衣住食
「で、話ってゆうのはなんだい?」
俺の左にはナナが、右にはルーンが、そして机を挟んで向かい合って座っているのがテナさんである。
ここは《テナの洋服店》の奥にある客間であり、俺たちはその部屋で話をすることになった。
「じゃあ、早速始めさせてもらおう。」
仕切り直しにそう言ってから椅子に座り直す。
「話というのは、まぁ分かっているとは思うがこの子のことでな。」
俺は顔を右に向ける。そこには緊張はしているものの、突然見られてポカンとしているルーンがいた。
「まずこの子⋅⋅⋅⋅⋅⋅ルーンなんだが、王都で独り暮らししつつ雑貨店を営んでいたんだ。そこにたまたま俺たちが来て仲良くなったって訳だ。」
色々あったが、今では俺も含め三人仲良くなった。
「それで、独り暮らしを見かねて連れて帰ってきたってわけかい?」
「そう言うことだ。」
テナさんは何か納得したようにうなずいた。
「つまり、ここに来たのはそのルーンって子に衣住食を与えてやって欲しいっつうわけか。」
「話が早くて助かるな。どうか頼めないだろうか。」
すると、隣に座っていた二人が立ち上がった。
「ルーンちゃんは私の大切な友達なんです!テナさん、お願いします!」
「わ、私も、しっかり働きますので、お願いします!」
二人して深く頭を下げる。それを見てテナさんがさっきのルーンのようにポカンとするが、少しして今度は口の端を上げたにやけ顔をした。
雰囲気から察した俺は、体を少し机に乗り出させ同じようなにやけ顔をする。
「さすがに突然連れてこられた子を無条件に預かることはできないね。だが⋅⋅⋅⋅⋅⋅シュウのことだ。何か裏があるんじゃないのかい?」
「ふふっ、あんたには隠せないようだな。もちろんあるさ。ナナ」
なぜか悪い話をしているような感じになっているが、ただのノリである。案外テナさんはこうゆうのが好きなようだ。
というのは置いておくとして、俺はナナに合図をする。
それに頷いたナナは、手元の大容量袋からあるものを取りだしてテナさんに渡した。
「これは?」
「俺とナナが国のパーティーに参加するときに来ていた服だ。」
そう言うと、テナさんは服を軽く伸ばしたり裏を向けたりと真剣な表情で見始めた。
暫くして顔を上げる。
「所々甘いところは見えるが誤差の範囲。縫い目もしっかりしていて良い品だ。」
「これをルーンが作ったんだ。それも一時間でな。」
「なっ⋅⋅⋅⋅⋅⋅!この完成度で一時間か。細かいところだけもう少し練習すれば、重要な戦力になるな。」
褒められたことが嬉しかったのか、ルーンは俯きがちにもじもじとしていた。
「どうだ?即戦力になるルーンを手伝わせる代わりに衣住食を提供する、という条件で。」
「お、お願いします!」
少し考える素振りを見せるテナさん立ったが、すぐに答えが出たようだった。
「いやぁ~心配する必要はなかったみたいだ。こちらこそお願いするよ!」
「ほ、ほんとですか!ありがとうございます!」
「ルーンちゃん!よかったねぇ!」
「うん!」
よほど嬉しかったのか、二人は立ち上がって抱き合っていた。
「じゃあ早速その辺の話をしていきたいから、ルーンだけこっちに来てくれるかい?」
「わ、分かりましたぁ!では、行ってきます。」
「いってらっしゃ~い。」
「あぁ、俺らはブレーキさんのほうに行ってくる。」
そんなわけで、テナさんとの話し合いは無事に終わった。
短めに更新しています。(それぞれの場面ごとに区切る感じで)
次はブレーキさんの方に行きます!
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