第一回ポイント総清算会
翌日、朝目覚めるのが遅くなってしまった。というのも、
「うぅ、さすがにちょっと胃もたれしてるな。」
「うん、私も変な感じがする・・・。こんなの始めて。」
ナナはなったことがなかったみたいだな。昨日の夜はゲッカの森調査依頼でもらった報酬を使って美味しいものを食べよう!ということになり、肉料理やキノコ等々、この辺りでとれる食材を使った料理を食べた・・・いや、食べ過ぎたというべきか。
その結果が、この有り様である。
「まぁいつも食べ過ぎる訳でもないし、たまにはいいだろ。」
「そうだね。けど、次こう言うことがあったら気を付けないと。」
「それはそうだな。さすがに毎回胃もたれはツライ。」
ナナも不調からか、シッポがだらんと垂れている。なんだかかわいそうに感じてしまったので頭を撫でてあげた。
「はふぅ~。最近シュウが頭を撫でたりミミ触ったりするのを戸惑いなくやってくれる。ねぇやっぱり結婚しよ~よぉ~。」
最近こんな感じのからかいが増えている気がする。みなさんお忘れだろうが、一応俺は居候だからな?ナナの心の拠り所になるということで一緒にいるが、端からみれば普通に居候だからな?
どこぞのラノベとかでもない限り居候とその家の人が結婚するなんてことはありえん。
「からかうな。結婚はしない。」
「むぅぅ~!からかってなんかないもん!本気だもん。」
「はぁ、はいはい。本気ね~。」
「もぅ!なんでシュウは本気にしてくれないの!」
「まず付き合ってすらいない相手に結婚とかゆうな。」
これが普通だ。
実際のところ俺もナナに好意は持っているといってもいいだろう。まぁ心の拠り所になりたいとか言ってる時点でそうだったわけだが。だがこれが結婚とかの次元ではない。もちろん付き合うというものも違う。たぶん。
「じゃあ付き合って。」
「それはなぁ。」
そうゆう次元ではない、はず。
「・・・・・・ダ、メ?」
・・・前言撤回だ。そうゆう次元かもしれない。てか上目遣いで涙目とか反則だろ。どこで覚えた?それとも素でやってるのか?
ダメだ、文脈がぐちゃぐちゃになってる・・・。
「うっ・・・。あーもう!わかったよ!どうせここで断ってもナナは諦めるなんてことはしないだろうからな!・・・そもそも一緒にすませてもらってるわけだし。」
「ほ、ほんとに!やったぁ!」
ナナのシッポがこれまでにないほど左右にフリフリと動いている。
「これでみんなの前で堂々とスリスリしてもいいし、キスしてもいいし、なんなら・・・ふふっ。」
あ、あれ?なんか付き合うのレベルが違う気がするのは俺だけか?
「お、おいおい。確かに付き合うのは認めたがそんなことしてもいいとは・・・てか最後の部分はなんだ!何を考えてた!」
「だって、付き合ってない状態でもミミ触ってもらったりしてたわけだし、付き合うのならそれぐらいしてもいいってことだよね!」
「くっ・・・。そ、そうともいえるな。」
「なら決定!そもそも付き合ってキスするのはおかしくないもん。まだしてもらってないし・・・。どのタイミングでしちゃおっかなぁ~。寝込みを襲うとかかなぁ。」
「それ本人の前で堂々と言うことじゃないだろ。てかなんですぐに寝てるところを襲おうとするんだ。」
「だってシュウは先制攻撃さえ仕掛けることができればあとはやってくれるもん。」
そういやいつも仕方なくやらされてる気がする。
もうちょっと厳しくするべきだろうか。
そんなことを考えて自分の世界に入り込んでしまったのか、いつのまにかナナはいなくなっていた。それに気づいたのはキッチンの方からいい匂いがしてきてからだった。
「もうすぐ朝御飯できるから待っててね~。」
それからはいつものように朝食を食べ、薬草摘みの依頼(あの日だけ依頼がなかったのは依頼人が風邪だったというそれだけの理由だった)をこなしていった。ひとつだけ違ったのは、
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「それでは第一回ポイント総清算会を開催しま~す!」
「ワァー、マッテマシタ。」
「すごく棒読み・・・。うぅぅ・・・。」
「な、泣くなって。ほら、めっちゃ楽しみだぞ~。」
「・・・ひっく、・・・」
「はぁ、ほらごめんって、な?よしよし」
「はぅぅ~。ふふっ。ひっかかったぁ~。」
「な、なんだと!」
いつも通りミミを触りつつ頭を撫でるという技を披露したが、まさかそれをさせるために嘘泣きをしていたと言うのか・・・。恐ろしいやつめ。
「あの~、付き合い始めていちゃいちゃするのはいいんですが、そろそろ始めませんか?」
「「あ、はい。」」
言われた通り作業を始めようとナナの頭から手を離・・・やめてくれ、その上目遣いの涙目は。絶対今朝のやつで味を占めただろ。ということでなでなでを続けたまま、メダル購入画面を開く。
時刻は昼過ぎ、場所はギルトの練習場だ。
第一回ポイント総清算会。名前の通り貯まったポイントを一気に使ってしまおうという会だ。
というのも、調査依頼で倒した大量の魔物のせいで(おかげで?)異常なほどポイントが貯まっているのだ。Bランク魔物は300pt、それが500匹はいたので、なんと150000pt!その他諸々も合わせて200000ptも貯まっているのだ・・・。いや貯まりやすすぎだろ!
「それよりまた練習場貸してもらってありがとな。」
「いえ、私もスキルの進捗を確認したかったので!」
購入画面を確認しながらの感謝になってしまうが、改めて礼を言っておく。というのもこれから購入するものは・・・まぁ危ないのだ。
「ねぇねぇ~。何買うのぉ~。」
「それはお楽しみだ。」
購入画面から目当てのものを購入していく。レアメダル8枚購入に8000pt、それによって買えるようになった統一レアメダルを一つ買うのに5000pt その強化に5000 10000 20000 40000 統一レアメダルは購入も強化も5倍になるみたいだ。次に、同じようにレアメダルを4枚買うのに4000pt、同じように統一レアメダルを・・・。ということで合計172000ptを使用した。残りの28000ptのうち、2800ptを手榴弾の強化、閃光弾と火炎瓶、加速弾にも3000ptずつ使って、まぁ残りは後でどうにかするか。
「よし、できたぞ!」
「ほんと!見せて見せて!」
「私もデータを取る準備はバッチリです。」
データを取るためか、水晶のような魔道具をもっている。映像記録用だろうか?
水晶の起動を確認したところで統一レアメダルを二つ取り出す。ノーマルは銀縁に銅、レアメダルは銀縁に金だったが、統一レアメダルは全てが金色のメダルだ。
カチャン、カチャン
二つのメダルをスキャナーに入れる。そして、
「《火炎弾》、《発煙弾・石化》」
まずは火炎弾を前の人形に投げる。
ゴゥ!
火炎瓶とは違い、爆破を中心に球状に火が広がった。ミスリル人形は赤く変化している。
「おぉ!すごいですね!」
次に発煙弾・石化を投げる。
ボフッ
同じく球状に灰色の煙が広がり、煙が触れたところからミスリル人形が脆い石に変わっていった。
「こ、これはすごいですね。魔法に強いミスリル人形が石化するなんて・・・。」
「すごいね!もしかしてシュウ、魔法のレアメダルと効果つき発煙弾のレアメダルを買ったの?」「あぁ、正解だ。《魔法・統一》と《発煙弾・統一》を買って、且つレベルⅤまで強化した。さっきのはレベルⅠだがな。魔法には火、風、水、土、氷、雷、光、闇があって、発煙弾のほうは、毒、麻酔、暗闇、石化、弱体化があるんだ。」
火、水、風、氷、雷は属性攻撃。土は盾になって、光は回復(これは仲間のみ効果あり)、闇はステータス低下となるらしい。発煙弾のほうは名前の通りだ。
「ちなみに手榴弾と閃光弾、火炎瓶もレベルⅤまで強化したが・・・たぶん試すとこの町が半壊する。」
「そ、それはだめですね。というか町を半壊させるほどの爆発を連続で起こせるなんて・・・Sランク冒険者も真っ青ですよ。」
「もうシュウに怖いものなんてないね。」
「自分でもちょっと怖いな。」
これはヤバイと思う。今日この瞬間に急激に強くなってしまったのだ。そう、Sランク冒険者よりも・・・たぶん。
「その・・・大丈夫だとは思いますが、決して悪用とかしないでくださいね。」
「あぁ、大丈夫だ。ナナを守るために使うから。」
「わ、私を、守るため・・・。嬉しいよぉ~!」
ギュー。
まぁいいか、付き合ってるんだ。たとえ回りに人がいても、腕が触れちゃいけないところに触れているのも、付き合ってるからいいんだ。
そんな少しばかりの現実逃避は、ひとつの言葉で打ち砕かれた。
「・・・二人はもうそうゆう関係なんですね。」
「「ひぃぅ」」
突然そんなことを言われ、二人して変な声が出てしまった。
「と、とにかくシュウ。そろそろ日も暮れてきたし、帰ろっかぁ~。」
「これから、お楽しみなのですね・・・。」
「うぅぅ・・・。」
「ちょっと、ミイ。そ、そんな訳じゃないから。」
「・・・ふふっ、わかってますよ。まぁいつかはそうなるんでしょうけど。」
「・・・よし、帰ろう!ミイ。また今度!」
「はい、ではまた。」
「ナナ。早くいくぞ。」
「う、うん。ミイ。またね~。」
「ナナも、頑張ってね!」
少し変な空気になってしまったので、そそくさと出てきた。
「シュウ。たぶんミイは寂しんだと思う。私最近一緒に遊ばなかったから。その、シュウのことで頭がいっぱいで・・・。」
「そ、そうか。」
「だから、今度どこかに遊びにつれていってあげたいんだけど、いい?」
「あ、あぁ。俺もナナの友達とは仲良くなっておきたいからな。」
「ありがと!」
まぁ一人で受付をしているのも寂しいし疲れるだろうからな。息抜きにでも遊びに誘ってみるか。
そんなことを考えながら、俺たちは家路に着いた。
─────あれ、昨日もこんなだったな。
更新が遅くなってしまって申し訳ありませんでした。
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