王都散策2
とりあえず、また来ます、と言うことでルーンさんと別れる。
というのも、実はただの王都散策ではなくちゃんと目的もあるのだ。その目的というのは、王都の冒険者ギルドにいくことだ。
王都の冒険者ギルド。つまりすべての冒険者ギルド支部を取りまとめるギルド本部であり、その長である"ギルドマスター"のいる場所である。
せっかく王都まで来たのだから顔を出しとけ、とブレーキさんを介して王から言われていたのだ。因みにギルドマスターとはパーティーで会えるらしい。
「冒険者ギルドの本部か。すごいところなんだろうな。」
「本部にはSランク魔物の討伐依頼がいっぱい集まるんだって。強い人がいっぱいいるかもね。」
「それは楽しみだな!」
強い冒険者か。Sランク冒険者とかもいるかもな。今のところBランクまでしか会ったことないし、AとSランクは別格だって聞くしな。
しばらく歩くと、一気に風景が変わり広間のようなところに出た。
「ここはなんだろね。」
「えーっと、冒険者がよく使用してるみたいだな。パーティーで集まったりとか、模擬戦闘やったりとか。」
って看板に書いてあったからな。冒険者ギルドもこのすぐ近くにあるみたいだ。
特に用事はないのでここはスルーでいいや。そのまま冒険者ギルドへ向かう。通りすぎる人たちの格好も"あぁ、冒険者だなぁ"という雰囲気を感じる。
なかなかな広さのある広間を抜ければ、すぐそこに冒険者ギルドがあった。薄い黄色を基調にした建物で、洋風の城っぽいな。
「いやぁ、大きいねぇ~。」
「だなぁ。これが、冒険者ギルド本部・・・。」
「早速行ってみよーよ!」
「だな!」
これは俺も興奮するな。ワクワクしてきた。
人の出入りが多いため、扉はあるものの空いたまま。一応右側通行が暗黙の了解っぽいので、それに従って中に入る。
「「おぉ~‼」」
なんだこれは。なんだか見覚えが・・・。
あれだ!おっきな銀行の受付だ。受付が横並びにいっぱいあって、それぞれに長蛇の列ができていて。
「今回は依頼受ける訳じゃないけど、できれば並びたくないなぁ。」
「そうだね・・・。これは、並びたくない。」
なんだか田舎から上京してきた人の気分がよくわかった気がするな。
ついでに依頼を見てみようと思う。コルクボード(らしきもの)に貼られた依頼表を確認する。依頼の数も多いみたいで、ランク別にボードが分けられているみたいだ。
流すように見ていく。やっぱり難易度の高い物が多いなぁ、なんて考えていると
パチッ
依頼表を外す音が聞こえる。そんなちっさな音がなんで聞こえるのか、そんな疑問を感じて回りを見てみると、なぜか俺たちの回りに全く冒険者がおらず回りの冒険者たちもしんと静まり返っていた?
「な、なんだ?」
「さぁ・・・。」
回りをキョロキョロと見回すと、一人だけ例外がいた。
コルクボードの前で一枚の依頼表を持った女性。スラッと背の高いスタイルに、肩の少し下ぐらいまで伸びた綺麗な赤髪。その合間に見える顔は整っていて、切れ長な目が特徴的に感じる。
『美人』というのが最も似合う人だ。
(あ、あの人だ。)
そこでやっと気づく。あ、みんなこの人がいるから静まりかえってるんだ。なら・・・。
「ナナ、下がるぞ。この状況はよろしくない。」
「え、うん。」
ナナの手を引いてそのまま冒険者の群れへ紛れてしまおうと下がり始める直前、赤髪の彼女がこっちを向いた。
(おぉぅ。なんか睨まれてね?てかこっちに歩いてきて・・・。)
気迫に押されて2,3歩下がるが、彼女はコツコツと音を立てながら迫ってくる。彼女の動きに合わせて回りの冒険者たちが動く。
いや、彼女は結界でも使ってるのか?回りの冒険者が半径10mを境に綺麗な円形を描いている。
そんなことを考えているうちにも彼女は目の前まで来ていた。
(き、気まずい・・・。)
切れ長の目で睨まれること10秒。何故か目を逸らしてはいけないと直感が告げていたので絶対に目を逸らさない。
ナナの手を握る力が少し強くなる。
「あなた、私が誰か分からないのかしら?」
なぜ強めな口調で言う?いや、状況からしてすごい人なんだろうけど、ね?ほら、怖いからさ。
「す、すまない。地方から出てきたばかりでな。知らないんだ。」
ここで敬語を使って下手に出るべきではない。そう感じた。
「そうだったの。まぁいいわ。それより、どうかしたのかしら?」
「どうか、とは?」
「あなた、さっきから私の方を見ていたでしょう?なんの用かしら?」
あ、そう言うことか。ちょっと驚いただけだったんだがな。
「あぁ、急に他の冒険者が下がっていったからな。何があったのかと思ったら君がいたからな。それよりさっきSランクの依頼を取っていたが、Sランク冒険者なのか?」
そう聞いた瞬間、回りの空気が凍りつく。あれ?雪が降ってきて・・・。
回りを見ると、冒険者たちが様々な感情のこもった視線をこちらに向けていた。それは好奇心や驚きもあるが、圧倒的に多いのは"怯え"だった。
また彼女から10秒ほどの睨みが向けられる。今度はさっきの何倍もの冷たさがあった。
「・・・・・・まぁいいわ。たぶん私では貴方に勝てないもの。あなたの言う通り私はSランク冒険者、『雪原の花』のマリアよ。覚えておいてくれたら嬉しいわ。」
「そうか。わかった、覚えておこう。あ、俺も自己紹介しておくべきか。」
向こうが名乗ってきたんだし、礼儀としてな。
「俺の名前はシュウだ。あと、こっちはナナだ。」
「ど、どうもナナです。シュウの彼女です!」
「そ、それは別にいいだろ・・・。」
まぁ事実ではあるけども・・・。
そんな少し困ったような目をナナに向けていると、マリアの頬が少し緩んで、
「ふふっ、シュウくん、ね。そうかそうか、そうゆうことか、ふぅ~ん・・・。あ、それではまた。」
なぜか一人勝手に納得して、受付の方に行ってしまった。ナナとのことを笑われた訳ではなかったみたいだが、何だか納得しない去り際だったな。
去ったと言ってもまだマリアはここにいるので、未だに静まり返ったままである。
ただ、回りの冒険者からの「あいつ、なにもんだ?」という視線が痛い。
まぁSランク冒険者がどこの誰とも分からないようなやつに「私では勝てない。」なんて言ったんだもんな。普通におかしいだろう。
この沈黙を利用して、めんどくさいことになる前にギルドを出ることにした。顔も出したし、やることはやっただろ。
外に出ると、だいぶ日も傾いてきていた。
「そろそろ夜だな。」
「そうだねぇ。明日はパーティーがあって大変だし、早く寝ないといけないからね。」
「だな。」
王都の散策も十分やったので、その日は軽く花火弾の準備をして、早めに寝ることにした。
遅くなってしまいました。すいません。
これにて、王都散策はおしまいです。突然登場したSランク冒険者、マリア。今後、どこで登場してくるのか・・・。
他にも、こんなストーリーどうですか?やこんなグレネードどうですか?と言うのがあれば、是非感想で教えていただければ嬉しいです。
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