ギルド長
「ねぇシュウ。読める?」
「あぁ、読めそうだ。」
俺たちは今石碑の前にいる。何か書いてあるみたいで、読んでみるか、という軽い感じでみてみたのだ。読めそう、ってゆってはいるが普通に日本語なので読める。たぶん転移特典みたいなやつだろ。
「ナナは読めるのか?」
「ごめん、読めない・・・。たぶんこれマール語だね。」
マール語。この世界で過去に使われていた言語らしく、今では貴族以上が入れるいわゆる「学校」で学ぶぐらいで、扱える人はほとんどいないらしい。
「まぁ仕方ないしな、大丈夫だ。」
「ありがと。それで、何て書いてあるの?」
「えーと・・・。」
そこからはナナにもわかるように、書いてあることを朗読した。
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さて、この文章が読まれるのは何年先になるのじゃろうな。とにかく、この文章をよんでいる君はここまでの試練をクリアしてやってきてくれたか、それともそんな人たちの情報でやって来た団体様か・・・。まぁどちらでもよいじゃろう。ここに儂の研究の結果を記そうと思っての。儂の生きていた時代は受け入れてくれんようじゃからの。ではまず儂の研究についてじゃが、魔物の仕組みについてというのがテーマじゃ。魔物がなぜ生まれるのか。常識として魔物は魔力の濃い場所に生まれるのじゃが、魔力というのはある一定の濃度を越えると結晶化することがわかったのじゃ。結晶化した魔力は回りのものを取り込み、そして魔物へと変化するのじゃ。魔石というのはその結晶の変化した後の形、というわけじゃな。回りの環境に合わせた魔物が生まれるのこの事で説明がつくじゃろう?詳しいデータなどはこの石碑裏の箱に入れた本に書いておるから、参考にしてくれれば幸いじゃ。
では、この研究が良き結果を生むことを願う。
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「す、すごいね!これ大発見だよ!」
「そ、そうなのか?」
「うん。今まで魔石の発生源が特定できていなかったんだ。魔石は魔道具を使うのに必要だから、この研究で、人工的に魔石を産み出せるようになるかもしれないよ!」
「それはすごいな!」
魔石は魔道具を使用するための電池のようなものだ。他にも金属と混ぜると特別な効果を発揮するといったこともあり重宝される。しかし魔物からとらないといけないため、なかなか高いのだ。
つまり、人工で魔石を作れるようになれば大きなコストの削減になるかもしれないと言うことだ。
「その本ってゆうのはどうするの?」
「ん~、別に俺たちが読んでもちんぷんかんぷんだろうし、国に言ってここに来てもらえばいいんじゃないか?」
「わかった!シュウがそうゆうなら私もそうする。」
「そうか。ありがとな、合わせてくれて。」
「ううん、そのかわりもっと私の相手してね!」
「あ、あぁ、もうだいぶしてると思うけど。まぁ努力するよ。」
「やったぁ!」
それから俺たちは遺跡を後にして、一泊してから町に戻った。
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「いらっしゃいませ、あ!ナナとシュウさん。帰ってきたんですね!」
「ミイ、ただいま~」
「調査依頼終わらしてきたぞ。」
「ほんとですか!じゃあ奥に来てくださいね。重要な情報なので。」
と言うことらしいので、言われた通りに奥に向かう。
「ここが客間です。どうぞ。」
少しばかりの装飾がほどこされた木の扉を通される。なかには机を間に向かい合わせにおかれたソファーがあり、一人の男が座っていた。
「君たちがシュウ君とナナさんかね?」
「あぁ、俺がシュウだ。」
「はい、私がナナです。」
そこまで若くはなく、30代後半ぐらいだろうか。見た目はスラッとしていて優しそうな人だ。
「あの、あなたは?」
「あぁ、まだ言っていなかったな。私はコラルド。一応このギルドのギルド長をやらしてもらってる者だ。」
ギルド長か。そんな偉いさんが何の用だろうか?
「まぁとにかく座ってくれ。」
「あ、はい。」
「ありがとうございます。」
言われた通りに向かいのソファーに座らせてもらった。
「それで、今回君たちに来てもらったわけなんだが、君たちは《ゲッカの森》の調査に行ってきてくれたみたいだね。」
「ちょうど今帰ってきて報告しようと思ったところだ。」
「それなら話は早い。ゲッカの森はデータがほとんどなくて、中心部に至っては全く情報がとれてなかったんだ。」
そりゃあの量の魔物が出たらそう簡単に踏み込めないだろうな。
「魔物がすごかったもんね。特にあいつらのことを思い出すと・・・。」
「やめとけ、思い出していいことなんてないだろ。」
「う、うん。」
まさかのGだったからな。
「そんなに大変だったのか。早速だが、教えてくれないか。」
ということなので、中心部で魔物の量が急に増えること、それが遺跡への試練であること、遺跡にはBランクの《ゴキャル》が出たこと。その先に魔石に関する石碑があったことを伝えた。
・・・そういや試練なんて必要だったのか?強い者にしか知られてはいけない、なんてこともないみたいだし。絶対遺跡を作ったあのジジイの趣味だろ。あいつぅ~!
話が終わると、突然ギルド長がなにやら占いに使う水晶のようなものを取り出した。
「正直に答えてくれ。今言ったことは本当か?」
「あぁ、本当だが?」
「ほんとうだよ。」
なんでそんなことを・・・。
「・・・ほ、本当のようだな。となると、そ、それは大発見だぞ。」
「そ、そうなのか?」
「あぁ、長年実現不可能だった人工魔石が作れるんだ。世界の根本を揺るがす大発見だ!」
「へぇ!シュウすごいね!」
「そ、そうだな。でもこれもナナのおかげだからな。ナナ、すごいぞ!」
「シュウが褒めてくれたぁ!」
ナナが抱きついてきたので、膝の上にのせてスリスリしてやる。
「はぅぅ。シュウのほうから、スリスリ・・・。幸せ。」
やばいな、これは癖になりそうだ。というか俺も俺でナナのこと好きなのかもな、たぶん。
・・・直接は言わないが、今後はもうちょっとちゃんと相手してやるか。
「あ、あの。シュウくんにナナさん。話の続きをしてもいいかね?」
「「あ、すいません」」
「で、では、私はこの事について王都の方に手紙を出す。もしかすると王直々に呼び出される可能性もあるから、そのときはすぐに動けるようにしておいてくれ。」
「あぁ、わかった。」
「はい!」
王都か。
この世界には今俺たちがいるほとんどが人間の国、ナナのような獣人の多く住む国があり、他の場所には魔物の進化した形である魔人の住む場所や、竜人の住む場所などがある。
・・・なんか国名に聞き覚えがあるな。そういやこの町の名前も《ラベンダー》だったな。どうゆうことなのだろうか。
「じゃあ早速手紙を書くよ。ありがとね。」
「あぁ、こちらこそありがとな。」
「ありがとうございました!」
それから客間を出て、受付の場所まで戻ってきた。
「シュウさんすごいですね。大発見ですよ!」
「ミイも依頼を紹介してくれてありがとな。」
「そんな、恥ずかしいじゃないですか~。あ、それと、今回の報酬金です。えーと、25000ミルになります。」
お、なかなかな収入だな。
「確かに受け取った。」
「報酬いっぱいだね。」
「そうだな。これで美味しいもの食べような。」
「やったぁ!」
そんなやり取りをして、俺たちは家路についた。
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