再び王の間
コンコン
「入っていいよ。」
「失礼するぞ。」
「失礼しまーす。」
「失礼するわ。」
「し、失礼しますぅ!」
俺、ナナ、マリア、ルーンの順に挨拶しながら、王の間へと入っていく。ナナはもう緊張はしていないようで、マリアも大丈夫なようだったが、ルーンだけは非常に緊張しているようだった。
中に入ると、この前と同じ椅子に凭れながらオスペオさんが座っていた。先程の口調からも分かるように、人前用の威厳を出す態度ではなく楽にしているようだった。
そして、その横には前回同様ブレーキさんと、コラルドさんも一緒にいた。
「来てくれてありがとね。雑談をしてたら長くなってしまうから、早速本題に入ってもいいかな?」
「大丈夫だ。」
「とりあえず、昨日のスタンピードの退治について感謝するよ。数万規模のスタンピードを一人の犠牲者どころか負傷者も出さずに殲滅するとはね⋅⋅⋅⋅⋅⋅私も想像以上だったよ!」
「あれは凄かったわね。」
「それは、まぁ⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
こっちとしてもあの威力は想像以上だった。しかも未だに理由が分からず⋅⋅⋅⋅⋅⋅
「そんなに難しいことじゃないっすよ。」
「え?」
思考を読まれたのか。そういや前もこんなことあったな。
「単純に二つ以上のグレネードを併用したから、下向きのエネルギーだから重力の抵抗が少なかったってところっすかね。まぁ二つ併用したのが大きいと思うっすけど。」
「そうゆうことか。」
合成とは違い、二つ併用することにも意味があるようだ。
突然ブレーキさんが話し出したので、みんな最初はポカンとしていたが、途中からなんの話か察したようだった。
「なら今後は他のパターンも試してみるべきか。」
「うちのギルドでは試さないでくれよ?跡形もなくなるからな。」
コラルドさんに事前に釘を刺されてしまったが、こっちとしてもそんなことをする気はない。
「とにかく、そうゆうわけで何か報酬を出そうと思うんだけど、お金は前あげたしなぁ。何か欲しいものはある?」
「そうだなぁ⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
お金は多くて困ることはないが、この前5000万ミルも貰ったわけだしな。
「ナナは何か欲しい物あるか?」
「ん~。シュウの心かなぁ~。」
「それはもう貰ってるだろぉ?」
「「「「「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」」」」」
「「あ、すいません。」」
ナナの頭を撫でている形のまま、二人して謝罪する。少し調子に乗りすぎた。
「ルーンは、何かあるか?」
「わ、私ですか?そうですね⋅⋅⋅⋅⋅⋅裁縫セットぐらいしか思い浮かばないです。」
「それは⋅⋅⋅⋅⋅⋅普通に買えるな。」
この世界では、この前の縫いぐるみ同様に布など素材の物価は少しばかり高いのだが、どのみち5000万ミルもあるからな。裁縫セットと一緒に買えるだろう。
「となると、マリアか。」
「え、私?」
「そうだが?」
「私、なんにもしてないけど⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
「そんなの関係ないだろ、仲間なんだしさ。」
パーティーペアだしな。それにSランク冒険者として、武器、防具なんて国宝級なものが欲しかったりするだろう。
「優しいわね。パーティーを組んでほんとに良かったと思うわ。」
「それはどうも。」
「じゃあ私は⋅⋅⋅⋅⋅⋅スケッチセットかしらね。」
「「「え?」」」
「私、絵を描くのが好きなの。ついでに集中力も養えるからね。けど買おう買おうと思っていつも忘れてしまうから出来ないのよ。」
「マリアさん⋅⋅⋅⋅⋅⋅話聞いてましたか?」
「だね。」
「え?私何か変なこと言った?」
この発言にはルーンもナナも呆れていた。
「はぁ、それも俺が買ってやるから、な?」
「ほんと!」
「あのー、そろそろいいっすかね?」
「そ、そうだな。とりあえず今回の件は保留にしておくか。」
そう言ったところで、オスペオさんがこんな提案をしてきた。
「なら、今後ブレーキを君たちの方につかせることにするのはどうかな。」
「どうゆうことだ?」
「ブレーキには今の隊長を辞めてもらい、かわりにパーティー《マリーゴールド》の補佐係についてもらおうかなと。」
「「「「「何だってぇ!」」」」」
一度に響いた五人の声は俺、マリア、ナナ、コラルドさん、そしてブレーキさんである。そんな中オスペオさんは平然としており、ルーンの方はわけが分からずおろおろとしていた。
(そんな、急に隊長をやめさせられるなんてブレーキさんに迷惑だし、怒ってるんじゃ⋅⋅⋅⋅⋅⋅)
「お、王様⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
ほら、やっぱり怒って⋅⋅⋅⋅⋅⋅
「なに?」
「それ、最高じゃないっすか!」
「「「「はぁ!?」」」」
「よし、なら決まりだね。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!私たちとしては心強いけど、ブレーキさんにとっては折角の隊長の地位を失うことになるのよ?」
「そ、それは不味いよね?」
「そうですね⋅⋅⋅⋅⋅⋅。」
マリア、ナナ、ルーンが心配する中、ブレーキさんはこんな風に言った。
「え?大出世じゃないっすか!」
俺たちが理解できず頭を捻っていると、オスペオさんがこう続けた。
「Sランク冒険者のマリアさんにそれ以上の力を持つであろうシュウくん、現時点で《マリーゴールド》がもっとも強いパーティーであることは間違いないよ。そんなパーティーに国直々の補佐係となれるってゆうのは大出世だよね。」
「は、はぁ。」
「それにブレーキも君たちのことを気に入っているし、シュウくんにとってもいい話だと思うよ⋅⋅⋅⋅⋅⋅ってゆうのは建前で、正直なところ今のうちにこっちに取り込んでおきたいってゆうのがほんとのところかな。」
オスペオさんはそう言っているが、建前の方でも十分俺にとっては嬉しい。ブレーキさんがいいならそうしたいな。
「そうだな⋅⋅⋅⋅⋅⋅ブレーキさんは、」
「もちろんOKっすよ。」
「ブ、ブレーキさん、早いね。」
「あ、でも住むところはどうするっすか?」
「それはコラルドくん、どうにかしてもらえるかな?」
「あぁ、手配しておくよ。」
という風に、とんとん拍子で話が決まっていった。
町に帰ることに関しての算段が出来たところで、オスペオさんが他の話題について話始めた。
「それじゃあ次は、スタンピードがなぜ起きたのか、今の時点での推測を話そうか。」
お話回が長くなってしまい、次話に続きます。
これが終わったらやっと町に帰れますぅ。新しいグレネードも出るかも?
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