王都散策1
翌日の昼過ぎ。俺たちは王都の商店街にいた。というのも、今日の朝オスペオさんがブレーキさん経由でパーティーは明日行うと伝えてくれたので、それまでの間王都を散策しようということになったのだ。
因みに王都には、居住区域と今俺たちがいる商店区域、あと王宮横にある湖などの自然区域という風に用途別に区切っているらしい。散開的になってしまうと移動等が大変だからと言う理由らしい。
「それにしても、やっぱり人が多いなぁ・・・。」
「だね~。迷子になっちゃいそう。」
区切ってしまうことのデメリットとしては、人が密集してしまうところか。時間で波があるだろうが、買い物客が一気に商店区域に集中するので大変だ。
「シュウ。はぐれないように、手握ってて。」
「わかったよ。」
名目上はぐれないように手を握ったまま歩く。人も多いしな、普通だろ。
しばらく商店街の雰囲気を楽しみながら歩いていると、気づくことがあった。
「やっぱり私目立ってるかな。」
「そうだな、まぁ気にするな。」
「うん、」
通りすがる人たちからそれなりに視線を感じた。当然だが、俺にではなくナナに対してだ。それは好奇心からくるものであったり、嫌悪するような目であったりもする。数回ほど嫌らしさを含んだ目で見られることもあり、ナナがビクッとしていた。
・・・念のため《粘着手榴弾》と《衝撃弾》をスキャナーに入れておこう。
一つよかったことと言えば、どれもが嫌悪したり下に見るようなものではないということか。国民の中でも獣人へのイメージは個人差があるみたいだ。そういやブレーキさんは獣人嫌いどころかフレンドリーな感じだったけど、なんかあったのかな。今度聞いてみるか。
「あのお店、面白そう!」
ナナが指差す方向を見てみると、そこには一件の雑貨店があった。正面の大きな硝子窓からは中に並ぶ数々の小物が見えている。
「あーゆうの好きなのか?」
「うん。家に飾りたいなぁって思って。買う機会がなかったから見たことしかなかったけど、」
女の子だもんな。やっぱりちっさくて可愛いものが好きなのだろう。
「よし、見てみるか。」
「ほんと!で、でも、追い出されないかな・・・。」
「獣人だから、か?」
「うん、」
ん~。さっきの感じからして獣人嫌いには個人差があるみたいだし、
「入ってみなきゃ分からないだろ。それに、なんかあったら守ってやるから、な?」
「うん!ありがと。」
追い出されたらナナを慰めてあげればいいし、変な人に絡まれたなら《粘着衝撃弾》で倒せばいい。それが俺の役目だからな。
カランカランッ
扉を開くと、中には特に誰もいないようだった。
「明かりはついてるし営業中だとは思うんだが。とりあえず買うものを探してからでいいか。」
「シュウ!あれ可愛い!」
ナナが駆け寄った先にあったのは、クマのぬいぐるみだ。この世界の生き物って地球と同じなのが多いよな。実は分かりやすいように地球にいた生き物の名前に変換されてるとかなのか?おい女神様、どうなんだ?
当たり前だが返事はない。まぁ分かったところで困ることもないし、いいか。
「ねぇ、聞いてるの!」
「あ、すまんすまん。で、このぬいぐるみを買いたいのか?」
「え?買うの?」
「え?」
一瞬の沈黙が流れる。いや、俺変なこと言ったか?
「だ、だって高いし。見るだけだと思ってたから。」
そういや買う機会がなかったって言ってたけど、そもそも高価なものだったのか。値段は8500ミル。飾りとして買うには少し高いみたいだな。けど、
「せっかく王都に来たんだし、お土産ってことで買っちゃおうか。」
「ほ、ほんとに!」
「最近は金もそれなりに貯まってるしな。」
「やったぁ!」
俺がギルドで薬草採取の依頼を受けたり、そのついでに狩った魔物のドロップと魔物を売ったりってので貯金をするほどの余裕はある。今ぐらいちょっと奮発したって大丈夫だろ。
と言うことでクマのぬいぐるみを持ってカウンターに向かう。案の定だれもいなかったが、
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裏に居ます。呼んでください。
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と張り紙がしてあった。それ大丈夫なのか?店として。とにかく書かれている通り呼んでみる。
「すいませーん。」
「・・・!!」
ガタガタ、ガシャーン!
だ、大丈夫か?すごい音がしたけど・・・。ナナと顔を見合わせて不安がっていると、少しして奥から足音が聞こえてきた。
「は、はいぃ!遅くなってすいませんっ!」
手で頭を撫でながら扉から人が出てきた。それもすぐにやめたが、綺麗な栗毛色の髪があっちこっち向いている。直せてないし、てか寝てただろ。
改めてその人を見ると、歳はナナより少し年上ぐらいか。眼鏡をかけていかにも図書委員長みたいな雰囲気を醸し出している・・・寝癖さえなければ
「これを買いたいんだが、」
「クマちゃんのぬいぐるみですね!8500ミルで・・・。」
あれ、フリーズしたぞ?なんだ、値段間違えたのか?さすがに10000ミル越えはやめてくれよ?
「あ、あなた、じゅ、獣人ですよね・・・。」
「は、はい、」
何ミルになるのかビクビクしていたが、獣人のことか?横からはやはり追い出されるんじゃないか、というナナの悲しげな視線が向けられている。
またしばらくフリーズしていたのが戻ったらしく、
「・・・か、」
「「か?」」
「可愛いよぉぉ~~‼」
「きゃぁ」
突然カウンターを乗り越えてナナに抱きついた。そのままナナを撫で回しながら"可愛い可愛い"と連呼している。
「え、えぇ!?」
「可愛いよぉ、ふわふわしてるし、撫で心地最高、可愛い・・・。」
おいおい、さっきの図書委員長感はどこにいった!?そもそも寝癖でそんなものは消え去っていたとしても、おかしいだろ!
「ちょ、君!まず離れて、」
とりあえず無理矢理にでも引き剥がす。
「うぅ、ふわふわがぁ・・・。」
「そ、それより、急にどうしたんだ。」
「え?はっ!ま、またやってしまった。」
「「ま、また?」」
やっと正気に戻ったのか、きちんとこっちを向いて自己紹介をしてくれた。
「私はルーン、この《マルーン雑貨店》を経営してます。それで、またやってしまったってゆうのは、その~・・・私、可愛いものが大好きですぐにギュッてしてなでなでして、とにかく可愛いものを愛でたいんです!」
そういや置いてあるものが動物の人形やアクセサリーとかばっかりだな。茶色の割合が多い。
「そ、それで、獣人って最高だと思いませんか!おしゃべりができて、ふわふわで、可愛いくて、はぁぁ~、獣人の女の子の友達が欲しい・・・。」
あれ、またさっきの状態になってるんじゃ、それを見たナナがルーンの目の前で手を振る。
「お、おーい!」
「はっ、危なかったです。またやってしまうところでした。」
いや、もうアウトだったと思うけどな。
「とにかく、可愛いものが好き、特に獣人が好きでナナに飛び付いてしまったってことだな。」
「はい、そうです!ほんとにごめんなさいっ!あと、ナナさん!お友達になってください!」
それ並べて言うことじゃないだろ。・・・まぁナナは嬉しいみたいだからいいけどな。
「も、もちろん!私、獣人でこの国にいるから全然女の子の友達できなくて、すっごく嬉しい!」
「ほんとですか!」
「うん!」
「やったぁぁーー!」
ギューー
あー、また抱きついて、正気を失ったな、これは。まぁナナも嬉しいみたいで抱きついてるから、待っておくか。
それから二人がおしゃべりしたり、商品(実は全部ルーンの手作りらしい)をみて可愛い~って話をしたりと、クマのぬいぐるみを買うのに2時間ほどかかった。
因みに、ナナとお揃いということでルーンにタヌキのケモミミカチューシャを勧められたが、買わなかった。
二十歳男性のケモミミってどこに需要があるんだよ・・・。
遅くなってしまい申し訳ありません。
今回は王都での休日を書きました(あと1・2話ほど続くかと思います。)
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「想像」スキルで異世界最強
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僕の最初に書いた作品です。(もうすぐ完結予定)
是非読んでいただければ嬉しいです。