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王の間

「お、お客様をお連れしましたぁー!」


受付の女の子(ミカンって名前らしい)の声が大きく響くと、目の前にあった扉が開いていく。反対側から引いてくれているんだろう。


「こ、ここが、えーと、王の間です。あの、ここからは私はついていけませんので、その・・・。。」

「何が言いたいのかはわかった。ありがとう。」

「は、はい!」


噛みまくりのミカンちゃん(受付の子)とはここでお別れして、俺たちは扉の中に入っていった。部屋には赤い絨毯が敷いてあり、両端にたくさんの兵士が立っていて・・・何て王道な感じなことはなく、案外小さな部屋に二人の男がいた。

一人はそれなりな感じの椅子に座っているので、王様じゃないかと思われる。だがそれにしては少し若すぎる気もするな。二十代ぐらいか?それともう一人は、その側近っといったところか。小柄な男が立っている。


「あの椅子に座っておられるのが王様だ。失礼のないようにね。」


合っていたみたいだな。王様の少し前まで来て止まり、跪く。


「お初にお目にかかります。シュウです。」

「ナ、ナナです。」


一応王様だからな。ここは丁寧に話すべき・・・。


「久しぶりだな。王様。」

「うん。久しぶり、といってもこないだ会ったばっかりだけどね。」

「まぁそれもそうだ。」


え?こ、コラルドさん?なに気さく~な感じでしゃべってんの?

突然のことに俺とナナが顔を見合わせていると、


「えーと、シュウ君とナナさんだったよね。初めまして、この国の王様をやらしてもらってるオスペオです。あと、できればそんなに固くならずにさ。ほら、コラルドさんみたいに普段な感じで話してほしいなー。」

「そ、そう言われましても。」


さすがにそうはいかないだろ・・・。てかなんでコラルドさんはそんな簡単に承諾したんだ?


「そこをなんとか!ね?」

「あ、あぁ。こんな感じで、いいか?」

「そうそう!そんな感じ。ナナさんも普段の話し方でいいからね。」

「は、はい。そうさせてもらいます!」


俺たち二人が普通に話すようにするのを確認して、王様は満面の笑みを浮かべた。

ナナは普通こんな風にしゃべらないんだが、まぁコラルドさんにもこのしゃべり方だし、いいか。


「じゃあ早速だけど、遺跡を発見したってゆうのは本当だったんだね。」

「なにか確認をしたような言い方だが、王様はゲッカの森に行ったのか?」

「王様じゃなくて、オスペオでいいから。あと、うちの兵が確認に行ってくれたはずだよ。向こうで会わなかったの?」

「会わなかったぞ。ナナ、何かしってるか?」

「ううん。私も知らない。」

「おかしいなぁ。向こうで接触するように言っといたはずなんだけど。」


特にそんなことはなかったがなぁ。すると、王様・・・オスペオさんが隣に立っている男に顔を向けた。


「探索・採取部隊隊長さん。何かしらない?」

「え?あっしですか?」

「だって、君のとこの部下を行かせたはずだけど。探索兼監視員として。だから君を呼んだわけだし。」

「そ、それもそうすっね。すいません、ちょっと確認してくるっす。」


そう言うが早いか、とてつもない速度で部屋を出ていった。彼の出ていった方向をポカンと見ていると、


「彼は探索・採取部隊、名前の通り探索、採取などを担当してくれる部隊の隊長なんだ。戦闘を主とはしないけど、探索や採取をするために魔物と戦うこともある。単に倒すだけじゃだめだったりするから技術面で言えば彼の右に出るものはいないんじゃないかな。」

「へぇ。すごい人なんですね。」


キキィィー!


突然甲高い音が聞こえてきて隊長が戻ってきた。その後ろにはもう一人男の人がいる。あれ、ちょっと焦げくさくない?てか若干煙のようなものが・・・。


「ちょっと、焦げてるから!その止まり方やめてっていつも言ってるのに。」

「す、すいませんっす。急いでましたんで。あと、監視員に行ってたやつをつれてきたっす。」


やっぱり焦げてたのかと呆れつつもその監視員のほうに向くと、そいつは俺らのことを指差してきて、


「あー!あのときのリア充!末永く爆発し・・・んー!」

「お客様になにゆってるんっすか!」

「んー・・・はぁ、はぁ。でも先輩がリア充にはそう言ってやれってゆったんじゃないですか。」

「そ、それはそれ、これはこれなんすよ!」


なんか大変なことになってるっぽいが?しばらくその言い合いを続けていたが、途中で


「で、何かわかったの?」

「「え?」」

「いや、なんでシュウ君とナナさんに接触していなかったのか確かめに行ってたんだからさ。」

「あ、そうっすね。えーっと、───────」


オスペオさんの干渉によってやっと話が本題に戻ったようだ。それで、向こうで会わなかった理由としてはイチャイチャしてるリア充(たぶん俺とナナのことだろう)にイライラして忘れてたという・・・なんとも言えない理由だった。

てかそんなんで大丈夫なのか?


「ほんと申し訳ないっす。」

「君のせいではないからね。部下にはその辺ちゃんとするように言っといて。」

「はいっす。」

「ふぅ、前置きが長くなっちゃったけど、今回直接来てもらった理由を話すね。」

「あぁ、」

「今回来てもらった理由は二つあるんだけど、まずはシュウ君とナナさんに遺跡発見と古代研究文書の発見の功績を讃えて、それ相応の地位と報酬を出そうと思う。今後も頑張ってもらうためにもそれなりの身分と言うのは必要になってくるからね。」

「そうか。よかったな、ナナ。」

「うん!」

「というのは建前で、君たちを国のほうに取り込んでおきたいってのが正直なところなんだけどね。君たちを不自由にはさせないから安心して。」


まぁそんなところだろうな。


「それで、もうひとつってゆうのは?」

「もうひとつの理由は、頼みたいことがあるんだけど、」


王直々に頼み事か。なんだろうか?


「地位と報酬を与える儀式の後に、主賓としてパーティーに参加してもらいたいんだ。」

「「パーティー?」」

「もちろんコラルドさんにも参加してもらうよ。」

「そうか、国のパーティーなんかに参加する日が来るとはな。」


コラルドさんがそんな風に言うなんて、国のパーティーってゆうのはそんなにすごいものなのか?


「パーティーでは僕たち王族とその側近。あと貴族の数々が出席するんだ。普通に功績を讃える意味でのパーティーでもあるんだけど、もうひとつ意味があって・・・。」


もうひとつの意味?


「ナナさん。あなたは獣人だよね。」

「えっ!は、はい!」

「それと、この国が獣人を嫌っていることも知っているよね。」

「・・・はい。」


ナナが落ち込んでいる。わかっていても辛いものは辛いからな。


「実は、それは先代までの国王が獣人嫌いだったせいなんだ・・・。」

「「「え?」」」


まさかのカミングアウトにコラルドさんも含めて惚けてしまう。


「先代までの国王が獣人にありもしない悪評を流したせいでこうなってしまってて、僕はそれを変えたいんだ。」


ほぅほぅ。理解が追い付いてきた。つまり、


「ナナが獣人であり、その上で功績を讃えれば獣人嫌いの風潮をストップできるってわけか。」

「うん、そーゆうこと。パーティーのときに僕も言うけど、何かちゃんとした証拠が欲しかったんだよ。それで、協力してくれないかな?」


俺はナナの方をみる。


「ナナはどうしたい?」

「んー・・・。役に立てるならやりたい、かな?」

「そうか。わかった協力するよ!」

「本当!ありがと!」


またオスペオさんが満面の笑みを浮かべる。まぁナナが嫌な思いをしないなら、それにうまくいけば獣人との溝を埋めることができるかも知れないしな。


「じゃあ詳しい予定はまた今度話すから、それまでは王宮に泊まってくれればいいよ。そこの隊長に案内してもらってね。」

「任せるっす。」

「わかった。ありがとな。」

「ありがとうございました!」


それから、俺とナナ、あと隊長さんをつれて(コラルドさんはオスペオさんと話すことがあるらしい)王の間を後にした。

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