」
ナナもお風呂から上がってきた。髪が塗れて薄い茶色から濃い茶色に変わっている。
「もうあとは寝るだけだね。いつも薬草取りに早くから出掛けるからそろそろ私は寝るけど、シュウはどうする?」
「俺はもう少しだけゆっくりしてから寝させてもらうよ。」
「わかった。おやすみ。」
「おやすみ。」
それからしばらくリビングで寝転んでいた。人の家だが、まぁゆっくりするって言ったしな。
30分ほどして、寝転がったせいか眠くなってしまった。
「そういやどこで寝たらいいのか聞いてないな。」
勝手にその辺で寝るのもあれだし、そんなに時間はたってないからナナもまたまた起きてるかな?ナナの部屋に行ってみる。
そっと扉を開ける。すると、
ナナがひとつの写真を見て止まっていた。写真には夫婦らしい大人の獣人とその間に挟まれている小さな子供の獣人が写っていた。そして・・・ナナの頬に一筋の涙が流れる。
「ナ、ナナ。」
「ひっ!シュ、シュウ・・・。」
しばらくの沈黙が続く。
「ナナ」 「シュウ」
「あ、ごめん。シュウが先に言って。」
「いや、ナナが言ってくれたらいいよ。」
「・・・私のこと、テナさんから聞いた?」
「え?あ、うん。」
「そっか。ごめんね。隠してて。」
獣人のことだろう。
「いや・・・。その、大丈夫なのか?」
何を聞いてるんだ俺は
「大丈夫・・・ではないかな。でもシュウが気にすることじゃないから。」
「・・・その、見せてくれないか。」
「何を?」
「獣人の、姿。」
「・・・わかった。」
ナナが魔法を解除した。ミミとシッポが見えるようになった。
「・・・ごめんね。変だよね。気持ち悪いよね。」
「そ、そんなことない。」
「嘘はダメ。」
なんと言ったらいいのか分からない。
けど・・・・・・・・いつのまにか、俺はナナのことを抱きしめていた。
「シュウ?」
「ナナ。その、ナナのことを気持ち悪いなんて思わない。だって、俺は・・・この世界のやつとは違うから。」
「・・・。」
「ナナが俺をどう思ってるのかは分からない。けど、よかったら俺がナナの、心の拠り所になりたい。」
なに言ってんだよ。今日会ったばっかりだぞ?なのに体かゆうことを聞いてくれない。
「ナナのことを、助けたい!」
「っ!シュ、シュウ。ほ、ほんとに?」
「あぁ、俺ができるなら。」
そのとたん、ナナの目からは涙が溢れだした。けど、
「ほんとに、ひっく、いいの?私、こ、こんなんだよ?」
「そうゆうミミやシッポってのは可愛いと思うぞ。俺の世界ではそうだったし、俺もそう思う。」
「あ、ありがとぉぉ~。うぅぅ~。」
感動と嬉しさの涙だった。ナナは俺の胸に顔を埋めてスリスリしている。獣人特有の行動。ずっと我慢してたんだもんな。俺は優しくナナの頭を撫でて、最後に少しだけミミを触らしてもらった。
「はぅ。ふゃぁぁ。」
ん?大丈夫か?とっさにミミから手を離す。すると、
「シュウぅ。やめないで。気持ちいいから、もっとミミ触ってぇ~」
う、涙で濡れた目に上目使い。これは反則だろ。抵抗もせずもう一度ミミを触る。
「はぅぅ。」
ナナの体の力が抜けてしまうのでそのままベットに寝転がってミミを触った。
「ふゃぁぁ。シュウぅ。獣人のミミを触るのって普通彼氏以上なんだからぁ。」
そ、そうなのか・・・。何気なくやってしまったが、ヤバイことだったんだな。かといってもうやめられない。ナナがやってほしいからだけでなく、俺もやめられないのだ。ミミが気持ちよすぎる・・・。
触りすぎてナナがモジモジし始めたが、そのあとはスリスリしたりしながらも、二人で眠りについた。
「シュウ、大好き。」
何か聞こえたかな?
ナナはヒロインです。まだ付き合っているとかではないので、今後ナナの恋が叶うのかは・・・。
シュウはナナのことを大切に思ってはいますが、好きという感情には至っておらず、且つ鈍感です。