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魔力操作

まだ日も比較的高い昼下がり。俺とナナは庭の一角に座り込んでいた。


─────ガサッ、ガサッ、


─────トン、トン


「よし、出来た出来た。」


一度立ち上がって腕を伸ばす。座り込んでいたことで固まっていた体の節々がバキバキと音を立てる。


隣をみると、俺の方をみて同じように伸びをしているナナがいる。


一通り体を鳴らしたところで、ナナが再びその場にしゃがみこんだ。


「ここに魔力を流し込めばいいんだよね?」


そう言いながら、掘り返して薄ら黒くなった小さな土の山の先を指でつつく。


勿論、その下には大容量袋に保管していたあのフジダマの種が埋まっている。


家の庭のような固い土に育つのか些か心配ではあるが、その辺は問題がないらしい。


馬車での帰り道の間コラルドさんに聞いた話によれば、魔力さえ加えれば土に埋まっていなくても育つようで、土は単なる支えとしての役割しかないらしい。


と言うわけで、後は魔法の使えるナナに魔力を流してもらうだけなのだが。


「魔力って操作出来るのか?」


「分かんない。」


「マジか⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」


「だって、やったこと無いもん。」


「じゃあ、魔力を感じることとかは出来るか?」


「⋅⋅⋅⋅⋅⋅ごめん。それも分かんない。」


詳しく聞いたところ、ナナが使える魔法は初歩の初歩で、魔力操作を伴わない様なもの。つまり、ナナは魔力操作をしたことがないと言うわけだ。


因みにここまで魔力操作や魔法について話をしているが、ここらでちゃんとした魔法について説明してみようか。


ラノベなんかでは、魔方陣を書いたりすることが多いみたいだが、実際の魔法はそんなことはない⋅⋅⋅⋅⋅⋅いや、この世界は、かもしれないが。


その代わりと言ってはなんだが、まさかの『呪文詠唱』があるのだ。そう、あの中二病臭い呪文だ。


だが、それだけでは勿論魔法は発動しない。


まず、当たり前だが体内に魔力が存在しなければ使えない。こればかりは先天性なので、才能的なものになってしまう。後、遺伝もするらしい。


次に、体内の魔力を動かさなくてはいけない。これが魔力操作である。


最後に、さっきの『呪文詠唱』が来る。正しいリズムと発音、そして魔法を発動させる任意の場所に魔力を集中させることがコツだ。


魔力の有無は才能だが、魔力の最大容量、また一度の魔法に使える魔力量『放出上限』は魔法を使うことで成長するらしい。


この『放出上限』が大きくなるとより高等な魔法が使えるが、その分魔力の消費量と詠唱の長さは犠牲になる。


その他『短縮詠唱』なるものなど、色々あるらしいがそこまではいいだろう。




長々と説明をしたが、勘のいい人は気になっているであろうことについての話で締めようか。


それは、『ナナが詠唱しているのを見たことがない。』ということについてである。


これは最初に説明した通り、ナナの使う魔法が『初歩の初歩』だからである。


詠唱は魔法発動のトリガーとなるわけだが、指の先に火を灯すほどの魔法にはその詠唱の必要がないのだ。よって、ナナは詠唱をしたことがないというわけである。



何故俺がこんなに魔法について詳しいかというと、以前マリアに聞いたからである。


知ってて損はないだろうと思ったからであって、諦めがつかず魔法を使う方法を探していたわけでは断じて無い。無いったら無い!


「シュウ?ぼーっとしてどうしたの?」


「あ、いや、大丈夫だ。」


ナナの声で正気に戻る。いつのまにかぼーっと斜め上の空を見つめていたらしい。


「それで、どうやったら魔力操作って出来るのかなぁ。」


「ん~そうだなぁ⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」


これに関してだけは、マリアの説明でも分からなかった。


というのも、これは感性の問題であり、言葉で説明するできるものじゃないらしいのだ。


こうなってしまえば俺にどうこうすることは出来ない。


真剣に悩んだ結果。


「体を流れる血液みたいな感じをイメージしてみてくれないか?」


「血液?」


「そうだ。温かいものがぐるぐる回る感じだ。」


よくあるラノベからの受け売りだ。こんなので上手くいくとは思っていないが、試す価値はあるかもしれない。


「目を瞑って、深呼吸して。」


「⋅⋅⋅⋅⋅⋅すぅ~、はぁ~」


少しでも集中できるように、静かに待つこと5分。


これはやはり出来なかったのか⋅⋅⋅⋅⋅⋅


「面白いねー、これ。」


ふと隣から予想外の言葉が聞こえてきたので、その方を見る。


すると、自分の手を見つめながらにぎにぎと閉じたり開いたりしているナナがいた。


「な、何やってるんだ?」


「なんかね。シュウの言う通りにやってみたら体の中にぽかぽかしたものが出てきたの。」


「え?まじで出来たのか?」


「うん。今はそれを手に集めてるところだよ。」


どうやら本当に出来てしまったらしい。


この方法が世間一般に通用するのか、それともナナがこの方法で出来ただけなのかは分からないが、日本での知識が役に立ったのはとても嬉しい。


「じゃあ、あれ、出来そうか?」


そう言って指差したのは、勿論フジダマの種が埋まっている土の山だ。


「やってみるね。」


頷いたナナは、さっきの感覚を忘れないようにか慎重に土の前に腰を下ろす。


芽が出てくるであろう山の先端をよけ、回りから囲むように手を当てて目を閉じる。


「⋅⋅⋅⋅⋅⋅ふぅ~。んん!」


一度深く息を吐いて、スッと力を入れる。


─────ボゥッ!


その瞬間、土が淡く光り始めて、先の方がかさかさと動き出す。


そして、綺麗な若菜色の双葉が顔を出す。


「う、くぅぅ~⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」


「だ、大丈夫か!?」


そこまでいったところで、突然ナナが呻き声をあげて体勢を崩す。


咄嗟に抱きかかえると、ナナは酷く疲れた顔をしていた。


「どうしたんだ?」


「なんか、魔力が吸われる感じがして⋅⋅⋅⋅⋅⋅急にフラってなっちゃって。」


『魔力枯渇』だろうか。これもラノベの受け売りだが、『魔力が枯渇に近い状態になると身体に影響を及ぼす』というやつだろう。


「毎日、コツコツやろうな。」


「うん⋅⋅⋅⋅⋅⋅!」


一瞬残念そうな顔をしたが、足元に伸びた小さな芽を見ていつもの元気な笑顔に戻った。


それを見て、安心して立ち上がろうとしたところでナナが腕を掴んでくる。


「すっごく、疲れちゃったなぁ。」


上目使いで何やら含みのある言い方をする。ずるいやり方だな。


「わーったよ。」


捕まれた腕を回すようにして背に、反対の手をナナの膝の下に入れて持ち上げる。所謂『お姫様だっこ』というやつだ。


「ゆっくり休もうな。」


「⋅⋅⋅⋅⋅⋅夜はシュウによしよししてもらわないと休めないなぁ。」


「言われなくてもいつもやってるだろ?」


「ふふっ、だね。」


腕の中で柔らかく微笑むナナは、疲れの彩葉見えるものの天使のようだった。

ナナが魔力操作を出来るようになりました。つまり、ナナの魔法がグレードアップするわけでして⋅⋅⋅⋅⋅⋅。


さて、どこに使おうかなぁ(決まってませんw)


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