ギルド長の大切なお話
それから1ヶ月ほど、いつも通りの生活をしていた。ひとつだけ変わったことといえば、
「なぁナナ。最近暑くないか?」
「そうだね。もうすぐ季節もインパチェンスに変わるし暑くなってきても仕方ないよ。」
「この世界にも四季があるんだな。」
「この辺はね。場所によってはずっと寒かったり、逆にずっと暑かったり色々だから。人間は暑すぎたり寒すぎたりしないこの辺りにすんでるの。」
ということで、それなりに暑くなってきたのだ。この辺りだけは四季があるらしく、日本で言うところの春夏秋冬が、
春 アンスリウム
夏 インパチェンス
秋 サフラン
冬 ノースポール
と言うらしい。若干聞き覚えがあるような・・・まぁいいか。
この世界での一年、一ヶ月、一日といった長さは地球とさほど変わりはないので、季節の変化についても今までと同じように生活することができそうだ。
閑話休題して、今俺たちが暑いと言っているのは外にいるからである。行き先はいつも通りギルドなわけだが、いつもと違って時間帯は昼過ぎだ。というのも昨日の話になるが、ちょうど昨日、王都に行っていたコラルドさん、つまりギルド長が帰ってきていたのだが、「大事な話があるんだ。明日の昼にギルドに来てくれ。」とのことだった。そうゆうことで、暑いなかナナと二人でギルドに向かっている訳である。
「それにしても、大事な話ってなんだと思う?」
「ん~、絶対とは言えないけど、王様から呼び出しでもくらったのかな。コラルドさんも王都に行く前に、王直々に呼び出されるかもしれない、的なこと言ってたしな。」
それが理由でここ最近は遠出とかもしないようにしてたわけだしな。
「そういえばそうだったね。王都かぁ。どんなところなんだろ。」
「ナナは行ったことないのか?」
「うん。そうゆう用事もなかったし、それに・・・。」
ナナが言葉に詰まったのに一瞬疑問を持ったが、すぐにその理由がわかった。
「あぁ、獣人のことか?」
「うん。王都レベルの街になると魔法で隠してるのがばれる可能性もあったからね。でも、今なら大丈夫!シュウが守ってくれるもん。だよね?」
小走りで俺の前まで来て、振り返る。そこから上半身を前のめりにして上目遣いでこっちを見ながらそんなことを言う。
・・・ど、どこでそんな高度な技を!
とナナの行動に見惚れつつも、しっかりと答えることはできた。
「あぁ、もちろんちゃんと守るよ。そもそも獣人を下にみるこの風潮が良くないんだから。」
「・・・むぅ。そうゆうことじゃないのにぃ。」
「ふふっ、冗談だって。彼女を守るのが彼氏としての役目だからな。これでいいか?」
といいながらも仏頂面をしていたナナの頭を撫でる。
「んん、それでよし。」
うん、機嫌も直ったみたいだ。
「そう、ニコニコしてるほうが可愛い。」
「・・・その言い方はずるいよぉ!」
この一ヶ月。ナナとのお付き合いもうまく進んでいる。というか自分でもわかるぐらい俺が甘くなってしまった気がする。
・・・時々『リア充め、末永く爆発しろ!』といった痛い視線が来るような気がしないでもないが、気にしない気にしない。
そんなことをしているうちにギルドへと到着した。まだ予定の時間よりは少し早いが、中に入る。すると、
「おぉ!ナナに、シュウじゃねえか!久しぶりだな。」
若い女性なのに少し男っぽさを感じるこの人。そう、
「テナさん!久しぶり!」
「最近会ってなかったから・・・。ってナナ!その姿どうしたんだ!」
「あ、伝わってなかったんだね。私、もう隠すのやめたの。だって、シュウが守ってくれるし、それにこのミミとシッポはシュウのお気に入りだから。」
「久しぶりだな。それと、あのときはありがとな。お陰でまぁ、こんな感じだ。」
ナナは俺の左手に抱きついている。それを見てテナは、
「礼を言うのはこっちのほうだ。そうかぁ。とうとうナナも結婚かぁ。」
ん?ちょっとまて?勘違いしてないか?
「いや、まだ結婚ってわけじゃ・・・。」
「はい!結婚したんです!」
「そうかそうか!シュウもいいお嫁さんをもらったな!ハハハハ!」
「いや、そうゆう訳じゃ・・・。」
「お幸せにな!」
おいおい!勘違いのまま立ち去ろうとするなぁ!
それからまだ結婚してないことを理解してもらうのに10分ほどかかり、結局、
「そうか、まぁそれも時間の問題だろうな!じゃ、そろそろお暇するよ!また今度な。」
といっても立ち去ってしまった。
「いいじゃんシュウぅ~。私も時間の問題だと思うよぉ?」
「・・・それ自分で言うことか?」
「だって、私のほうはもう準備万端だもん!あとはシュウをその気にさせるだけ。いっそ寝込みを襲ってしまえば・・・ふふふっ。」
・・・気をつけないと本気でやりかねないな。安眠の妨害はなんとしても避けなくては。その対処法に頭を働かせていると、
「あのー、シュウくんかね?そろそろ話をしたいのだが。」
いつのまにかコラルドさんが来ていたみたいだ。
「え?あ、はい!ナナも、早くいくぞ。」
「は~い。」
といいつつも未だ左手にくっつき虫状態なので、そのままギルドの奥へと入っていく。
・・・コラルドさんには変な目で見られてしまったが、気にしない気にしない。
少しして前と同じ客間に入る。ソファーに向かい合わせに座って、ナナは俺に横からもたれ掛かるように座った。
「な、なんだか二人の関係は進んでいるみたいだね。」
「そ、そうだな・・・。それより、大事な話ってのは?」
「あぁ、実は・・・といっても前言った通りなんだが、君たち二人に王から直々に招集がかかった。できるだけ早く来てほしいとのことだから、明日にでも私と一緒に王都へ出発したいのだが、大丈夫か?」
やはり呼び出しをくらったわけか。まぁ予想はできていたがな。
「あぁ、大丈夫だ。ナナもいいか?」
「シュウが行くなら私も行くよ。」
「そうか。大丈夫そうだな。じゃあ明日の早朝には出発しよう。移動は4日ほどかかるから、夜には宿に泊まることになる。それ相応のミルは持ってきておいてくれ。」
「あぁ、わかった。」
そして、客間を後にする直前
「そういえば、王はシュウくんのスキルにもたいへん興味をもたれていたな。王都で披露するか何かあるかも知れないから、ちゃんと準備しておいてくれ。」
「そ、そうか。やっておくよ。」
そして俺たちは、改めて客間、そしてギルドを後にした。
「王が興味をもっていた、か。」
「らしいね。シュウのスキルはすごいもん。当たり前だよ!」
「ありがとな。でも披露するってことは安全な物も準備しておかないとな。後で確認しておこう。」
加速弾みたいなものが何個かあったな。他にも見ておこう。
「王都ってどんなところなんだろうなぁ~。やっぱりキラキラしてるのかなぁ。」
「王都、楽しみだな。」
「うん!でもシュウと一緒ならどこでも楽しいよ!」
「俺も、ナナとならどこに行っても楽しいよ。」
少し甘い雰囲気を出しすぎたか、通行人に睨まれた気がしたが、気にしない気にしない。
・・・ってこれ何回目だ?
とうとうナナの町から王都へ。
四季の名前。聞いたことありますか?