転移先で
目の前に色が広がった。
ここは、森だな。それもちゃんと人の手入れが入ってるから明るい。人の目につかず、少し動けば人に出会えることもできる調度いいところを選んでくれたみたいだな。あの神、雰囲気に反して優しいよな。
まずはスキルの確認をしておきたい。やってみるのがいいって言ってたし、早めに理解するべきだろ。
まず自分の持ち物に変わった物があるのに気がついた。左腰に縦向きの小さな信号機のようなものがついていて、信号機でいうライトのところには空洞があり、側面には隙間があった。ほかの言い方をすれば、三枚のメダルの組み合わせで変身する仮〇ライ〇ーのベルトを縦にした、って感じだな。
てことはメダルがあるのか?と思ってポケットに手をいれてみる。
ん?なにかあった。これは、本か?それも薄いな。なになに・・・。
《説明書》
やってみるのがいいとかいったけど、最低限教えとかんとあかんかったわ。説明書送っといたから読んでな。
・・・危なかったな。使えないスキルになるところだった。
説明書を呼んだところ、色々と分かった。
・通常攻撃は《手榴弾》
・左腰の箱(スキャナーというらしい。)はサブを使うためにメダルを入れるもの。三個まで入る。
・メダルはスキャナーに入れてる間はそのメダルに対応したサブをつかえる。最初は《発煙弾》がある。
・メダルはノーマルメダルとレアメダルがある。
レアメダルは魔法要素が含まれているなどノーマルとは少し違う。
・メダルを入手するにはポイントで購入すること、一部は特定のメダルを集めて入手するものもある。
・ポイントは魔物などを倒す、他の何かからの干渉、で入手でき、メダルの購入、メダルの強化、通常攻撃の強化に使える。
・通常攻撃以外にはクールタイムがある。
・メダルとグレネードは出そうとすれば出せる。
ということらしい。なかなかゲーム要素の強いスキルだな。ためしに《発煙弾》のメダルを出そうとしてみる。すると、銀色に銅色の縁のメダルをが出てきた。かかれている模様はその発煙弾を模しているのだろう。
スキャナーに入れると、カチャッといい音がしてメダルがはまった。
発煙弾を出そう、と思ったがこんなとこで煙だらけになれば目立つので止めておいた。
どこかで魔物か何かが出てきたら戦ってみよう。
次にメダルの購入を試してみる。購入を意識してみるとメダルのならんだ画面が目の前に出てきた。といってもどれも半透明だ。ポイントが足りないのだろう。ノーマルメダルは100pt、レアメダルは1000ptのものと特定メダル入手で開放、というものがある。早くポイントを貯めないとな。
購入画面を閉じる。システムに関してはだいたい確認したので、そろそろ移動したい。こんな状態で夜になって死ぬのはごめんだからな。どこか人のいるところに行きたい。少し歩くと、道が見えた。この道なりに歩けばどうにかなるだろう。
しばらく歩く、それなりに深い森みたいだな。そろそろ魔物の一匹ぐらい出てきてくれないかな。
「きゃぁぁ!」
ひ、人の声だ。声質的に若い女の子って感じか。急いで向かってみる。すると、
ドドドドドッ、
「きゃぁぁ!助けてぇ。」
中学2年ぐらいの女の子か猪のような魔物に追いかけられていた。
「っ!発煙弾!」
突然のことにとっさに叫んだが、ちゃんと出てきたみたいだな。タイミングを考えて猪の少し先に投げる。
「君!こっちにこい!」
「う、うん!」
プシュー
よし、うまく猪が煙に突っ込んでくれたな。
猪は相手を見失ってキョロキョロしている。
「手榴弾」
始めてではあるがどうにかなるだろう。念のため手榴弾を二つほど投げておく。
ドンドカァァン!
おおぅ、ちゃんと手榴弾の威力だ。ひとつ目の手榴弾でもう猪はやられているみたいだった。
「す、すごい。Cランクのパワードボアを一瞬で、か、かっこいい・・・。」
あれ、こっちを見る目がキラキラしてるけど、大丈夫だよな?てかあれパワードボアって名前なんだな。Cランクか。魔物にはランクがあり、F~Aと、最高のSランクがある。そのうちのCなので、それなりの強さなわけだ。爆発による土煙が晴れると、パワードボアのいたところには赤く透き通った石と毛皮らしきものが落ちていた。
「魔石Cとパワードボアの毛皮だね。」
そうなのか。もらっていいのかな?まぁ拾うだけ拾っておこう。
「助けてくれてありがと。私はナナ。町で独り暮らしをしながら薬を作ってギルドに売ってるの。」
この年で独り暮らしか、たいへんだな。暮らし・・・。あっ!
「あぁっ!」
「ど、どうしたの?」
「い、いや、その、俺住むところないんだよ。」
恥ずかしい話だがな。金もないし。
「えぇ!な、何かあったの?」
「俺、違う世界から転移してきたんだよ。」
ここまで言ったところで気がついた、いや、これ信じるわけないだろ!
「違う世界かぁ。そんなのがあるんだね。だから家もお金もないと、」
「え?し、信じるのか?」
「うん!だって私を助けてくれたし、それに目が嘘をついてないって言ってるから。」
そ、そうか。
「そ、それなら、その、私の家に来る?」
「え?いいのか?い、いや、そんな人の家に泊まるのは、それに女の子だし・・・。」
「え、あ、大丈夫だよ!いや、ぜひ来てほしいの。助けてくれたお礼もしたいし、それに、かっこよかったから・・・。(ボソッ)」
「な、何か言ったか?」
「な、何も!と、とにかくぜひうちに来て!」
「そ、そうか。ありがとう。そういや俺の名前を言ってなかったな。俺はシュウだ。」
普通は名字はないみたいなので、名前だけでカタカナにしておこう。
「シュウ、ありがとう!」
「こちらこそありがとう、ナナ。」
「う、うん!じゃあついてきて!」
それからナナにつれられて、町に向かった。